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昨日宰相今日JK明日悪役令嬢  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
英雄に成る条件

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61 相良絵梨の修学旅行

 学生時代というものは、他人というものを知る場所である。

 だから学内外で、極力人と接触するイベントが用意されていたり。

 そんなイベントの一つが修学旅行と言えよう。

 それぞれ班に別れて、先生の目を盗んでの女子たちの秘密のおしゃべり。

 こう書けば楽しそうにも聞こえるけど、友情より愛情を取るのが女子というもの。

 笑顔の下ので足の引っ張り合いというドロドロした怨念もまた、乙女の一側面なのだ。


「で、綾乃は彼氏とどこまでしたの?」


「言わせないでよ。

 恥ずかしいんだから!」


「この間デートしていたでしょ!!

 私みちゃいました!」


 キャイのキャイの騒がしい暗闇でのトーク大会。

 当然私にも話が振られる訳で。


「絵梨は彼氏とかいるの?」


「居ないというか作れないのよね。

 前も言ったけど、基本恋愛禁止だし」


 このあたり興味津々なのが女子達という訳で。

 委員長系ぼっちで、占い師なんて副業持ち、で海外(異世界)旅行経験者という彼女たちに与えられた情報だと私の姿が見えないのだろう。

 私はスクールカーストで微妙な位置にいるので、これを機会にその位置づけを決めたいという所か。


「それでも、恋人は欲しいと思わないの?」


 綾乃はのりのりでこっちをつついて来る。

 綾乃自身は友人も多くて私が恋の成就に手をかしたと思っているから、できれば友人の輪に入れたいと思っているのだろう。

 この部屋割りも基本綾乃がリーダーで、その友人たちで占められていたり。

 そのお礼も込めて、消灯まで恋愛占い大会をする羽目に。

 向こうからマジックポーションを持ってきてよかったと切実に思う。

 なお、ぽちは旅行かばんの中で就寝中。


「気になる人はいるけどね。

 思いを伝えるべきか迷っている所」


「伝えなさいよ!

 応援するからさぁ!」


 綾乃のじゃれついた声に他の友人が話をふる。

 このあたりの質問は実は予想出来ていたりする。


「相良さんってもうエッチとかしたの?」


「うん。

 してるけど何か?」


 一斉にあがる驚愕の声。

 ここで、『複数の男にレイプされて調教された果てに男性経験(人外まで入れて)4桁超えています』なんてほざいて空気を凍させる必要もあるまい。

 まあ、過去のことだからあっけらかんと言えるけど。


「嘘!

 絵梨は絶対処女だと思っていたのにー!

 この裏切り者!!」


 綾乃、自爆。

 まだしてないことを自らばらして私を含めた全員に突っ込まれる。


「仕方ないじゃない!

 雰囲気とかムードとかあるじゃない!

