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夏の遊戯  作者: あお
5/21

4

 深夜十二時。武は家の者が寝静まっているのを確認すると、物音を気取られぬよう、そ

っと家を抜け出した。懐中電灯を灯し、奈緒宅を目指す。


 武が奈緒宅に到着すると、奈緒は既に家から脱け出して来ていた。

 「早かったね武。それじゃあこれ持って」

 奈緒から武にシャベルが一本渡される。奈緒の背中には、これから使用する道具が詰ま

っていると見られるリュックサックが担がれていた。

 「忘れ物は無いか?」

 「大丈夫。……それじゃあいこうか」

 二人はコンクリート小屋へ向けて歩き出した。さすがに田舎のこの時間では、明かりの

点いている民家は殆どない。真っ暗な闇の中で、鳴きつづける虫の声だけが二人の聴覚を

満たした。道中を照らすのは、二人が手に持つ懐中電灯の灯りのみである。

 「こんな夜中に外を歩いたの、初めてかも。なんか変な気持ち」

 「なに、もしかして、怖いの?」

 「そういうわけじゃねえよ。ただちょっと、新鮮だって思っただけ」

 「何それ。分けわかんないよ」

 二人は互いに軽口をたたき合いながら、コンクリート小屋を目指した。そして五分ほど

歩き、林の入り口へ到着した。

 「瀬山さん家、電気消えてたね」

 「こんな時間だし、寝てるだろ。まあ俺たちにとっては都合がいいけど。それより早い

とこ先進もう」


 林の入り口から奥を覗き込むと、闇は一層濃さを増していた。今からこの闇の中に踏み

入ることを考えると、武は少し気が引けた。

 「夜の森ってなんか不気味だな」

 「……うん。ちょっと想像した以上かな」

 真夜中の森の威圧感に畏怖しながらも、二人は意を決し、森へ足を踏み入れた。

 落ち葉を踏みしめる音があたりに響き渡る。歩いていると、時折名も知らぬ鳥の鳴き声

が静寂を破った。二人は迷わぬよう、微かなに残る道の痕跡を辿った。

 「道、あってるよね……?」

 「だと思うんだが、周りが真っ暗で何処歩いてるかわからん」

 「そっか。迷ってなければいいけど……」

 二人は俄かに不安を抱いた。夜の森が、これほどまでに方向感覚を鈍らせるものだとは

思っていなかったのだ。しかし頼れるものは微かに残るわだちしかなく、二人はただ、足

元の道だけを信じて進んだ。

 「昨日辿り着けたんだ。今日だって大丈夫さ」

 「うん。でも、そろそろ着いてもいい頃だけど……」

 「そうだな……ん? おいあれ、そうじゃないか?」

 武が前方に何かを発見し、声を上げた。暗闇の先にぼんやりとコンクリート小屋らしき

物とが見える。しかしこの距離では電灯の光が届かず、本物かどうかは判断できない。二

人はそのコンクリート小屋らしきものを目指し、足場の悪い道を進んだ。懐中電灯の明か

りが近づくにつれ、徐々にその姿が明らかになる。現れたのは、暗闇の中にひっそりと佇

む、目的のコンクリート小屋だった。


 「やっと到着したか……。それにしても、この小屋夜に見ると気味悪いな」

 電灯のあかりで照らし出されたコンクリート小屋に、武は人を寄せ付けぬ邪悪な雰囲気

を感じた。まさに、暗闇とフェンスとで厳重に防護されているかのような。

「そんな事思ってる暇無いよ。ほら、早速穴掘ろう」

 「……はいはい」

 二人は小屋の裏側のへと回りこんだ。小屋を囲っているフェンスに近づく。

 「それじゃあ前回同様に、ここを掘ろう。はい、軍手」

 二人は軍手を装着し、シャベルを握った。それから奈緒が、地面に勢い良くシャベルを

