2話「化物はまだいるものだ」
長らくお待たせしたッス。
『滅びの荒野』、かつてあった大戦のせいで草一つ生えず、死霊が湧き出るようになった地である。
「どうなっているんだこれは。」
勇者は地形が変わりきった荒野を見て驚いていた。
「どうしたら、こんなことになるんだ。むしろどういう状況でこうなったんだ?」
まるで、巨大な爆発が起こったかのように地面がえぐられていた。
(・・・こんなことができる化物なんて魔王か俺ぐらいだけど、こんなことする理由がまずない。)
そんなことを考えていると、どこからか羽の音が近づいてきた。
「お兄さんはこんなところで何をしてるの?」
金髪の紅と金のオッドアイをした蝙蝠と天使の羽をはやした少女が目の前に降り立った。
「お前は何者だ。」
「人に名前を尋ねるときは自分から名乗るのが常識だと思うな。」
勇者はただただ恐怖していた、目の前に居るのは少女の姿をした化物だからだ。
斬りかかれず、恐怖で足が一歩も動かない。恐怖を顔に出さず尋ねることができたのは、ただそれなりの修羅場をくぐってきたからにすぎないからである。
「・・・名前は無い、あるのは"元"勇者というしがらみだけだ。」
「・・・"魔王"とか名乗る小物を倒して、勝手に幻滅した人の称号?」
「魔王が小物って、どんな化物だよ。お前は。」
「"お前"じゃなくて、ルキだよ。お兄さん。」
ルキと名乗った少女は、そのまま語りだした。
「それにね、世界をわがものに出来ると思った魔王も、それを倒した力を恐れられ絶望し全てを拒絶しようとしたあなたも、小さすぎるの。」
ふと、さみしそうな顔になりながら空を見上げ。
「あの子は、力が強すぎるからと言って殺されそうになったり、誰かを助けても恐れられたりしても自分であり続けることを貫き通したよ。どんな結果になろうとも、その覚悟を背負って。」
そして、勇者の方に向き直した。
「本人いわく、『むかつく奴はぶっ倒す』らしいけどね。」
よさそうな話をぶち壊す一言で締めくくられたが、それを実行できるのもごく少数である。
「俺は・・・、それでも俺は、俺を殺そうとする奴らを排除するだけだ。」
「そうしたいならそうすればいいと思うよ。お兄さんの場合は大変だろうけどね。」
ルキは翼を広げ飛んで行き。勇者は自分が勇者と呼ばれるようになった王国に向かっていった。
今回登場したキャラクターに関しては、前に書いていた作品を見て下さいッス。
今はブログに上げていますッス。