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フルーさんとルディさんと話していたら、いつの間にかサイラスさんともう一人の方が割って入ってきた。
二人して放置するとは酷いじゃないかと言わんばかりの雰囲気を垂れ流している。あれ、私達が悪いのだろうか?
「スイ様、この二人に変な事されていませんか?」
「だ、大丈夫ですよ」
「サイラスったら失礼しちゃーう!こんな可愛らしいスイ様に変な事する訳無いじゃないの!」
「そうだぞーサイラス、フルーはまだしも俺まで疑うなよな。俺は紳士だぜ?」
「その紳士とやらはそこかしこで女絡みの噂ばかり流れているがな。フルー、お前はもう少しきちっと服を着ろ」
うーん、サイラスさんはこっちの喋り方が素なのかな。私にもそんな感じで構わないんだけど、きっと言っても駄目なんだろうからその内相談する事にしよう。
そんな風に考えながら今度は三人で面白いやり取りをしているのを見ていたら私に浮遊感が襲う。 あれ?と思った時には何故か所謂お姫様抱っこをされていた。金髪の人に。
「スイ様軽いなー、ちゃんと食ってんの?」
「えっっ?あ、たた食べてますからっあの、おお、降ろしてくださいぃっ!!」
「あー、フルーの言う通り可愛らしいなぁ。スイ様、俺の事はシュリって呼んでね。なんなら夜のお供もっっっっ!!?」
「スイ様、大丈夫ですか?この万年発情期の変質者に抱き上げられるなどお痛わしい‥‥‥」
シュリさん?が勢いよく吹っ飛んで行った、私はサイラスさんに抱き留められた後丁寧に降ろしてもらったけど‥‥‥‥お姫様抱っこなんて初めての経験過ぎて恥ずかしさに悶えている最中である。
真っ赤な顔を隠すように手で覆って、ほんの短い間に二人にお姫様抱っこなど私にはハードルが高過ぎだ。これは暫く赤い顔が元に戻る事はないだろう、しかもサイラスさんイケメンである。ぱっとしか見てないけどシュリさんもまた別のタイプのイケメンだった‥‥‥‥‥‥‥、嗚呼、駄目だ思い出して余計に赤くなる。
「っ痛てて、おいサイラス!なんでぶん殴ったんだよ超痛てぇんだけど」
「当たり前だろう。初対面の女性に対して不埒なお前が悪い」
「そうよー!あんたが日々遊び歩いてる女と違ってスイ様は良識のある素敵で可愛らしい方よ!」
「シュリは相変わらず軽い男やってんなぁ、見ろスイ様真っ赤になって可愛いだろうが」
「ん、お!本当だ耳まで真っ赤じゃん、可愛いな」
「そうだろ?可愛いな」
復活したシュリさんとルディさんが交互に可愛い可愛いと言いながら近付いてきたので、即座にサイラスさんとフルーさんの後ろに避難したけど、遊び半分で可愛いとかからかってくるのは止めて欲しいと思う。
女なので、冗談でも可愛いと言われるのは嬉しいけどからかわれると赤い顔が元に戻るのが余計に遅くなるし、遊ばれるのはちょっと‥‥遠慮だし。
「お前らはいい加減にしろ、スイ様が引いてるだろう」
「スイ様、あの黄色頭の変態はシュリルナイムと言いますの。お一人の時には絶対長居しては駄目ですわ!孕んでしまいますものっ!」
「は?え、ええ。分かりました、頑張って避けます」
「えぇぇぇ!!フルーもスイ様も酷っ!」
ショックだったらしいシュリさんが抗議してきたが、私以外の三人が即座に酷くないと返していて、私は何故かフルーさんに抱き締められてまたもマシュマロを体感してしまった。‥‥‥それにしても柔かい。
仕切り直しでサイラスさんが飲み物を淹れてくれたので、皆でソファーに座ろうとしたけれど「じゃあ俺可愛いスイ様の隣~」と発言してフルーさんに沈められて床に伏しているシュリさん。即座に変態が湧くのでスイ様はあちらへ、と言う事で私は一人執務用の机の椅子に大人しく座っています。
「さて、スイ様。今後の予定をお話致します。明日から暫くは、昼食までの時間は魔力やこの世界についての勉強を、私とフルーで致します。昼食から夕暮れまでは万一に備えてルディが鍛えます」
「ねぇ俺は?わざと?」
「‥‥‥‥‥ルディと二人で鍛えます。シュリしか居ない場合は私かフルーと合同になりますのでご安心を」
私、明日から忙しくなりそうです。
俺の扱いがおかしいと訴えるシュリさんは、なんだかお菓子買ってと駄々をこねる子供のようだと思ったのは私の胸にそっとしまっておこう。ただ、Yシャツにジーンズだろうか?ラフな感じの服は大層似合っているのは確かだ。
それにしても、この世界の服装ってどうなってるんだろうか?スーツだったり、和風だったりジーンズだったり、不思議。