第27話:魔導起動(マギテック・ブート)
今、何が起きている? [トレンド:#世界のバグ #勇者警察 #アヴァロン]
@User_A: > あの映像、マジで本物なの? 警察が市民を消し去るなんて……。 #世界のバグ
@Tech_Lover: > 映像解析したけど、あのアヴァロンって機体、既存の物理法則無視した動きしてる。それ以上に、あの黒いロボット……あれは人類の技術じゃないぞ。
@Justice_Seeker: > 【悲報】警察庁、会見で「映像はテロリストによる高度なフェイク」と主張。いや、リナちゃんの配信は生中継だっただろ。嘘つくにしても雑すぎ。
@Daily_News: > 各国政府、日本の警察庁に対し「説明を求める」異例の声明。世界規模の暴動が発生する懸念も。
@Rina_Fan_Club: > リナちゃん、どこに行ったの……? 最後に流れたカイトの叫び声が耳から離れない。お願い、生きてて。 #アヴァロンを救え
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あの日、パルスが真っ赤に染まった瞬間、世界の「正義」は死んだ。
瓦礫の山となったガレージから、俺たちが逃亡者へと堕ちた夜。
画面の中で荒れ狂う数億人の怒りと悲鳴は、俺たちの潜む地下廃坑道にまでは届かない。
「……カイトくん。地上はまだ混乱してる。警察庁は『原因不明のテロ』って発表したけど、私の『パルス』が流した映像のせいで、誰も信じてないよ」
リナが、膝の上に置いた数台の端末を操作しながら呟く。
彼女が構築した独自の秘匿通信網『ダーク・パルス』。
それが、俺たちが今この瞬間に警察に包囲されていない唯一の理由だ。
彼女は俺たちの存在をネットワークの「死角」へと隠し続けている。情報の女神——その二つ名は、伊達じゃない。
「助かる、リナさん。……こっちはどうだ、アヴァロン」
俺は、天井から吊り下げられた無残な姿のアヴァロンを見上げた。
装甲は剥がれ、内部フレームが露出している。だが、その中心部——本来なら最新のCPUが鎮座しているはずの場所には、今、一人の少女が横たわっていた。
金髪の髪の乙女、セレナ。
彼女の身体から伸びる「光の糸」を、俺はアヴァロンのメインフレームに強引にバイパス(直結)させている。
「……解析開始。……規格外の論理を、既存のバイナリに翻訳する」
キーボードを叩く指が、摩擦で熱を帯びる。
網膜ディスプレイに流れ落ちるログは、もはや俺の知るプログラミング言語ではなかった。
[——Warning:物理定数の改ざん(魔法)を検知]
[——Error:現在のOSでは『存在しないはずの数式』を処理できません]
「処理できない? なら、処理できるOSに書き換えるまでだ」
俺は、ポケットから『紅いチップ』を取り出した。
スミレさんの断片。0.00%という絶望的な数字を吐き出し続ける、彼女の遺志。
俺はそのチップを、セレナの光の回路が交わる「特異点」へと差し込んだ。
「……スミレさん。あんたが『バグ』だっていうなら、この世界のルールそのものが『不具合』なんだ。……俺が、今から全部、直してやる」
エンターキーを、叩きつける。
その瞬間、地下空間の重力が消えた。
キィィィィィィィンッ!!
電子音ではない。魂の震えのような高周波が鳴り響く。
アヴァロンのフレームを、セレナの「光」が血管のように巡り、ボロボロだった機体が蒼い燐光を纏って浮上する。
「……っ、なんだ、この出力は!?」
モニターに表示された数値が、カンストしてブラックアウトする。
アヴァロンのメインOSが、自分自身を一度完全に「デリート」し、新しい仕様で再構築を始めた。
[——Booting Magitech-OS……]
[——プラットフォーム:『魔導ハック』へ移行完了]
[——現在の演算能力:測定不能]
アヴァロンのカメラアイが、これまでの電子的な光ではなく、命を持ったかのような「深い蒼」に点灯した。
それと同時に。
中心部で眠っていたセレナが、長い睫毛を微かに震わせた。
「……あ、あぁ……」
「セレナさん!? 分かるか、俺だ。整備士の、カイトだ」
彼女の瞳がゆっくりと開く。
その金色の双眸に、俺の姿が映った瞬間——アヴァロンのスピーカーから、彼女の声と、スミレさんの声が重なったような、奇妙な多重音声が響いた。
『——認識……。管理者の不具合を、修正する者……』
「……いいや。俺はただの、しつこい整備士だよ。……さあ、始めようぜ。第1段階の『デバッグ』をな」
俺たちの反撃の合図を告げるように、リナの端末が警告を発した。
「カイトくん、来たよ! 上空から、認識外の『何か』が、ここに向かって急降下してきてる!」
「……上等だ。ちょうど、新しいパーツ(素材)が欲しかったところだ」
俺はアヴァロンの操縦桿を握りしめる。
科学が敗北したこの世界で、俺たちは今、最強の「禁忌」を手に入れた。
【第3章:魔導ハック 叛逆のエンジニア 開幕!】
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本日、19時10分に最新話を投稿します!