突き立て、穴を掘り始めた。それを見て、武も穴掘りへ加わる。


 二人は一心不乱に穴を掘った。土をえぐる音が、不気味に森の中へ吸い込まれていく。

 「……なんだかこうして真夜中に穴掘ってると……死体を埋めてるみたいだね……」

 「……おいおいよせよ……この状況だけでも怖いってのに……」

 「……やっぱ怖いんだ……ふふ……」

 それからしばらく、二人はわき目も振らず、穴を掘り続けた。掘り始めてから一時間弱、

ついに二人は、人一人通り抜けられるほどの穴を掘り抜いた。その頃には、二人は大量の

汗を滴らせていた。

 「ふう……。こんなもんで十分だろ……」

 「よし。じゃあ私が先に、フェンスの中へいくよ」

 奈緒は、掘りぬいた穴を早速くぐってみることにした。初めに下半身を潜り込ませ、そ

の後二本の腕を巧みに動かして上半身を徐々に押しやっていく。

 「武、見てないで私の体押してよ。狭くてうまく進めないの」

 「はいはい。いくぞ……それっ!」

 武の助力で、奈緒の体は少しずつ前へと進んでいく。それから格闘すること数分、奈緒

はようやくフェンスの向こう側へ抜け出ることに成功した。奈緒は体についた泥を払いな

がら言った。

 「よっしゃ。それじゃあリュックをこっちに渡して。そうしたら次は武の番だよ」

 「おし、わかった」

 武はフェンス下の穴から、リュックを奈緒に手渡した。次に武は自らに気合を入れると、

奈緒に習って下半身を穴に潜り込ませた。そのまま体を押し入れるようにして、前進を試

みる。しかし、やはり自らの力だけでは思うように進まない。

 「駄目だ、さっぱり進まん。奈緒、すまんが、そっちから足引っ張ってくれ」

 「よしきた。……う、重いな……じゃあ引っ張るよ……それっ」

 奈緒は武の両足を抱えると、ずるずると武の体を引きずり始めた。みるみる武の体がフ

ェンスの向うに吸い込まれていく。そしていくらも時間が掛からぬうちに、武はフェンス

の向うへ抜け出ることができた。武は起き上がると、驚きの表情で奈緒を見遣った。

 「……お前、すごい力だな……」

 「そう? ありがとう」

 「嬉しいのかよ……まあいいけど。それより、早いとこ次に移ろう」


 二人は次いで、コンクリート小屋側面の窓下へと向った。窓は二人の身長よりも高い位

置に取り付けられており、中を窺うことはできなかった。

 「やっぱり窓高いね。武、屈んで踏み台になって」

 「了解。頼むから、乗るときは靴を脱いでくれよ」

 「わかってる、わかってる。ほら、さっさと屈む」

 武は渋面を作りながらも、いさぎよく奈緒の指示に従い、その場で四つ這いの体勢をと

った。武が四つ這いになると、奈緒は履いていた靴を脱ぎ、足元を確かめるようにして、

武の背の上に立った。奈緒が武の背の上に立つと、丁度目線の位置に窓が現れたので、奈

緒は懐中電灯で窓の向う側を照らし、中の様子を窺った。

 「おい奈緒、なんか見えるか?」

 「うーん……暗くってよく見えないけど、部屋の真ん中に、下へ降りる階段みたいなの

が見える。見渡して見たけど、他にはなーんもなさそう」

 「降りる階段ってことは、地下があるってことか? こんな小屋に地下だなんて、なん

か変じゃないか?」

 「でもあれ、絶対階段だよ。階段の奥までは見えないけど、明らかに下まで続いてる」

 「そうか……とりあえず一旦降りてくれ。背中が痛い」

 室内を一通り見終え、奈緒は一旦地上へと降り立った。そして中で見た詳細を武へ伝え

た。

「ふむ……。それでお前、やっぱり階段の下へ降りたいと考えてるのか? 危険な気がす

るが……」