 それに、いざしようとすると……心の準備が……」


 なにこのかわいいいきもの。

 青春だなぁ。

 そんな綾乃への攻撃が終わると、当然のことながら攻撃は私の方に向かう訳で。


「絵梨の初体験のお相手って誰だったのよ?」


 その質問に枕に顎をのせたまま答える。

 このあたりは適当に嘘がばれない程度に言うのがコツだったりする。


「ほら。

 以前スマホで海外旅行の写真見せたでしょ。

 向こうで舞踏会があってね。

 そこで、貴公子にお持ち帰りされました」


「なにそれどこの上流階級よ!!!」


 いや、マジモンの頂点上流階級に属していた身なのですが。わたくし。

 ちなみに、あのクラスの上流階級は政治が露骨に絡むため、恋愛は基本自由だったりする。

 もちろん、愛に生きて家ごと破滅する家も多くあったりするが。


「向こうの社交界って家どうしの政略結婚前提だから、セックスまで入れた恋愛行為ってかなりフリーなのよ。

 子供作んなければ、金で解決するし」


 このあたりは姉弟子様の付き添いで色々出向いた話をアレンジしている。

 嘘つきは、ほとんど本当のことを話すがゆえに、本当に隠したい嘘を限定する。

 だからこそ、嘘つきの嘘は信用される事が多いのだ。


「それって援助交際と変わらないんじゃ?」


 暗闇だけど、わざとらしく口元で指をふっていたずらっぽく茶化す。

 なお、このあたりの話は姉弟子様の実話だったりする訳で、何度振り回されたことか……話がそれた。


「桁が違うわよ。

 一夜百万が最低限」


「「「!!!!」」」


 聖娼と呼ばれる職業が古にはあった。

 己の体を神との交信に使い、神の僕として権力者の権力を担保する地母神の系譜。

 文明が進み社会が整ってくると、役割が固定化されてゆき、聖娼は巫女となり、そこからこぼれ落ちた欠片が娼婦などになってゆく。

 占い師というのもそんなこぼれ落ちた聖娼のかけらの一つ。

 姉弟子様はセレブではあるが、占い師という側面と同時に高級娼婦もどきもしている聖娼の末裔。

 そして、その系譜の後継者に私も連なっている。


「何だか、相良さんのイメージがガラガラ崩れてゆくわ」


「うん。

 委員長って一人でクールって感じだったのに」


 もちろん、乙女の口に戸はつけられない。

 このあたりの情報は漏れることが前提。

 この乙女トークもスパイさながらのカバーストーリーの組み立てによって進められている。

 話術の無駄遣いなんて言ってはいけない。


「理由があってね。

 占い師って恋愛禁止ってさっき話したでしょ。

 究極的に、『誰にも股を開かない』か『誰にでも股を開く』かに行き着くわけ」


 このあたりをうまくコントロールしないと性欲一杯な男子がわらわらと押しかけかねないのだ。

 だから脅しを入れておくことが大事になる。


「で、私は初体験済ませているから『誰にでも股を開く』選択しかないのだけど、それで学校の男子達前に股を開いたらどうなると思う?」


「……」

「……」

「……退学?」


 みんなの沈黙の後、綾乃がぽつりと答えらしきものを出してくる。

 きっとみんなの頭のなかは、『クールな委員長は、誰にでも股を開く清楚系ビッチでした』なんて薄い本のタイトルが浮かんでいるに違いない。

 だからこそ、そこからの脅しが効果を発揮する。


「私だけで済めばいいんだけどね。

 私の場合、さらに事情が特殊でね。

 ほら、急に別の学校に転勤になった進路指導の先生いるでしょ」


 不意に話が飛ぶのが乙女たちのお話の特徴。

 そのまま帰ってこないことも多々あるが、彼女たちの意識をそらせるのには成功する。

 さて、脅しを入れておくとするか。 


「ああ。あののいけ好かない奴」

「うん。

 居なくなってせいぜいしたわよね。

 それがどうしたの?」



「あれ、飛ばしたの私」



「……」

「……」

「……はい?」


 そうだろうなぁ。

 コイバナできゃっきゃうふふを期待したら出てきたのはどす黒い何かである。

 既に彼女達の顔がドン引きだが、ここは話が漏れること前提で脅しをかけておかないといけない。


「うちの占い師一門、権力者に囲われているの。

 このあたりの会社だったら、多分親の首まで切れると思う」


 冗談でしょうと言おうとした彼女達だが、灯りの消された部屋での私の沈黙に口が開かない。

 それは真実だと薄々気づいたからだ。

 あとはそれを証明する何かを用意すればいい訳……む?

 いつの間にか布団に潜り込んだぽちが私の足をつんつん。

 修学旅行お約束の見回りというやつだろう。

 では、その証明は見回りの先生にやってもらう事にしよう。


「こら!

 いつまで騒いでいるの!!

 明日も早いのですから、さっさと寝なさい!!!」


 新しい進路指導として部屋を見まわっていた女性教師はお約束の言葉を投げかける。

 さて、魔法を唱えよう。


「申し訳ございません。先生。

 ところで、前任者のお詫びに神名……」


「ひっ!」


 恐怖がついた悲鳴を上げた進路指導の顔が廊下の灯りにてらされて、部屋の人間全員に目撃される。

 あの騒動で激怒した姉弟子様が騒いだ結果、理事会から職員室に強烈な圧力がかかった事を私は知っていた。

 ありがとう先生。

 その顔が欲しかったのです。

 お詫びを今度考えておこう。

 怯えない程度に。


「いい。

 とにかく早く寝ること。

 いいわね!!」


 けっこう大きな音を立ててドアを閉めた進路指導を無言で見送った一同の前に、私はただ一言だけ。



「ね?」

 


 さすがに騒ぎ疲れたのか皆静かになった暗闇で、私はなんとなしに考える。

 さっきの恋話がきっかけではあるが、向こうで待っているいろいろなものに対して決断をしなければならないからだ。

 女神神殿神殿喜捨課税問題で揉める王室法院での権力闘争に、大賢者モーフィアスの世界樹の花嫁に関する報告書が持ち込まれるだろう。

 そうなると、世界樹の花嫁が基本ビッチでないといけない事がバレてしまう訳で。

 それでも、王家の正当性の為にミティアを世界樹の花嫁から外せない。

 結局、誰かが泥をかぶらないといけないのだ。

 時間はあまりない。

 次期収穫の作付が目前に迫っているからだ。

 西方植民地から運ばれているはずだった穀物船団が嵐で大打撃を受けている現在、次期収穫の不作はなんとしても避けないといけない。

 私か、アマラか、水樹姉さまの誰かが本物の世界樹の花嫁--『誰にでも股を開くマジモンのビッチ』--にならないといけない。

 それをしないと、オークラム統合王国は崩壊する。


「ね。

 絵梨、起きてる?」


 ん?

 綾乃の声。

 えらく小さいが何だろう?


「ごまかしたと思っているけど、私の目はごまかせないわよ」

「この暗がりで見えるとはさては夜目が効くの?」

「違うわよ!

 あんたがごまかした恋話聞かせなさいよ。

 ……参考にするからさ」


 なんだろう。

 このほっこりとする感覚は。

 綾乃。

 いろいろあるけど、基本あんたと友だちになれて本当に良かったと思っているんだからね。

 言うつもり無いけど。


「みんなには言っちゃダメよ。

 向こうの舞踏会って、名前を呼ばれて紹介が終わるとバルコニーとかでお相手を探すのよ。

 で、待っている間に抜け駆けがあったりするんだけど、私の時は……」

  

 実は全員起きていて私と綾乃の会話に聞き耳を立てていることを承知の上で、私は舞踏会の話をアレンジしながら乙女トークを続けることになった。

 なお、私達の班は私を除いて翌日寝不足でえらいことになった事も付け加えておく。


「……おぇ」

「……眠い……きつい……」

「酔う…………」


 寝不足バス移動は酔うのでほんとうに気をつけよう。

 いやー、状態異常回復魔法って便利だよね。

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