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昨日宰相今日JK明日悪役令嬢  作者: 二日市とふろう (旧名:北部九州在住)
断片の物語を紡ごう 【挿入話・外伝】

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今は無き王国の記憶 その八

「ねぇ。

 聞きたいのだけど、アルフレッドの何処が気に入ったの?」


 拠点到着後の夕食準備中の一こま。

 拠点と言っても、坑道を広くくりぬいた部屋でドアもないのだが、休むには十分に役に立つ。

 先に到着した私達がマットを敷いて横になれるようにした後、食事の準備をする事になったのだが、本人が居ないからと容赦なく突っ込んでくるシアさんに私はかき回していた鍋をこぼしそうになる。

 アマラは私の顔を見て漏らしてないと手を横に振る。


「気づいてないと思っているの?

 分かるわよ。それぐらい」


 まあ、わからんではないか。

 シアさんだし。

 彼女の場合、大概の事はこれで諦めがつくのが素敵である。


「真面目な話をするけど、良かったらアルフレッドこみでうちに来ない?

 上の椅子は空けておくわよ」


 そういえば、アルフレッドの才能を認めたのも彼女が一番早かったな。

 アマラが興味津々でこっちを見ている。

 お忍びの貴族だろうとは当たりをつけているが、正体は知らないらしい。

 ならば、知ってもらって一緒に地獄に落ちてもらおう。


「大公妃殿下のお誘いは嬉しいのですが、若輩者には荷が重過ぎるのでご容赦を」


「え!?

 大公妃殿下!?

