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魔力って何ぞや?と、手を開いたり閉じたり凝視したりしたが特に変化はなかった。ちょっと残念だ。
「どうかなさいましたか?」
「いえ、魔力って何だろうと思って‥‥‥前の世界にそんなものは空想の中だけでしたし。いまいちピンとこないんですよね」
「ああ、それでひたすらご自分の手を見てらしたんですね。そうですね、魔力を感じるようになるには他者の魔力に触れるのが一番早く確実です、生まれたばかりの幼体達も親の魔力に触れ少しずつ自分の意のままに使えるようになるのです」
「なるほど、急に分かるっていう訳じゃないんですね。良かった、私大丈夫か心配で」
「魔力についてはもう少し詳しく説明をしても宜しいんですが、あまり一気に詰め込んでも覚えてづらいですから本日はここまでにしましょう」
微笑むサイラスさんにこれは心臓に悪いわ、とドギマギした。正直、その内魔力見えるようになるんだなって分かってそれでテンションがちょっと上がってるので、これ以上の説明は聞き流す可能性が高いなと自分でも思う。
「では、スイ様に会って頂く者なのですが、隣の部屋に待機させていますので。三人ともにこの城の要職に就く者達になります。まあ色々あれですが、実力はありますから適当に挨拶してやって下さい」
「え、もしかして今待たせてしまってますか?!うわぁ、私のせいで時間を‥‥‥申し訳無いです」
「スイ様が気に病む必要はございませんよ。むしろゴミクズのように使い潰して頂いでも構いません」
それはもうにーっこりの目の前の青年に黒いモノを感じながら得意の愛想笑いをしておいた。
そんな中、執務室の扉をノックする音が響いたけど、コンコンって感じじゃなくてドンドンって感じ結構雑だ、サイラスさんの眉間に深い皺が出来た瞬間である。
「サーイラースいつまで待たせんだよ!自分ばっかスイ様とべたべたすんなっ俺だってきゃっきゃっしたいわい!!」
「べたべたなどしてない、お前は爆発しろ」
「なんで俺が爆発すんだよ?!」
「自分の胸に聞いてみれば分かるだろう」
「分かんねぇよっっ!!」
なんとも面白いやり取りをし出した二人を見ていたら、スイ様、と腰に来そうな低い声で呼ばれサイラスさん達とは逆の方へ顔を向ければ、そこには二人右手を胸に当て頭を下げていた。二人とも、和風な雰囲気の服だ。どっちも大分着崩しているけど。
(二人して胸元が大胆‥‥‥‥‥。)
一人はがっしりと筋肉質で褐色の肌。鮮やかな明るい緑の髪は、肩に付かない位だろうか後ろで一つに無造作に結われている、ザ・頼れるお兄さんと言う感じ、きっと兄貴!とかそんな風に呼ばれてそう。瞳は深い緑色だ、はてこの世界の人は髪と瞳は同系色になるのだろうか?
もう一人は女性だ。腰まである艶やかな髪は海のような青色で、緩やかに波打っていてとても綺麗。ぽってりした唇や大きな瞳、豊満な胸やきゅっとくびれた腰など思わずお姉様と呼びたくなるなぁ。雰囲気が妖艶過ぎる、まあ結構胸元とかがっつり開いてたりスリットも太ももまであるから余計にというのもあるけれど。
マジマジと観察してしまっていた!と急に我に返ったので、慌てて名前を口にする。
「あっ、すいません不躾に見てしまって。えーと、スイと言います。まだよくは分かってないですけど、お二人ともこれからよろしくお願いします」
「あら、礼儀正しい方だわ!私、魔道部隊・隊長を勤めておりますフルールと申します。是非、フルーと呼んで下さいね、スイ様」
両手で握手をされぶんぶんと上下に振る時に、ぷるんと揺れるそのお胸に思わず目がいってしまう‥‥‥。と、その視線がもう一人の方にバレていたらしく目線が合ったらニヤリとされてしまった。
「くくっあんだけ立派ならそりゃ見ちまうよな、俺は守備隊の隊長な。ルデルバインだ。まあ、気軽にルディって呼べな。ははは、新しい統治者様が愉快な姉ちゃんでびっくりだなぁ」
「はは‥‥いえ、愉快ですいません。フルーさんもがっつり見てしまって今度から自重します」
「うふふっスイ様は本当に可愛らしいわ。私は全然気にしませんから大丈夫ですわ、なんならお触り下さっても構いませんから!ほら!」
「えっいやっそんなっ‥‥‥‥‥や、柔かっ!」
「まじか!なら俺もその柔かいやつ揉んどこっっってぇ!」
「ルディは触って良い訳がありませんわよっっ!!」
私の手を掴んでそのままフルーさんの胸に押し立てられ計らずもそのマシュマロの如き胸を体感した私。それに即座に便乗したルディさんは、フルーさんの拳骨を受け見事に床に沈んだ。
フルーさん、凄い威力だなと呆然としたけれど「相変わらず馬鹿力だよなぁ魔道部隊なのに」と普通に起き上がったルディさんも凄いなぁとやはり私はあははと愛想笑いでその場をやり過ごそうと思うのだ。