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タウン・アクター  作者: タブル
序章 アンハッピー
3/37

3

「え……、え?」

 一見して、何が行われているのか理解できなかった。

 男が一人、複数の男たちに取り囲まれている。それ自体は普通の光景。少し治安の悪いこの辺りではよく見る光景で、近寄らなければ害はない。何かあっても、大声をあげて大通りの方に出ればいいだけだ。

 しかし、彼らの様子はそういう不良とか浮浪者と少し違っていた。

 やけに静かだった。

 大抵、男たちが集まっている場所は揉めていることが多いのだが、誰一人として大声をあげたりしていない。

 真面目な顔つきで、足下を見ていた。

 下を見て、何か呟いていた。

 それだけではない。異常さを感じさせる要因は他にもあった。

 血の色。錆ついた鉄臭さと、赤黒い水たまりのようなものが足下に広がっている。

 そして、秋ヶ瀬は注視する。その足下に。

「っ……」

 声にならない。

 ひょっとすると、ただの見間違いかもしれない。

 恐る恐る近寄り、それを見て、確信してしまった。

「……人が……」

 ───死んでいる。

 人がそこで死んでいる。

 目を見開き、口から血を吐いて倒れている。

 初めは何か分からなかったが、一度死体と認識すると、もう他のモノには見えなかった。

 いや、死体が倒れているというだけでは言葉足らずだ。

 ただの血生臭い死体ではない。それは、他殺体だった。

 ドラマで見たような、よくある銃槍。頭から血を流していた。目を見開いたまま死んでいる。

 その生々しさに吐き気を覚えた。

 ───帰ろう。

 私は何も見なかったし、見えなかった。死体を取り囲む覆面の集団なんて、知らない。

 自分にそう言い聞かせ、踵を返した瞬間、秋ヶ瀬は誰かとぶつかった。

「……あ」

 すみません。

 そう言って過ぎ去る間も無く、前髪を掴まれた。

「おい、何やってんだ! 目撃者がいるじゃねえか!」

 男が叫んだ。

 その瞬間、秋ヶ瀬は途轍もない恐怖を覚えた。


 あの死体と同じように、今度は秋ヶ瀬が覆面に囲まれた。何を言っても、許してくれる雰囲気ではない。

 いや、許す許さないの問題ではないように思えた。

 恐らく、目撃者をどう処理するか、という話だ。無罪放免で帰してくれる気は微塵も無いのだろう。

「お前、何を見た」

「え?」

「え、じゃなくて。何を見たか言えと言っている」

 死体。その頭には銃で撃たれたような痕。少なくともナイフで切られたような傷ではないし、鈍器で殴られた感じでもない。

 彼は銃で撃たれたのだ。

「…………」

 しかし、それを正直に話せば、目撃者として殺されてしまうのだろうか。あの死体のように頭を撃たれて、こんなことで殺されるのか。

 ───正直に話すことはできない。

 と、そんな結論に至ったものの、そもそも秋ヶ瀬は怯えて、まともに声も出せなかった。

「……いつものように殺して、埋めておく方がいいんじゃないか? こんなことに時間をかける訳にもいかない」

「そうだな。こいつに何を見たか聞いたところで、嘘をつかないとも限らないしな」

「……っ……」

 話が考えうる最悪の方向に進もうとしていた。

「……あ、私は……」

「ん?」

 それだけは避けなければいけない。絶対に。

「私は、何も見ていません……」

 嘘をついた。銃を持った、暴力団か犯罪組織か知らない相手に。

「見ていません……か」

 男が秋ヶ瀬の言葉を繰り返した。

「それをどうやって証明する」

「それは……」

 言葉が詰まる。

 どうしようもない。証明も何もそんな(すべ)などどこにもない。

「さっさと処理してしまおう。この間だって、目撃者を一人殺ったじゃないか」

