第31話:紫の刺客、深紅の影
【都市伝説】魔導機とかいう魔法ロボ、実在するのか?【嘘か真か】
1: 名無しさん
最近リナの配信で騒がれてる「魔導機」っていう概念。
あれってやっぱりオカルトなんかな? 政府は「次世代AI搭載の重機」って言ってるけど。
5: 名無しさん
魔法なんてあるわけないだろ。
中身がブラックボックスなのは、メーカーの知財を守るため。
「魔法」って呼ぶのは、仕組みを理解できない奴らの妄想。
12: 名無しさん
でも、カイトがアヴァロンを「ハック」してる時のあの光……。
あれ、物理現象として説明つかなくないか?
一部の軍事マニアの間じゃ、メーカーは魔法を工業化してるって噂だぞ。
25: 名無しさん
【速報】カイト一味の潜伏先、警察に特定された模様!
今、リナが配信してるけど……これ、マジでヤバい奴らが来てる。
38: 名無しさん
うおっ、今の見たか!?
天井をぶち抜いて降りてきた紫色の機体。
あんなの、どのメーカーのカタログにも載ってないぞ。
本当に「魔法」の力だとしたら、俺たちの常識は全部嘘だったのか……?
***
ドォォォォォンッ!!
遺跡拠点の天井が完全に崩落した。
瓦礫の雨の中、俺はセレナを庇いながらアヴァロンの操縦席へ飛び込む。
「カイトくん、上! 敵の増援、第2波が来るよ!」
リナの叫び声。
崩れた天井の穴から、紫色の燐光を纏った一機の機体が、音もなく舞い降りてきた。
「……ターゲット、捕捉」
スピーカーから流れてきたのは、感情を一切削ぎ落とした少女の声。
その機体は、アヴァロンよりも一回り小さい。
だが、その背後に浮かぶ紫色の魔導翼は、空間そのものを震わせるほどの魔力を放っていた。
「……嘘でしょ。あの機体、魔導回路の『ノイズ』が全くない……。完璧な、完全な兵器じゃない」
ナギが震える声で呟く。
俺の心臓が、ドクンと跳ねた。
その紫の機体のシルエット。そして、回路から溢れ出す「論理の気配」。
「……スミレ、さん……?」
思わず、かつての相棒の名前を呼んでいた。
システム上の登録名は『スカーレット』。
だが、俺にとってはそれ以上の存在だった、あのプログラム。
目の前の敵は、彼女の「仕様」と酷似していた。
『……個体名:ヴァイオレット。管理者権限より、バグ(カイト)のデリートを命じられた。……不愉快なノイズだ。直ちに消去する』
その声は、スミレさんよりも少しだけ高く、そして——氷のように冷たかった。
ヴァイオレットと名乗った少女が、右手の魔導剣を抜く。
速い——目視すら不可能な速度で、彼女の剣がアヴァロンの胸元に突き立てられた。
「グッ、あ……!?」
アヴァロンの装甲が、紙細工のように切り裂かれる。
メーカー製の装甲を、論理的な「切断命令」で直接無力化してやがるのか。
「カイト殿! 離れろ! 今のアヴァロンじゃ、あいつの演算速度には勝てない!」
ガレージの隅で、封印されたままのジェイ・ガストが叫ぶ。
「わかってる……。ナギ、ガストの右腕のプロテクトを物理的にブチ抜け! 論理は俺がハックする!」
「無茶言わないで! あれは『皇国重魔工』がかけた、国家レベルのロックなのよ!」
「——関係ねえ! 趣味のロボット制作に、許可なんて要らねえんだよ!」
俺はアヴァロンを回避行動に移させながら、キーボードを叩きつける。
ヴァイオレットの攻撃は、正確無比だった。
一撃ごとにアヴァロンの回路が「デリート」され、感覚が消えていく。
だが、その絶望的な攻撃の隙間に、俺は見つけた。
「……見えたぞ。お前のコード、スカーレットの『フォーク(分岐)』だな」
上位存在は、スカーレットのデータを流用してこの刺客を作った。
ならば、その「脆弱性」もまた、スカーレットと同じ場所にあるはずだ。
「ナギ、今だッ!!」
俺が特定のキーを押し込んだ瞬間、ガストの右腕を縛っていた「光の鎖」がバチバチと火花を散らして霧散した。
「……えっ!? ロックが……消えた!? 嘘、ありえない!」
ナギの驚愕を余所に、ジェイ・ガストのパトランプが、かつてないほど激しく赤く燃え上がる。
「カイト殿、恩に着るぞ……! この拳、我が正義と共に解き放つ!」
ロックを強引に解除されたガストの巨大な拳が、ヴァイオレットの魔導剣と真っ向から激突した。
拠点の地下空間が、膨大な魔力の衝撃波で白く染まる。
「……論理の書き換えを確認。……不可解。なぜ、旧世代の機体が私の権限を突破できる」
ヴァイオレットの金色の瞳(セレナと同じ色だ)に、初めて困惑の光が走る。
「……旧世代じゃない。俺たちがアップデートし続けてる『最新鋭』だよ」
俺は血の混じった唾を吐き捨て、アヴァロンの「論理捕食」を最大出力で起動させた。
「さあ、お前のその『姉妹』譲りのコード……全部俺にマージ(統合)させてみろ!」
崩落した拠点の中で、蒼、白、紫の三つの光が、世界を書き換えるための戦いを開始した。
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