 「だってここで引き返したら、私達ここへ何をしに来たのかわからないじゃん。私はい

くよ」

 「なにがあるか分からないんだぞ? しかも一人でなんて、絶対に危険だ。一度引き返

して計画を練り直した方が……」

 「危険なのは分かってるよ。でもここまで来たんだから、絶対に行く。でないと帰れな

い。これは私のプライドの問題なの」」

 「お前はいつもそうだな……。わかったよ、お前の好きにしろ。その代わり、やばいと

感じたら直ぐに戻れ。わかったか?」

 「うん、それだけは約束する。わがまま言ってごめん。……じゃあ窓の鍵開けるから、

もう一度屈んでもらっていい?」

 「了解。くれぐれも無茶はするなよ」

 奈緒の身を案じ、小屋の中に入る事を反対した武だったが、奈緒の強い意志に根負けし、

最終的に、二人は計画を続行することで合意した。


 次の行程は、窓の内側に取り付けてある鍵を開錠するため、窓に腕を通すことのできる

穴を開ける作業だった。その為、武は再び四つ這いの体勢をとり、奈緒の足場となった。

奈緒は作業に使用する道具をリュックから取り出すと、それを持って再び武の背の上に立

ち、窓の鍵開け作業へと取り掛かった。

 「どうだ、いけそうか?」

 「このタイプなら、多分大丈夫……よいしょ」

 奈緒は窓枠とガラスの間に手にしたドライバーを差し込むと、力強くそれを引いた。す

るとてこの原理でドライバーの先端部分のガラスが破損し、同時にガラスの割れる鋭い音

が辺りに響いた。直後、小屋の内側に落ちたガラスの破片が、地面に着地して乾いた音を

響かせた。

 「割れた……こんなにうまくいくとは」

 「試したこと無かったのかよ。まあ経験あるほうが問題だが」

 「ネットで知ったやり方だったんだよ。とにかく、窓開けるよ」

 「おう。怪我しないように気をつけろよ」

 奈緒はガラスが割れてできた穴に腕を通し、内側から窓の鍵を開錠した。その後腕を穴

から引き抜き、窓をスライドさせると、小屋への浸入路が完成した。

 「開いたね。それじゃあ私、中はいるよ」

 「割れたガラスに気をつけろよ」

 奈緒は人一人通れるほどの穴の縁に両手を掛けた。そして勢い良く飛び上がると、その

まま穴の中へ体を入れ込んだ。その体勢で更に足を引き上げると、懐中電灯で足元を確認

した後、窓の向こう側へと着地した。こうして奈緒と武は、コンクリートの壁一枚を挟み、

互いに隔てられてしまった。

 「大丈夫か? 結構高さあっただろ」

 「うん平気。少し中を見渡してみるね」

 奈緒は懐中電灯を構えると、部屋の隅々を検分し始めた。懐中電灯の明かりに照らされ

た埃が、無限に中を舞っている。どうやら長い間換気がされていないようだ。奈緒は、室

内に何かしらこの小屋の用途を示すものがあるかと期待したが、検分し終えてみると、そ

の様なものは一切見当たらず、それどころか、普通は置かれていてもよいはずの棚や机の

類、その他物品等が、なに一つとして置かれていなかった。恐ろしく殺風景な部屋のど真

ん中に、地下へと下る階段だけが存在していた。その事実に、奈緒はなにか、空恐ろしさ

のような感情を抱かずにはいられなかった。しかしそれと同時に、奈緒の中には、倒錯し

た好奇心のような感情も芽生えていた。

 「武、やっぱり階段の他には何も無いよ、この部屋。物一つ置いてないもん。それに、

やたら誇りっぽい」

 「やっぱり、今は使われてい小屋なのかもな。何かの理由で、打ち捨てられたのかもし

れない」

 「うーん。それにしても、物の置かれていた形跡が無いような……」

 「そんなの、物を撤去したときに、部屋を掃除しちゃったからだろ。……なあ、もう何