「そうだな。それが早そうだ。どちらにせよそれが本当か分からないからな。不確実でも可能性のあるものは全て消すべきだ」

「……っ……」

 中央の男が拳銃を取り出した。額に銃口を向けられる。

 もうダメだ。死ぬ。

 そう思った時、

「───待ってください」

 と、一人の男が声をあげた。

 拳銃を持った男たちの一員だが、声が若い。

 見た目は同い年か、少し歳上ほどだった。

「どうかしたか?」

「殺さないでおきましょう」

 若い男がそう提案した。

「なんだ、同情でもしたのか?」

「まあ、そんなところだ。この制服、どうやら俺の後輩らしい」

「それで?」

「この子がこんな場所を通るなんて意外だったけど、完全に目撃者がいない状態で奴を殺せなかった俺たちにも落ち度がある。……なによりこの子に非は無いはずだ」

「なら、どうするつもりだ」

「そうだな……」

 腕を組んで考える。

「……仲間になってもらうことにする」

「───え」

 仲間?

 人を殺すような人たちの仲間? 

 秋ヶ瀬も耳を疑った。

「私が、あなたたちの仲間に」

「二度か三度、仕事を共にして、それから正式に我々の一員となる。仲間というか、メンバーの一員だったら、たとえ目撃者でも問題ないだろう?」

「だが……」

 周囲の男たちが言葉を濁した。またも、中央の男が問う。恐らく、この集団の中で一番上の立場の人間だ。

「こいつが裏切ったらどうする。お前が責任を取るのか」

「これは僕の予想なんだが、彼女は僕らを裏切らない」

「そんなものが当てになるか。もしもの場合に備えて、万全を期しておくのが我々のとるべき行動だ」

「万全を期しておいて、目撃者が出てしまったんだろ。だったら、同じじゃないか」

「完璧を目指せとは言っていない。ただ、できる限りのことをやれと言っているんだ」

「……だから、何が言いたいんですか」

「お前の言葉を信じて、こいつを我らの仕事に迎えた後の話をしているんだ。こいつが情報を持って逃げた時は」

「───その時は、僕がこいつを処理する」

 処理。つまりは、殺すということなのだろう。殺して、人目に付かない場所に埋められるのだろうか。そして、私は失踪したという風に片づけられてしまうのだろうか。

 背筋が凍る思いがした。

「図に乗るな、小僧」

 吐き捨てるように言うと、青年に背を向けた。

「お前、それで何か起これば、これ、だからな」

 男は顔だけ振り向かせ、立てた親指を首に向けると、そのまま横にスライドさせた。

 社会一般的に解釈するならば、クビ。解雇されることを意味する。

「分かっています」

 彼は引きつった作り笑いを浮かべ頷いた。

 それを見ると、男は手をひらひらと振って歩き出す。近くに停まっていた赤の車に乗り込むと、運転席の窓から顔を出した。

「ああ、そうだ。次の仕事は分かっているな」

「はい」

「時間がない。標的地点に着くまでに、そいつに話をつけておけ」

 もう一度、今度は無言で頷くと、男の乗った車は走り出した。

 周囲にいた男たちも各々の方向に歩き出す。

「じゃあ、行こうか」

 ハッとして、秋ヶ瀬は向き直る。

(つら)いかもしれないけど、僕たちと一緒についてきてくれ」

「……」

 抵抗できるはずもない。彼らは拳銃を持っている。その銃口が、いつまた自分に向けられるか分からないのだ。

 秋ヶ瀬は言われるがままに、黒のワゴン車に乗せられた。


「───君に仲間になってもらいたい」

 車内で小さく、丸くなるように座っていた秋ヶ瀬に若い男はそう切り出した。

「……はい」

 嫌とは言えない。この状況下、断ることは死を意味するだろうから。

 本当に仲間になりたいとも思っていない。ひとまずここは仲間になるような素振りを見せて、後で自由になってから警察に通報したほうがいいのだろうか。いや、そんなことしたらたぶん私は殺される。この、私の先輩と名乗る男に。

