第一話『ヌルプム教は今日もえげつない』
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『スンシの福音第一章六節。汝、右の頬を打たれたら、あそこを差し出しなさい。差し出された方はその物を己の物と対を成すように触れ合わせ、お互いの愚かさをわかち合え』
ヌルプム教の聖典、ウリグルにはこのような言葉が書かれていた。
殴り合い、お互いのに神の身からこぼれ落ちた卑しい体という事を分かち合うための行為。お互いの欲望、欲求、愛情を分かつための最も愚かな方法を記した言葉だ。
「神とその御子やまた天使の愛に、慈悲、慈愛、恩恵、寵愛、妄執たる愛、日々の糧を与え、常に愚かなる人間の罪を消し、代わりに背負って下さる神様に感謝します。私は今日、愚かな欲求を満たすための行為を自分自身で行いました。
罪深き私をお許しください」
そう唱える一人の男。彼はヌルプム教の司教、ユンフェだ。彼は日々敬虔な祈りを神へと捧げていた。
ちょうどお祈りが済んだ頃になると薄暗く、無駄に広い部屋に沢山の管で構成されるオルガンや様々な大きさの鐘が一斉に鳴り響き、荘厳な雰囲気を生み出した。
「食事の時間です。本日も私たちの糧となる食事を恵んでくださるクネの神。チョンヒ、スンマン、ドゥファン、ミョンバクの天使に感謝と栄光を捧げましょう。
――いただきます」
そう言い、テーブルに置かれた乾きかけのパンやら味の薄く。否、パンはボロボロパサパサでスープに至っては水と大差なく、収穫からかなり経過したと思われる生焼けの野菜が粗末に入っている残飯同然の食べ物達ををつまらなそうに口へ運ぶ。
食事は司教も教皇も似たような物……おそらく本部ゼーガ=ダイ聖堂の司教より地位の高い奴らは裏で豪華絢爛な食事をとってるだろうが、あくまでも表では質素な食事ということになっている。
まあ、質素な食事の分咀嚼するための時間も長くなる。俺はその食事をちびちびとのろのろと食べた。
「ごちそうさまでした。食事を終えた方から午後の修行を開始してください。
あと、司教様は宝具の部屋に来てください」
女の人。修道女の長がそう言うと食堂に居た人達は一斉にバラバラになりどこかへ行った。
俺も午後の活動を行うため、移動を開始した。
「ユンフェ司教。よく来たわ」
フードの付いた外套か何かを羽織った女の人がそこにはいた。
「これは遥々とようこそ。南方本部聖堂のラティス司教殿」
「早速だけど本題へと移るわ」
「はい、ラティス司教殿」
ラティスはそう言うと懐から本を出し、めくり始めた。黒い表紙でとても分厚く、川の表紙に挟まれた紙は色が変わっており、製本されてから結構な年月が掛かった物だと伺える本だ。
そして何かを見かけたのか本をめくる作業を止め、自分を見つめる。
「あなた、教則を破ったわね?」
「え?」
「ヌルプム教則第一項三章の二節目。女に色目を使った時は対象の相手を確実に墜とせ。
これを破ったものにはヌルプム教則第三項の六章七節目の刑罰を科す」
「さん……こう……」
「ええ。そして三章には、『汝、教則を破りし者に断罪を執り行え』と記されています」
断罪……あ、やばい奴だ。
よく意味が……いや、首が――ちょっと待て、この宗教のことだ。性の象徴を切り落とせとか言いかねない。聖典に普通に色欲を消す方法とか書いている宗教のことだ。
「出ておいで! 配下達……こいつの性遺物を断罪して差し上げなさい!」
ラティスが言うと、部屋の家具などから男達が何人も出てくた。
目の前の女は体にまとわせていたマントを外す。すると、体に密着した異様な服が現れる。
「な、は、離せ! ふざけんなよ……俺はちゃんとウリグルに従った!」
ラティスの異様な姿に現抜かし、がしっとした体の男達に体を掴まれる。
体を激しく揺らし、抵抗するが日々粗末な飯で栄養すらついていない体では抵抗なんて出来るわけがない。
「嘘を付くな! この下郎……ならばその相手を差し出せ! 私がそいつを貴様と出来たか確認してやる!」
「だ、だったら離してくれ……その相手を連れてくるから!」
「そのような事を言って、私たちから逃げるつもりだろ?」
本末転倒とはこの事か……。
俺はラティスが言うように教会内の女性に色目を使った。そして自分は教則や聖典に従ってちゃんとその女性を確実に墜とした。つまりはラティス達の勘違いなんだ。
「断罪ばさみを持って……よし、断罪開始!」
――やばいやばいやばい……まじやべぇー!
なんで一人の女の勘違いで男の命であるち○こを切られなきゃならないんだ。ユンフェはそう思いながら死ぬ覚悟をした。
「い、行くぞ……」
「…………やるならやれ」
下半身の着ぐるみを剥がされ生まれたままの姿を晒しながら往生際でそういうユンフェ。
いま、逸物が切られようとした時……。
「何をしているのですか、ラティス司教!」
様々な人々から贈られた金品が所狭しと並ぶ薄暗い部屋に一つの声が響いた。ユンフェにはこの声が銀鈴のように美しい声に聞こえた。
「誰だお前は。無礼は許さん!」
「わたくしは、ここで祈りを捧げている信者……セヌーリです! 彼は教則を破ってはおりません」
「え、なんだって?」
ラティスは驚いたのか、困惑の表情を浮かばせた。
筋肉男達による断罪の手は止まったが、油断はできない。
「数日前、私は見事ユンフェ司教様により墜とされました。そして……」
「なんだ? 早く申せ」
ラティスは配下に下がるよう指示を出し、配下は後ろに下がる。
そして、セヌーリは意を決してその言葉を言った。
「――出来たようです!」
――は? なにが……主語が抜けてるせいで意味が。
「そうか……おめでとうセヌーリ。あとで美味しい赤飯の店に行こう」
「よかったな、よかったな……ぐずっ!」
え、なに、みんなどうしたん?
ラティスはなにを納得したのかセヌーリと抱擁しだし、筋肉男達は喜びの言葉と共に泣き始めだすし、もう意味がわからん。
「ユンフェ司教……失礼した。これは我の手違いである、どうか見逃してもらえればありがたい」
「わ、わかったからどっかいけ……一年はお前の顔を見たくない」
俺はそう言って起き上がる。その後セヌーリの元に寄った。
するとセヌーリが声をかけてきた。
「これからしっかり養ってくださいね……旦那さん!」
――(おっぱい)踏んだら孕んだニダ。
ヌルプム教の宿敵は律動真理教です。