も無かったんだから、帰ろうぜ。小屋の中に入れたってだけでも、十分目的は達成できた

だろ」

 「それは駄目。まだ階段の下を調べてないもん。この下に何かあるかもしれないし」

 「はあ。もう何も残ってないだろ……。しかしまあ、地下を調べてお前の気が済むのな

ら、俺はもう止めはしない。どうせ止めたって、聞かないだろうけど」

 「ありがとう。地下に何も無かったら、今度は潔く帰るから」

 「是非そうしてくれ。地下はただの倉庫でしたってオチを期待してる」

 「はは、もしそうだったら笑えるね。それじゃ、早いとこ調べてくるよ」

 「おう。何度も言うけど、何があるか分からないんだから、気をつけて行けよ」

 「うん。危ないと思ったら直ぐ戻るし、何かあったら大声出すから。……じゃあ行って

くる」

 奈緒はコンクリート越しの会話を終えると、単身、地下へと続く階段を下っていった。

武には引き上げることを提案されたが、結局沸き起こる好奇心に抗えなかったのだ。奈緒

の階段を下る足音が、一段下る度に武の耳に届いた。武にとって、暗闇の中で唯一その音

だけが、奈緒の存在を示す拠り所だった。しかしその音も徐々に遠退き、やがて届かなく

なった。



 ――地べたに座り込み、真っ暗な夜の闇の中で一人、武は奈緒の帰りを待っていた。腕

時計を電灯で照らし、時刻を確認する。時刻は午前二時を回ったところだった。奈緒が地

下へ向ってから、凡そ十五分が経過している。もうそろそろ戻ってきてもよい頃合なのに、

いまだ音沙汰が無いので、武の心には俄かに不安の色が兆していた。まさか、奈緒の身に

なにかあったのではないか。そんな事を思い始めた時、不意に、コンクリート小屋の中か

ら、階段を上る足音が、微かだが聞こえてきた。武は立ち上がり、小屋の中へ呼びかけた。

 「おい奈緒、戻ってきたのか?」

 しかし、返事は無かった。それでも、届く足音が次第に大きくなっていることから、足

音の主がこちらへ近づいてきていることはわかった。武は相手からの応答が無いことを怪

訝に思いながらも、とりあえずは、無事に奈緒が戻ってきたことに安堵し、地上へ到達す

るのを待った。やがて足音は止み、小屋の中から声が掛けられた。

 「武……ただいま」

 少々弱々しい声音ではあったが、その声は紛れも無い奈緒のものだった。武は奈緒の声

を聞いてすっかり安心してしまい、その時は奈緒の声音の変化などにはまったく気付かな

かった。

 「おかえり奈緒。というか、呼びかけたら、返事くらいしろよなー。こう見えて、結構

心配してたんだぞ。まあ話は後だ。今から縄梯子をそっちに渡すから、それを使って戻っ

て来い」

 武はそう言うと、リュックの中から今朝作製した縄梯子を取り出した。そして縄梯子の

一方の端を掴むと、もう一方の端を窓穴から小屋の中へ投げ入れた。

 「こっちの端を俺の体重で押さえつけてるから、そのまま登って来いよ。まさか、お前

が俺より重いって事は無いよな。はは」

 武は、自らの冗談に奈緒が何かしら反応を示すとばかり思っていたが、予想に反して、

帰ってきたのはまたも沈黙だった。奈緒を怒らせてしまったと思い、どうしたものかと考

えあぐねていると、急に踏み押さえていた縄梯子がずしりと重みを増した。そして縄が軋

む音と共に、奈緒の頭部が窓の向こう側に現れた。

 「さっきの冗談だからさ。そんな怒るなって」

 「え? ……ごめん、聞いてなかった。とりあえずそっちへ降りるね」

 奈緒は窓枠に体を引き込むと、中に浸入したときと同様に、コンクリート小屋の外へと

飛び降りた。すかさず武が近寄り、声をかける。