 私が裏切ることは、彼のクビに直結する。後処理として私が殺されて、彼はクビになる。私からすれば、こんな人を殺す職業なんてクビになったほうがマシだと思うのだけど。

 なんにせよ、彼のお陰で九死に一生を得たのは確か。

「すぐに次の仕事があるんだ。仕事内容は、まあ……社会の汚れ仕事ってとこだね。次の仕事も暗殺。標的(ターゲット)が近いから手短に話すよ」

「はい」

「今日の目的は標的の暗殺。そのためには手段は選ばないが、最低限の決まりがいくつかある。まず、暗殺時は誰にも見られないこと。迅速に遂行すること。仲間の死は避けること。標的を暗殺した後、忘れず死体を片付けること……くらいかな。さっきの人も、あの場に残ったメンバーが処理をしているはずだよ」

「処理……」

「今回は、これからやる暗殺も、自殺に見せかけて行う。だから、死体は綺麗なままにしておいたほうが都合がいいかもね。検察が面倒なことを言い出さずに済むから」

 たまたま遭遇してしまったあの瞬間は、正直現実味が湧いてこなかった。どこか嘘みたいな、それか夢みたいな何かに思えた。しかし、いつもの学校帰りだったはずが、車に乗せられ、どこかに移動している。そして、暗殺の仲間になるよう強要されている。そこまでくれば、もう嘘のようだとは言うまい。

 単純明快。どこまでも絶望的な現実だ。

「何か質問はある?」

「……鉄砲でやるの?」

 秋ヶ瀬が見たもの。印象としては警察の持つような拳銃だったが、それをあえて鉄砲と言った。

「そうだね。自分で手を下したくないだろう」

 そう言って微笑む。

 ここで意味する手を下すというのは、殺した感触があるか無いかだけの問題なのだろうと秋ヶ瀬は思った。

 そんな秋ヶ瀬の思考を否定するように、青年は続けた。

「君は銃を持って立っていればいい。そんなターゲットを殺すことまでは望んでいないよ。ただ、相手が逃げないように銃を向けていればそれでいい。後は、僕たちがやるからさ」

「え……それでいいんですか」

「うん。獲物は一人だからね。複数人で襲うんだ、そんな大役を君に押し付けたりしないよ」

「……はい」

「それに、僕としては君に人殺しをさせたくない。なるべく元の生活に戻れるように支援していきたいと思ってるからさ」

「元に、戻れるように……?」

「そうだよ」

 男は笑って、繰り返した。

「難しいかもしれないけど、できるだけ、君を元の生活に戻してあげたいんだ」


「他に聞いておきたいことは?」

 僅かながらも光が見えた。

 それに今はしがみつくしかない。なんであろうと今は生き抜いて、無事に帰れればそれでいい。

 今は、ただ。

 元の生活に戻すという言葉に感動していた。

「どうして、私を助けてくれたんですか」

「……君は、僕の後輩だろ?」

「え、後輩?」

 そういえば、さっきも言っていた。

「僕は天月高校の三年。同じ高校に通う先輩ってこと」

「そうだったんですか」

「そっか。紹介が遅れたね。僕の名前は、寺草(てらぐさ)寺草元春(てらぐさもとはる)っていうんだ。君と同じ天月高校に通う三年生で、今はちょっと事情があってこの人たちと学校に通いながら活動しているんだ」

「事情?」

 ───私と同じような感じかな。

「うーん……話してあげたいんだけど、これはちょっと組織について話さなきゃいけなくなっちゃうからね。まだ君には教えてあげられない」

 まだ仲間じゃないから。つまり、裏切って他の人に話すかもしれないから、まだ話せないということ。

 まだ信用されていないのか。……お互い様だけど。

「じゃあ、先輩だから。同じ高校に通っているから助けてくれるってことですか」

「とりあえずは、そんなところかな。正直自分でもよく分からないんだ。ただ、君がこのままあっけなく殺されちゃうっていうのが見ていられなかっただけかもしれないし、それが僕と同じ高校生だから悲しくなったのかもしれない。とにかく、君が殺されるのを止めたのは、いろいろ打算があったわけじゃなくて、よく分からないけど助けちゃったってだけなんだ。良心の呵責っていうのかな。まあ、そんなとこ」

