一話「勇者になってもいいことはない」
か、書いてて鬱になりかけたッス。
勇者が育った環境は劣悪なものだった。
少しイラついたからと言って親から殴られ、食事は用意されていないのが当たり前、そして姉は巻き込まれないように勇者を無視し続けた。
だから勇者は生き延びるため、家を出た。
二桁にも満たない年齢で・・・
「・・・あの時の夢か。」
もう消えてしまった、たき火を見つめつぶやいた。
「あんな夢を見るなんて、やっぱり後悔しているのか、あの時のことを。」
家を出て勇者になるまで様々なことがあった。
幼いころはスリで生計を立てた。捕まって死ぬ手前までぼこぼこにされることもざらだったが。
魔王が現れ、国が軍を動かしたとき物資もそちらに動くので、自分もそこに移動した。
そこで知った、魔物を殺しその首を軍に見せると金を渡してもらえると。
そして、魔物を刈るために旅に出て、たまたま魔物に襲われていたどこかの国の姫を助けてしまい、かってに勇者と祭り上げられた。
思えば、あの時からちやほやされて、浮かれていたのだろう。
お人よしの甘っちょろい戦士と、研究馬鹿な魔法使いとで魔王を倒した後、先に自分の家に帰った。
これだけの功績を成し遂げたのだから家族も認めてくれると思ったのだ。
その幻想はすぐに打ち砕かれた。
母親は、「そんな功績を上げたのなら金をくれ金を。」とぬかし。
父親は、「子供のくせに、親より上に行きやがって。」と殴ろうとしてきた。
殴ろうとしてきた父親は、条件反射で切り捨てたし母親も屑でしかないから殺した。
他にも人の気配がしたから、その方に向かうとガリガリで痩せ細った子供が寄り添うように二人いた。
二人とも殴られていたのかアザだらけで、逃げられないように手錠までされていた。
「こんなことに金を使うぐらいなら、別の事をすればいいのに、本当に屑な親だ。」
俺が逃げたから逃げられないように手錠をつけられたのだろう、その上一人は息もしておらずもう一人は今にも死にそうで、うっすらと目を開けてこちらを見てくるだけであった。
「回復魔法はもう意味がないし、せめて安らかに・・・。」
そっと幻覚魔法でいい夢を見せ、そのまま止めを刺した。
「あの時、俺にあれ以上の事は出来なかっただろうな。そう思ってはいても後悔は残るか・・・。」
勇者は背後を振り返りこう問いかけた。
「あんたはどう思う"暗殺者"さん達よ。」
「勇者だとかちやほやされてもそれは一時だけで、化物だとか、親殺しだとか言われて命を狙われる。本当に損な役回りだよ。」
物言わぬ死体になった"暗殺者"に語りかるようになった時点で、すでに勇者の心は壊れているのかもしれない。