 「お疲れ奈緒。ちゃんと戻って来れてよかったよ。俺、お前の身に何かあったのかと思

って、心配したんだぞ。まあ無事に帰ったんだし、良しとしよう。それで、地下は一体ど

うなってたんだ? もしかして、秘密宗教の集会所だったと――」

 「何も無かったよ!……本当」

 武の言葉を掻き消す様に、奈緒が唐突に発言した。急に奈緒が大きな声を出すので、武

は驚いて奈緒の方を見遣った。良く見れば奈緒の体は、夏場だと言うのに小刻みに震え、

電灯に照らし出された表情は、ひどく青ざめているように見えた。

 「どうしたんだ? すこし顔色悪いぞ。……地下で何かあったのか?」

 武が尋ねると、奈緒は平静を装うようにして言った。

 「う、ううん、何も無い。武の言ったとおり、ただの倉庫だったよ。……はは」

 武から見た奈緒の態度は、地下に向う前と今とでは、明らかに変化していた。普段の覇

気に溢れる態度とは違い、今の奈緒は、まるで何かに怯えている様な、弱々しい印象を受

けた。視線は下方に固定され、心ここにあらずと言った様子だった。

 「……そうか。なあ、体調でも悪いのか? さっきから震えてるみたいだけど。風邪引

いてたりしたらまずいし、今日はもう帰ろうぜ?」

 「うん、そうだね……帰ろう」

 奈緒の体調が優れないこともあり、二人は足早に引き上げることにした。作業で使用し

た道具類を片付け、フェンスを潜る。その後、忘れ物が無いことを確認し、森の出口へと

歩き出した。

 

 帰路の間、奈緒はずっと武の後ろについて歩いた。行きの賑やかさとは違い、帰りの奈

緒は終始無言で、武が時折話しかけても、どこか上の空だった。武は依然として体調の優

れぬ奈緒を心配し、はぐれない様奈緒の手を取ると、帰路を急いだ。十分も掛からずに森

を抜け、そこから五分ほど歩き、奈緒の自宅に到着した。

 「お疲れ様。いやー疲れた。けれど、なんだかんだで楽しかったな。いい思い出になっ

た」

 「うん、そうだね……」

 「それにしても、明日休みでよかった。今から寝たんじゃ、起きるのはお昼頃になるか

らな。お前も体調悪そうだから、ゆっくり休めよ」

 「うん、わかった……」

 「奈緒……お前本当に大丈夫か? これ以上悪化するようなら、無理せず病院に行った

方がいいぞ。とにかく今日はゆっくり休め。それじゃあ、おやすみ」

 「うん、おやすみ……」

 二人が互いに別れを告げ、その日は解散となった。奈緒はおぼつかない足取りで、まる

で魂の抜け殻がさまよう様に、ふらふらと玄関へ向っていった。奈緒が自宅へと入るのを

見届けた後、武も自宅へと歩き出した。

 

 武は自宅への帰路、別れ際に見た生気を欠いた奈緒の顔を思い出していた。武と奈緒の

付き合いは長いが、あのように憔悴した表情を武は今までに見たことが無かった。どんな

時でも周囲には明るく振舞っていた彼女が、あのような表情を見せるのは驚きだった。そ

れが体調不良から来るものなのか。あるいは別の理由から来るのかは、今の時点で武には

知る由も無かった。とにかく、明日また、武は奈緒の様子を見に行くことに決めた。

 自宅へ到着した武は音を立てぬよう玄関の扉を開いた。皆が寝静まっていることを確認

し、足音をしのばせて自室へと向う。自室に入ると、汚れたジャージを母親に見つからぬ

ように仕舞い、そのまま布団へと倒れこんだ。すると今日一日の疲れが武の体に波のよう

に押し寄せ、最前の出来事の余韻に浸ることもなく、武はすぐさま泥のように眠ってしま

った――。

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