「そうなんですか……」

 特に理由があったわけではない。私は先輩の優しさに救われたのか、気まぐれに救われたのか。どちらにせよ、この人に救われた。それは確か。

 そして、また。この人が人を殺すグループの一員なのも確か。

 平気で人を殺す人たち。そんな人間の優しさや気まぐれもいつまで続くのか分かったものじゃない。

 先輩が私を利用するとか、そんな目的で私を助けたんじゃなくて、気持ちで動いて助けてくれたのは嬉しかったし、素直に感謝もするけれど。

 冷静になってみると、むしろ逆だった。私を助けるのに目的があってほしかった。もしそうだったなら、私に利用価値か何かがあるということ。言い換えれば、私を殺せない事情がある間は、私の身は保証されるということ。

 しかし、現実はもっと不安定な理由だった。

 状況は変わっても、命の危機は去ってすらいない。まだすぐそばにいる。

「そんな暗い顔をしないで、なんて言えた立場じゃないけどさ。空元気くらいは出してくれ。これから、一人やっつけないといけないんだからさ」

「…………」

 ここで『殺す』や『暗殺する』などの表現をしなかったのは、私に気を遣ったのだろうか。

「……私、人殺しの手伝いなんてしたくなかった」

「人殺し……」

 殺す。その単語一つには言い知れぬ重みがある。

「どうして、殺すの? 先輩の言う、その『標的(ターゲット)』っていう人」

「……それは、組織としてってことかな。それとも、抽象的な、哲学的な話?」

「その人を殺す理由。先輩が殺そうとしている理由」

「そうだな……それは、みんなを守るためかな」

「みんなを、守る」

「そう。これはみんなを守るための戦いなんだ。知っているかい、この街に蔓延(はびこ)る悪の存在を」

「…………知らない」

「一般の人は知らないだろうけど、今、この近辺や、また全国の各都市が危険な状態に陥っているんだ。いや、今に始まった話じゃない。昔から、ずっとそうだった。ギャング、詐欺師、通り魔、マフィア、放火魔、テロリスト、殺し屋。言い出せば切りがないほどの危険因子が街に潜んでいる。この街だってそうさ。そういう奴らが、何の罪もない人たちと暮らしている。それはとても危険なことだって、君にも分かるだろう」

「警察は———」

「表立って動く警察にできることには限界がある。表舞台で闘う警察じゃ勝てない相手もいる。実際、警察内部にもそういった社会悪とリンクしている人間が少なからずいるだろう。それに、公的機関には裁けない悪だってあるしね。本当にどこに潜んでいるか分からないんだ。それでも、誰もが安心して暮らせる世の中を作るため、闘う人々がいなければいけないんじゃないかな。そういう、悪に対してさ」

「じゃあ、今から狙う『標的』っていうのは」

「今回の標的(ターゲット)は、とある殺し屋だ。殺し屋に間違いはないんだけど、僕たちの仲間を殺ったかもしれない殺し屋なんだ。殺し屋に間違いはないからやっつけないといけないのは道理なんだけど、もし本当に僕らの仲間を殺した殺し屋だったら絶対に倒さなきゃいけない。更に仲間がやられてしまうし、もし情報が正しければ相当強いらしいからね、そいつ。放ってはおけない」

