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第2会 いつもと違う日常~unusually~

 少し前に遡る。


 明朝。

 ようやく太陽が出てきて、辺りを照らし始めた頃。

 ある黒髪の美少女がいた。

 その長い黒髪をポニーテールにした美少女は学校の制服で現在立ち入り禁止になっている学校の屋上にいた。鉄網に体を預け、ため息をして真正面にいる違う学校の制服に身を包んだ金髪の美しいお嬢様に言葉を投げかけた。


「まさか、あなたも参加しているなんてね。てっきりそういうものには無関心だと思っていたわ。なにせ望むものはすべて手に入るんだから。」

「ふふふ、無関心というわけではありませんよ。それに私だってすべてのものが手に入るわけではありませんよ。私は私の望みのために今ここにいるんですもの。」

「そう。ご苦労様。」


 ポニーテールの少女が呆れているのに対して金髪の少女は薄く笑うと、


「あなたこそ、ただ単に欲望のために参加したわけではないのでしょう?」


 ポニーテールの少女は鉄網から体を離すと、ただ無表情に金髪の少女を見据えた。

 何かを感じたのか金髪の少女はため息をつき、同じくポニーテールの少女を見つめた。


「まあ、何にしても参加者同士がこうやって対面しているのですから、やるべきことをやりましょうか。」


 次の瞬間、ポニーテールの少女と金髪少女の周りの空気が一変した。


 臨戦態勢。


 先に動いたのは金髪の少女の方だった。

 彼女は腰から警察官が使うような小型のリボルバー式拳銃を取り出すと、躊躇なくポニーテールの少女に向けて発砲した。

 対してポニーテールの少女は金髪の少女が拳銃を向けた瞬間すぐさま横へと転がっていた。

 さっきまでポニーテールの少女が体を預けていた鉄網に直径二メートルの大穴が開く。

 金髪の少女が持っている銃は至って普通の銃で(普通の銃を持っていることがそもそもおかしいが)改造もしていない。もちろん、殺傷範囲約9ミリの普通の拳銃ではこんな大穴は開かない。

 そこには、現代では説明できない不思議な力が働いていた。

 金髪の少女は続けてポニーテールの少女に向けて銃弾を放っていった。彼女が銃弾を放つたびにあちこちに大穴が開いていく。

 ポニーテールの少女は屋上全体を使い動き回ることでそれを回避していく。

それも、普通の人間では到底辿り着くことができない速さで…

そして、回避しながらも頭の中で思考を巡らせた。


(あいつが使っている能力はおそらく単純な武器強化…。そして彼女が使っている銃はリボルバー式。となると、あいつが銃弾6発を全部打ち終わったときに間合いを詰める!)


 金髪の少女は惜しみなく銃を撃ち続けている。


「あらあら。逃げてばっかりじゃ余興にもなりませんよ。もう少し私を楽しませてくださいな。まあ、もっとも、楽しませてくれる時間があればの話ですけど!」

(4…)

「あなただって参加者なのでしょう?それならあなたも力を持っているはずよ。」

(5…)

「ほら、使ってみなさいよ。このお嬢様を楽しませてみせなさいよ!」

(6!)


