10:体力はまだまだ有りますとも
転移成功だとほっとした私。
まあ、ふかふかの椅子を結構思い浮かべたせいか椅子に座る形で転移していたけども。 サイラスさんがちょっと笑っていて恥ずかしい‥‥、へらっと笑って誤魔化しておくに限る!
「転移の方はおそらく大丈夫でしょう。後何度かする内に慣れると思いますよ、この後はまたルディと走り込みでしょう?頑張って下さい」
「あれ、走り込みなのどうして知ってるんですか?昨日もしかして見てました?」
「私の執務室も中央塔ですので、演習場も見えるんですよ。随分走り回っておられましたね?」
「いや、あれは!違うんですよ?ちょっと走っても疲れないものだから調子に乗ったとかあれじゃ無いんですよ!ちょっとあの、今の体力に感動してたんです!」
「はは、そうなんですね。感動していただけのようで。そう言えばシュリの方は今日も溜まった書類で忙しく来ないのでご安心を」
大人な対応に感謝して、今日のお昼ご飯に手をつける。今日はどうやら炒飯っぽい、可愛い兎の形に盛り付けてあるのはお茶目なんだろうか?でも、凄く和むなぁ。
パラパラご飯にうわぁ!ってなります。お母さんの炒飯じゃこうはいくまい‥‥‥お母さん‥‥‥あ、止めよう。
駄目だ、まだまだ割り切ってない内は前の私の話は無しだ。 懐かしいな~と思える位までは止めとこう。じゃないといつまでもうじうじする事になりそうだもん、いやなる。現に今涙腺が危うい。
「えーっと、演習場行ってきますね。階段降りて右側の通路真っ直ぐに行けば着きますよね?確か」
「はい、合っていますよ。転移で演習場へ行けますがどうしますかスイ様」
「あはは、サイラスさんもある程度は場所も把握してた方が良いって言ってたじゃないですか、なので大体把握出来るまでは歩きで行こうかなと思って、あ、急用とか離れた所とかは転移で行きますけどね」
転移の練習としては演習場まで転移使う方が良いかなとは思うけど、気分転換のため短い距離だし歩く事に。サイラスさんも私の考えを分かっているのだろう、行ってらっしゃいませと言ってくれた。気遣いに感謝して、ぱぱっと着替えて短い距離だけど演習場へ向かう。
ちょっと下がった気持ちに大きく深呼吸をひとつ。
さぁ午後も頑張ろう。
頑張りついでに階段も降りきったので、演習場までは陽気にダッシュだ!
「おー、スイ様今日はえらいやる気だな?」
「ははは、気分的にやる気と言いますか。そこはまあ触れない程度に流して下さい、今日もよろしくお願いしますねルディさん」
ダッシュで演習場に入った私を、花柄パラソルの下でのんびりしてたルディさんが笑いながら迎えてくれた。
それよりふと思うけど、ルディさん守備隊の隊長さんなのに午後の時間を私に割いちゃって大丈夫なのかな?‥‥いやまぁ、それを言っちゃうとフルーさんやサイラスさんも同じなんだけど。
「今さらですけど私に時間割いてくれてますけど、お仕事圧迫させてたりしませんか?」
「ん、俺は書類なんかは元々サイラスやフルーに比べれば少ないんだ。シュリはその少ないのも溜めるから月に一度は執務室から出れなくなるんだが、そこは自業自得だな。それにな、リバルデールは平和なんだ。他の大陸の一族は色々な揉め事やら覇権争いが多いが、俺達は魔力量が全てを決めるし、魔力量が大きい者が周りを守る事は幼体の頃からそれを見ているし、教えられる。そこに下らん権力や抗争はない、俺達が命を預け運命を共にするのは統治者だけだ。だから、スイ様がこの世界を知って、俺達リバルデールの住人とともに生きて行く事を受け入れるまでの手伝いをしたいんだから邪魔になんて思いもしないし大丈夫だ」
どんとこい!と胸を張るルディさん、しかし命を預けるって‥‥中々に重いなぁ、ちょっと胃がキリキリしそう。ただ、争いやらは無いようだしそこは安心した。
けれど、今はとにかく知識を身に付けて、周りと交流して仲良くなっていく事を頑張ろう。
「よし、じゃ走るか。昨日と同じメニューな!」
「はいっ今日もやりますよぉ!」
おー!と右腕を突き上げて、ルディさんと走り出す。今日もしっかり運動して快眠しよう。しっかり寝て、しっかり食べて、沢山学ぼう。
急に前向きになってしまった私が、昨日より走り回ったのは最早仕方のない事かもしれないが‥‥ルディさんはまた微笑ましいものを見る目をしていた。




