効率化なんてしちゃダメエ
効率化とは、
『効率』という単語に『化』という~にする、させるといったような意味の接尾辞がついたもの。効率というのは、労力や時間に対しての仕事の成果や、はかどり具合といったような意味。この『効率』に『化』をつけた効率化という言葉の意味は、同じ時間での成果をより増やす、はかどり具合を良くする、といったような意味となる。
同じ作業をするのに機械を導入したり、やり方を変えたりなどして、時間を短縮し、作業者の疲労を軽減できれば、良い効率化。
更にはミスが少なくなり、不良品も少なくなり、コスト低減もできれば理想的な効率化となるわけだ。
だ、け、ど、
タイトルにつけた通りに効率化しちゃダメエな仕事というのもあるわけで。
上手く効率化できたらいいってケースも多いけれど、まさしくケースバイケース。効率化したが為に会社が経営の危機に落ちることもある。
私はとある部品の製造工場でバイトしていた。そこでは手作業で作るものが多いところだった。
量産化して利益の見込める製品については、親会社が海外の自社工場で生産ラインを作る。
なので下請けのその工場では、量産化の見込みは無いものの注文がある、という部品作りに追われていた。
小さな樹脂に金属のピンを手で差し込む仕事。一日に何千個というピンを摘まんでは刺し、摘まんでは刺し、と。
この部品、人が手作りしてたのか、と驚く現場だった。
バイトとして仕事を覚えたころ、ひたすらピンを指す退屈な仕事に飽きはじめていた私は、工場の中で使われて無い古い機械を見つけた。
「あれ? この機械を改造したら、今の仕事かなり楽にできるんじゃね?」
思いついて上司に提案。使って無い機械から部品取りして、まともに動きそうな奴を改造したら、なんとかなるんじゃないか? と。
直属の上司は、そんなことより仕事しろ、と言うがその上の別の上司が話を聞いてくれた。
「おもしろそうだからやってみたら? ただし、仕事終わらせてから、仕事時間外で」
許可も出たので、いっちょやってみるか、と。
昼休みと仕事終わりの時間を使って、古い機械をバラして調べて、別の壊れて倉庫に放り込んである機械も使って。
足りないところは旋盤で自作。もともと機械いじりが好きで単調な仕事に飽きていたところ。
バイト中はピンを樹脂に刺しながら、どう改造してやろうかと考えて。毎日ちょっとずつボロイ機械を開発していた。
不良品として廃棄される部品を使って何度も試作。これが意外とすんなりできてしまった。いや、できそうだったから試してみたんだけどね。
バイトがちまちまと手で作る部品。
これを作った機械にセットして、スイッチを押すとピンが刺さるようにしてみた。できた物を検査して合格もらって、これで実際に使ってみることに。
導入してみると、これは楽だ、とパートさんに喜ばれた。
手作業だとピンが折れたり、手で押し込む力は人によって違ってたりするので、出来にバラツキがあった。
機械だと押し込む力はほぼ一定、なので不良品も少なくなった。
大成功だと、直属の上司以外はみんな喜んでくれたもの。私も自分が作ったものが役に立って喜ばれることに嬉しくなった。
しかし、落とし穴はどこにでもある。
この機械で生産速度が上がり、不良品も減り、コストも抑えられる。利益率が上がった。上がってしまったのだ。
それを親会社に目をつけられた。
親会社はその部品が量産化して利益が出ると見ると、その仕事を全部、海外の自社工場に持って行ってしまった。
下請けのその工場では、利益が出た製品の仕事が親会社に取られて、仕事をひとつ無くすことになった。
会社の仕事が減り、利益が減り、リストラの話が出る。そして私は、余計なもん作りやがって、という目で職場で睨まれるようになった。
機械を作ったときは正社員になるか、という話もあったが、結局バイトのままやめることになった。その工場の仕事が少なくなってしまったので。
あと、職場にいるのが辛くなったし。
日本の工場で、何故、効率化をしてはいけないのか?
答え、仕事を海外に取られないようにするため。
大量生産品は、海外で作る。日本国内の工場で作るのは、利益率が低い手間のかかるもの。
利益率がいいと見つかったら、持ってかれてしまう。
そのために日本の職場では、効率化に対して慎重にならないといけない。
バカバカしくも見えるけれど、これが現状。
そのために日本の仕事とは、海外からはこう見える。
「日本の経営がすばらしいのなら、なぜアメリカ、ヨーロッパ、日本という三つの先進地域の中で、日本の成長率がいちばん低いのか?」
「なぜ、日本人は年間2000時間も働いているのに、1%しか成長しないのか?」
「なぜ、ヨーロッパは1500時間以下の短い労働時間で2%成長しているのか?」
「なぜ、日本はアジア11ヵ国でもっとも働きたく無い国、ワースト1位なのか?」
効率の悪いやり方で手間隙かけないと、仕事を続けていけない会社が多いから。製造業に関しては、そういうのが多い。
と、言ってもこの状況も長くは無いかと。
効率化を諦めるのは進歩を諦めるのも同じこと。進歩が無ければ時代に置いていかれる。
日本製品の輸出はよほどのトンデモ製品でも現れなければ、この先、下がり続ける一方だろう。
効率化を考えて、上手くいく会社に勤められる人は幸いかもしれない。
もっとも派遣社員を増やそうとする日本では、どうしても少数派じゃないだろうか?
ほら、派遣社員が正社員より優秀だと、睨まれたりイビられたりとかするし。
効率化は既存のやり方の否定に繋がり、これまでのやり方を否定されると高齢の社員には受け入れられない。
その為に、書籍の取り次ぎなどでは未だにファックスが主流。今時、白黒の表紙の書籍は無く、表紙にカラーの絵も入っているのに。
だけど現場では、白黒印刷されたファックスの紙を、目を細めて見るやり方を変えられない。
パソコンやタブレットを導入しても、理解して使いこなせる人が少なければ実用化は難しい。この辺りが45歳定年制が広まる理由でもあるのだろう。
真面目で頑張る人がちゃんと評価される社会であれば、と願うも、それには相当優秀なマネジメントがいないとダメなのかも。
日本では中小企業の新入社員の離職率が高い。社員数30名未満の事業所の新卒新入社員の離職率は51.5%に達し、これはこの10年間ほとんど改善されていない。
首を傾げるような会社内ルールにいきなり適応できないこともあるのでは。
おそらくはこういった部分が、今の日本の欠点なのではなかろうか。