 金髪少女の6発目の攻撃を回避したポニーテールの少女は一瞬で間合いを詰めた。

 もちろん、飛び抜けたスピードで…


「っ!」


 金髪の少女はいきなり眼前まで迫ってきたポニーテールの少女に怯んで後ろによろめいた。

 ポニーテールの少女はそれを見逃さない。

 間合いを一瞬で詰めると、彼女は袖に隠し持っていた短剣を取り出すと、驚いた表情をしている金髪少女の首を狙って、振り抜いた。

 確実に命を刈り取れるはずだった。

 しかし…

 金髪少女の首を狙った一撃は少女の首に当たるや否や大きくはじかれた。


「‼」

「残念でした☆」


 驚いた表情から一変、勝ち誇ったような笑みを浮かべると、大きく仰け反ったポニーテールの少女に向けてお嬢様には似つかないパンチを繰り出した。

 そのか弱い腕から放たれるパンチに何かしらの意図を読み取ったポニーテールの少女は仰け反った体無理やり捻って全力で回避する。

 金髪少女の小さい拳が宙を切る。

 なんとか回避したポニーテールの少女は一度後ろに下がった。無理やり体を捻ったせいで体の節々が悲鳴をあげていた。

 お互いの視線が交錯する。


「あ~惜っしい!私のか弱いパンチでも2メートルくらいは吹っ飛んでくれたのに~」


 金髪の少女は心底悔しそうな表情を見せた。

 対してポニーテールの少女はただ冷静に彼女を見据えた。


「…」


 金髪の少女は、一生懸命思考を巡らせているのだろうポニーテールの少女を見てため息をついた。


「あなたが正解に辿り着くことはなさそうなので教えて差し上げます。あなたはどうせ最初に私の能力をただの武器強化だと思ったんでしょうけど、全然検討違い。」


 金髪の少女は一呼吸置いて、


「あなたは作用・反作用の法則って知っていますか?」

「…ええ」


 ポニーテールの少女は短く答えた。作用・反作用の法則は高校で習う物理の基礎だ。


「私はその反作用を作用に、作用を反作用に変換することができます。ですから、発砲の際の衝撃を銃弾のエネルギーに変えたり、あなたのナイフによる作用も反作用にしてあなたにお返しすることだってできるのですよ。」


 だから、金髪の少女はあえて反動の大きいリボルバー式の拳銃を使ったのだ。彼女は続けて、


「私のさっきの攻撃は私の受ける反作用を作用にしてあなたにまとめてぶつけるつもりでしたのに…惜しかったですね。」


 金髪の少女が使う能力は分かった。しかし、


「なんであんたは敵である私に能力の種明かしをするの?」


 金髪の少女は口元に笑みを作ると、


「大サービスです。それにあなたの能力に関してはだいたい見当がつきましたし、これで対等ってことですよ。加えると、私の能力がばれたところでどうにもできないでしょう?」


 確かに、金髪少女の能力が本当なら彼女に物理攻撃は一切効かないことになる。だが、方法がないわけではない。


「そうね。それならロストタイムを狙うまで。そんなに強力な能力なら普通よりも早く時間切れになるはずよ。」


 彼女たちがさっきから使っている能力には時間制限が設けられている。それは個人差によるが、主に能力が強力であればあるほど使える時間が短くなる。彼女たちはそれをそのまんまの意味で「ロストタイム」と呼んでいた。


 弱点を指摘された金髪の少女はそれでも笑みを崩さなかった。


「確かに効果時間は短いですね。そこを突けばあなたは勝てるかもしれないです。でも、」


 金髪の少女は打ち終わった空の拳銃を適当に放り投げた。

 両手を腰の後ろに回し、そして、


「私の時間切れまであなたが耐え切ればの話ですがねえ‼」


 両手に持った十二発装填の拳銃が火を噴いた。


「!」


 連続的な轟音が耳を打つ。

 ポニーテールの少女は反射的に地面を転がった。

 さっきまで彼女が立っていた場所は覗けば下の階の教室が見えるぐらいに大きく抉れていた。

 ポニーテールの少女は急いで体制を整えようとしたがすぐには立ち上がれなかった。さっき転がった時に足首を捻ったらしい。


(っ!こんな時に!)


 なんとか起き上がったがその時にはすでに遅かった。

 金髪少女の両手の拳銃は確実にポニーテールの少女を捕らえていた。


(今から自己加速しても間に合わない。)


 金髪少女の指がトリガーを引こうとしている。


(ここで…終わる…?)


 ポニーテールの少女はギュッと目を閉じた。


 いきなりバトル!

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