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夏の遊戯  作者: あお
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3

 翌日、昼食を終え昼休みへと突入した二人は、昨日に練られた計画の概要を細かくまと

まる為、教室にて話し合い開いた。

 「私、今朝家に縄梯子がないか探してみたんだけど、見つからなかったんだ。やっぱり

普通の家には置いてない物なのかな。そういうことで、縄梯子を自作することにしまし

た」

 「自作か。まあ簡易的なやつなら、作れなくもなさそうだけど。それと、窓の鍵の件だ

けど、具体的にはどうやって開けるんだ? なんか小さな穴あけるとか言ってたけど」

 「ドライバーをサッシ枠とガラスの間に差し込んで、てこの原理でぐいっとね。そうす

ればガラスが割れて小さな穴ができる。そこから手を突っ込んで鍵を開けるの」

 奈緒は手真似を交えながら、鍵の開け方について説明した。

 「なんか空き巣みたいだな。まあやってる事は同じか。じゃあこれをいつ実行するかだ

な。なるべく人目につかない時間帯の方がいいだろう。そうなると、夜か?」

 「うん。日中だと、この前みたく人と遭遇する可能性もあるからね。あとは日時だけど

……」

 「明日がいいんじゃないか? 丁度学校休みだし。日中は縄梯子作ったり、必要なもの

を用意しよう」

 「オッケー。それと、このことは絶対に誰にも言わないこと。二人だけの秘密。わかっ

た?」

 「言われなくても分かってるよ。じゃあ明日の朝、お前の家に行くよ」

 こうして二人の計画は大方まとまりを見せた。計画に必要なもの等は、実行日当日であ

る明日の日中に用意することになった。



 ――翌日、この日学校は休みということで、武は朝から奈緒宅に訪れた。インターフォ

ンを鳴らすと、玄関から奈緒の母親が顔を出した。

 「あら、たけちゃん、おはよう」

 「おはようございます。奈緒はいますか?」

 「奈緒なら車庫にの方に行るわよ。お父さんに縄だのスコップだのがあるか聞いてたけ

ど、何に使うのかしら」

 「さあ。また変な遊びでも考えてるんじゃないですかね。……それじゃあ車庫の方行っ

てみます。ありがとうございました」

 計画が奈緒の母親に露呈してしまわぬ様、武は何も知らない風を装った。彼女の様子か

らして、何かを勘繰っているわけではなさそうだ。武は奈緒の母親に礼を言い、奈緒が居

ると言う車庫へ向った。


 車庫では奈緒が縄を片手に何やら試行錯誤を繰り返していた。奈緒は武の接近に気付か

ぬほど、目下の作業に集中していた。手を動かしては、しきりに頭をかしげている。武は

気付かれぬよう奈緒の背面に回り込むと、脅かすようにして声を掛けた。

 「よっ! 朝からせいが出ますなー」

 奈緒は驚いて体を仰け反らせた。そして振り返り声の主を認めると、途端に膨れっ面を

作って見せた。

 「もう! 本当にびっくりしたじゃん! 今度やったら絶交だから!」

 「そんな怒るなって。ちょっとからかっただけじゃん。それで、縄梯子作ってたの

か?」

 「そうだよ。せっかくいい調子だったのに、武のせいで調子狂った」

 「そうは見えなかったけどな……」

 「え?」

 「ごめん、一緒に作ろう。俺も手伝うからさ」

 「……わかった」

 武が縄梯子製作に協力するということで、二人は和解した。勿論説明書など有るはずも

無く、頭の中にあるイメージだけを頼りに製作した。悪戦苦闘すること一時間、ついに二

人は縄梯子を完成させるに至った。しかしその出来栄えは、辛うじて縄梯子の体裁を保て

ているといった具合だった。

 「よし、完成だ! まあ見た目は悪いけど、ちゃんと使えれば問題ないだろ」

 「じゃあそこの庭木に引っ掛けて、ちゃんと重さに耐えられるか確認しようよ」

 「そうだな。それでもし駄目だったら。お前夜までにダイエットしなきゃな」

 「なにそれ。私が太ってるっての?」」

 「冗談冗談。そんなことより、早く試してみよう」

 二人は完成した縄梯子を早速試してみることにした。近くにあった庭木の枝に、縄梯子

の一方の先端を結びつける。そしてしっかりと固定されていることを確認し、奈緒は一歩

一歩確かめるように縄梯子を上っていった。やがて枝の上まで到着し、縄梯子の耐久度が

問題ないことが証明された。

 「やっほー。すごい、ちゃんと登れたね。これなら本番でも大丈夫だ」

 「ほんと器用な奴だな、お前は。……あ」

 「え、どうしたの?」

 「いや、なんでもない。それより早く降りてこいよ」

 「何だよ。ノリ悪いな」

 実はこの時、季節が夏ということもあって、奈緒はスカートをはいていた。そういう訳

で、真下から見上げていた武には、スカートの中が丸見えだった。それに気付いた武は途

端に羞恥を感じ、奈緒に下へ降りることを促したのだ。

 「……よっと。ただいま。あれ、どうしたの武? 顔赤いけど、熱でもあるんじゃな

い?」

 「いや、別に……。そんなことより、今日必要になりそうなもの、今の内に用意しとこ

う。ほら、必要そうなものリストを、ノートにまとめてきた。」

 「お、やるねー。じゃあリストにあるものを用意してみよう」

 二人は必要になると思われる物を用意していった。その殆どが、親に使用用途を聞かれ

ては困る物だったので、見つからぬようにこっそりと持ち出した。

 「えっと、縄梯子、懐中電灯、シャベル、軍手、ドライバー……よし、これで全部だね。

あとは、何時に作戦を決行するか」

 「家族にばれたらまずいから、夜更けの方がいいな。そうしたら、十二時ぐらいか?」

 「了解。じゃあ十二時にしよう。集合場所は私の家で。汚れても大丈夫な服着てくるこ

と。間違っても、寝過ごしたりしたら駄目だよ」

 「大丈夫だって。お前こそ、怖くなって逃げ出すんじゃねーぞ。じゃあ俺、一旦家戻る。

くれぐれも忘れるなよ」

 「うん。それじゃあまた夜中に」

 二人は夜中十二時に集合する約束を取り交わし、一旦解散した。

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