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昨日宰相今日JK明日悪役令嬢  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
断片の物語を紡ごう 【挿入話・外伝】
134/135

おとぎ話の風景

 果てしなく蒼い空。

 髪が風に泳ぐ。

 優しい風。

 無口な風。


 ここではない何処か。

 今ではない時間。

 けど、二人には通らないといけなかった時間。


「お久しぶりね。愛しい娘」

 言葉は冷たく、表情は険しく。

「お久しぶりです。我が師」

 言葉は険しく、表情は楽しく。


「貴方が選んだ道だから私は何もいうつもりはないわ。

 けど、一つだけ聞かせて。

 何故貴方はその道を選んだの?」

 母には娘の気持ちが分からない。

 いや、分かりたくない。


「私は我が師みたいになりたかったんです」

 娘の言葉は母の予想通り。

 だって、結局は師匠と弟子なのだから。


 銀髪で華奢な体に遥か昔のローブを纏う占い師。

 黒髪に妖艶な体をドレスに押し込めている魔術師。

 両方同じだったのは、魔法使いである杖を持っている事だけ。


 ゆっくりと占い師が魔術師に向かって歩き出す。

 同じように魔術師も占い師に向かって歩き出す。

 師匠を見つめて。

 弟子を見つめて。



 そのまますれ違った。



 長い時間を生きるということはそれだけ物語がある。

 占い師は絶望に包まれたまま贖罪の旅を続ける。



 世界樹は命の葉を揺らし髪が風に泳ぐ。

 優しい風が世界を駆け巡る。

 そして古の約束は果たされる。


 ここではない何処か。

 今ではない時間。

 けど、二人には通らないといけなかった時間。


「お久しぶりね。愛しい弟子」

 言葉は冷たく、表情は暖かく。

「お久しぶりです。我が師」

 言葉は険しく、表情は楽しく。


「貴方が選んだ道だから私は何もいうつもりはないわ。

 けど、一つだけ聞かせて。

 何故貴方はその道を選んだの?」

 師には弟子の気持ちが分からない。

 いや、分かりたくない。


「私は我が師みたいになりたかったんです」

 弟子の言葉は師の予想通り。

 だって、結局は師匠と弟子なのだから。


 黒髪に妖艶な体をドレスに押し込めている宰相。

 真新しいローブを着て優男の姿を隠す魔法使い。

 両方同じだったのは、魔法使いである杖を持っている事だけ。


 ゆっくりと宰相が魔法使いに向かって歩き出す。

 同じように魔法使いも宰相に向かって歩き出す。

 師匠を見つめて。

 弟子を見つめて。



 そのまますれ違った。



 長い時間を生きるということはそれだけ物語がある。

 魔法使いは宰相の絶望を引き受けて贖罪の旅を続ける。

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