 これが!?」


 これ扱い。声に出すなよ。アマラ。

 これ扱いには全力で賛成するけど。

 かき混ぜていた鍋の中身は固形燃料で暖めていたお湯。

 これにインスタント味噌汁を入れ、かき混ぜたら金属製のお玉をアマラに手渡す。

 で、リュックから缶詰と多機能ナイフを取り出して、缶詰を開けるとシアさんの目がらんらんと輝いていらっしゃる。

 すでに味噌汁の香ばしい香りが漂い始めているから、缶詰の中身であるみかんとあわせて彼女の食欲は刺激されまくっているだろう。

 拠点ができているからこその火の使用であり、食欲を刺激するにおいである。

 モンスターが跋扈するダンジョンだと、この二つは自分を襲ってくれと同義語になりかねない。

 なお、今でも警戒の為にケインとグラモール卿が拠点の前後を警戒している。


「控えおろう。

 北部諸侯の血脈の祖であらせられるアンセンシア大公妃殿下にあらせられるぞ」


「ははー。

 これまでの無礼ひらにご容赦を」


 私の大仰しい言い回しに、わざとらしくアマラが平伏してみせる。

 もちろん冗談で、それをシアさんも分かっているから苦笑するばかり。


「ミティアちゃんには内緒ね。

 正体は気づいた人にしか教えないの」


 にっこりと大公妃の笑みで返事をするが、その視線は干し肉をあぶっている串に行っているのが丸分かり。

 その秘密は日本人の魂の一つである醤油を干し肉にかけている事だ。

 ふふふ。

 この夕食で寝室以外でアへ顔を晒すがいいわと邪な考えをしていた所でふと思い出す。


「そうだ。

 この人華姫が裸で逃げ出すほどの色狂いだから、シド取られないようにしなさいよ」


「既にモーションかけられているから安心して。

 というか、今回貴方が連れてきた人たち、みんな美味しそうだから全員に声かけていたり。

 アマラやエリーの目があって、みんなに断られたけどね」


 はやっ。

 この人、色に関しては本当に早いからたちが悪い。

 あっけらかんと言ってのけたシアさんの暴露にアマラがため息をつく。


「エリーもそうなんだけど、本当にこの人そんなに凄いの?」


「北部にできた魔族の巣に単身捕まったふりをして嬲られ続けた結果、魔族全員が腹上死して魔族を討伐したなんて武勇伝持っている人よ。

 これ」


「うわぁ……」


 これ呼ばわりなのだが、本人自慢の武勇伝なのでシアさんは無駄にでかい胸を揺らして自慢していたり。

 それ、自慢じゃないと思う。

 私が言うのもなんなのだが。


「『くっ。殺せ!』と言いながら、相手を煽ると相手が燃えるのよ。

 で、元気がなくなってきたら、今度はやさしく『がんばれ。がんばれ』とやさしく応援して搾り取るの。

 10日しか持たなかったから、この技は封印しているんだけどね♪」


 なお、北部諸侯の街に大規模娼館ができない理由の一つにあげられており、政治問題化した事もある。

 娼婦というのは、弱者の最低限の生活保障ができる職でもあるからだ。

 で、それをシアさん一人が荒らした結果、北部から大規模に女性奴隷が発生するという事態が発生しかかったのだ。

 娼館ができて娼婦が働くと男が集まる訳で、その男目当てにこれがふらふらとやってきてパクリと男達を貪ってしまう。

 で、想定以下の客しか来ないから娼館を閉ざすという事が何度この北部で行われてきたことか。

 その為、ついたあだ名は『ハーロットキラーのシアちゃん』(自称)。

 才能はあった北部諸侯がシアさんに嘆願し、彼女もそれを受け入れて今の冒険者スタイルでの男漁りの旅に至る。

 最近は北部境界部の流民開拓村に足を運んで、見ず知らずの男達を兄弟にするのを趣味にしているらしい。

 これが流民対策としてまた絶妙に機能しているからこの人のたちの悪さたるや。

 話がそれた。


「で、その時の魔族に上級魔族が居たらしくてね。

 元気だったから、つい孕んじゃったのよね。

 生んで知り合いに預けていたけど、今は王都で近衛騎士をやっているみたいよ。

 会ったらよろしくしてあげて頂戴♪」



「「お前かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」



 さすがに声を合わせて突っ込む私とアマラ。

 思わず、アリオス王子・グラモール卿・ケインがこっちにやってくるが、私とアマラはそれどころではない。

 シアさんのご子息に因縁ありまくりなのだ。


「あら?

 息子の一人だけど知っているの?」


「知っているも何も、アマラはこの間堕とされかかりましたがな。

 貴方の息子に」


 私の突っ込みに、アマラがこくこくと首を縦に振る。

 このあたり設定資料集にもなかったが、考えてみればドライアドと上級魔族のハイブリッドだから魔族大公にまで成り上がれるだけの納得できるポテンシャルである。

 しかし、サイモンと私の因縁は彼女知っていたはずなのだが、それでも仲は悪くなかった。

 彼女が大人だったのだろう。いまさら知った事だが。


「ふっ……まだまだ息子も甘いわね。

 いつか第二第三の息子があなた達を堕としに」


「せんでいいから」


 豊穣神の見本みたいな生き方をしているシアさんだけあって、その根幹の思考はそのあたりが反映されている。

 要するに、ほぼ永遠の寿命と若さを武器に産めよ増やせよ地に満ちよを文字通り行っているのだ。

 その代償に、一族や家といった繋がりをそれほど意識しない。

 千人死んだら二千人産めばいいのだ。


「何か楽しそうな声が……げっ」


「『げっ』とは何よ。『げっ』とは」


 遅れて到着したミティアのパーティにいて先行していたシドが思わず本音を漏らして、シアさんに突っ込まれる。

 青田買い大好きなシアさんだが、己の才能を自覚した連中はシアさんのやばさが分かるので離れる傾向がある。

 ここに集まった男達がシアさんのモーションに引っかからない理由がこれだ。


「いやさ、誘われるのは男として嬉しいのだが、もうちっと時と場合を考えたらと」


「失礼ね。

 時も場所も選ばずフルタイムオッケーだからみんなに粉かけているのに」


 これである。

 ここまで来るとある種清々しいものがあるが突っ込まないでおこう。


「わぁ!

 美味しそうな匂いですね」


 やって来たミティア達も味噌汁や醤油の匂いに引きつけられる。

 ご飯に、味噌汁に、串焼き醤油漬け、デザートのみかんの缶詰の威力を思い知るがいいわ。

 案の上、シアさんがドはまりしたのはいいのだが、そっとおかわりを要求するアリオス王子はちょっとかわいかった。


 夕食後に交代で休憩し睡眠を取る。

 明日はここの防衛の為に近衛騎士団と法院衛視隊の選抜パーティが到着する予定。

 彼らの到着を待って遺跡の攻略が行われる予定だったのだが、奥から聞こえる轟音に皆飛び起きる。


「何があった!」


 アリオス王子の一声に、グラモール卿が剣を抜いて拠点の入り口を警戒する。

 誰かが戦っているらしいが、音からしてかなり奥の方からだ。

 私を含めて、皆がアリオス王子の顔を見る。

 今回のパーティのリーダーは彼だからだ。

 アリオス王子は、私とシアさんの顔を交互に見て尋ねる。


「今、戦っている相手が我々を出し抜く可能性は?」


「ないとは言い切れないわ。

 閉鎖空間での音が出る理由は、戦っているから。

 一方的な蹂躙じゃない事の意味は考える必要がある」


 シアさんが即座に口を出し、私がそれに続く。

 こういう時のタイミンクの合わせ方はバッチリだったり。


「介入した場合、ここの守りが薄くなります。

 そして、戦っている相手とこっちが共闘できるかは別問題です」


 こういう時、アリオス王子は選択をまず間違えない。

 最悪を想定して、最善ではなく最良を選ぶのがこの人の真骨頂だ。

 最悪の事態はダンジョンハザードの再発。

 それを防ぐためにもここの防衛はおろそかにできない。


「グラモールとケイン卿は入り口で警戒してくれ」


 偵察を送るよりも、ここの防衛の方針を取る。

 戦っている相手がこっちに逃れて助けを求めるならば、またその時に決めればいい。

 そして、アリオス王子は私に向かって尋ねた。

 

「地上の転移魔法陣はここで開くことはできますか?」


「ゼファン君とシアさんをお借りして、ある程度の時間をくだされば」


 こっちの返事を即座に承認する。

 そういう所もこの人が無能ではないと思い知らされる。

 そして、全員に聞こえるように今後の方針を告げたのだった。


「お願いします。

 転移魔法のゲートが繋がって、増援が到着次第遺跡の調査に入ります」

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