「そんな……」

 そんな奴が、この街に。

「そう、さっきも言ったけど、やっぱり社会の汚れ仕事なんだ。こうやって駆逐していかなきゃ増えていく一方だから」

「殺し屋……」

「結局、やってることはそいつらと変わらない。今から行うのも暗殺だ。でも、ぼくは闘うよ。守りたい人たちがいるからね」

 そうか。私を助けてくれた先輩は、こういう人なのか。

 大切な人たちを守りたい。そのために人殺しの仲間になって、自らの手を汚しても自分の信念を貫いている。

 悪。守りたい人。自己犠牲。闘い。

 秋ヶ瀬は、少し胸が熱くなった。

「お願いだ。僕たちに協力してくれないか。これは、君の命を救う戦いにもなる」

「……はい」

 ゆっくり頷いた。

 もう腹をくくるしかない。どうせ逃げれば殺されるのだ。

 どうにでもなれ、と秋ヶ瀬は思った。


「ところで、今更だけど」

 車に揺られながら、先輩こと寺草が口を開いた。

「何ですか」

「名前を教えてくれないかな」

 そういえば、まだ一度も名乗ってなかった。

「秋ヶ瀬あおなです、先輩」

「秋ヶ瀬あおな、か。うん、いい名前だ」

 寺草はおもむろにケータイをポケットから取り出した。

「ちょっと、仮メンバーとして、上司に送っとくね」

「……はい」

 自分の名前が知らない人に送られるのはいい気はしなかったが、先輩のことだ。きっとどうにかしてくれる。私を助けてくれる。そんな気がした。

「あ、もうすぐ着くみたいだよ」

 窓から外を覗いて、先輩が言った。

「やっぱり、ターゲットは今、飲み屋街にいるね。酒が入っていれば、作戦も楽かもしれないな」

 秋ヶ瀬も先輩の横から窓の外を見た。幸いと言っていいのか、まだそこは知っている場所だった。

「先輩」

「なに?」

「やっぱり、私怖いです。逃げ出したりはしないけど……」

 できるなら、逃げ出したいけど。

「相手は殺し屋だからね。初めてだし、当然だよ。……でも、大丈夫。秋ヶ瀬ちゃんを危険な目には遭わせないから」

 でも……

「もし、誰かに見られたら———」

「そう……か。秋ヶ瀬ちゃんの一件もあるからな。念には念を入れておいたほうがいいか。……おい」

 先輩は助手席に座る男に呼びかけた。

「なんだ」

「次の作戦は、全員覆面をつけて行う。たしか、ワゴンのどこかに入っていたはずだよ。それを持っていくように全員に伝えてくれ」

「しかし、それでは目立つんじゃ……」

「着用は実行時のみだ。それに人目のつかない場所まで誘い込む作戦だ。見られた時点でアウトなら、目立つも目立たないもないだろ」

「じゃあ、何のために———」

「念のためさ」

 と、そこまで言い切ったところで、車が止まった。

「到着だ」

 運転席の男が告げる。

「準備はいいか?」

 寺草が秋ヶ瀬の肩を叩いた。

「ほら、これ」

 寺草がバッグから取り出して、秋ヶ瀬に渡す。

「これって……」

「見ての通り、拳銃だ。実弾入りだから注意しろ」

「……」

 秋ヶ瀬は黙って、拳銃を握りしめた。

「さて、作戦の確認をしておこうか———」


「全員、準備はできているな。覆面も持っているな?」

 先輩の周りの男たちが頷く。作戦の概要によれば、今回の作戦のリーダーは先輩ということだった。その発言力からして組織における先輩の立場が決して低くないのは予想がつく。高校生なのに、リーダーに任命されるなんて、どんなことを今までしてきたのだろうか。

「秋ヶ瀬ちゃん。大丈夫か」

「はい!」

 嫌々とはいえ、これから行うことは正しい。間違っていない。そう自分に言い聞かせた。

 結局、どうしようもない。こうしなければ、私が殺されてしまうのだから。

 だったら、先輩と一緒に殺し屋と闘うまでだ。

「じゃあ、行くよ」

「はい」

「———そんじゃ、新入りの秋ヶ瀬ちゃんにカッコいいとこ見せてあげるよ」

 拳銃を手に、先輩───寺草は扉を開き、踏み込んだ。

 ───村雨が友と酒を飲んでいる、その一軒の居酒屋に。

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