【2章完結】神の仕様書(コード)をデバッグしろ!未知の領域へ強制介入
あの日、パルス(全世界同時配信)が真っ赤に染まった瞬間、世界の「正義」は死んだ。
瓦礫の山となったガレージの片隅で、リナは力尽きたように座り込んでいた。
その手には、熱を帯びたままの配信端末。画面には、今もなお秒間で数万件を超えるコメントが、止まることのない滝のように流れ続けている。
『あれは警察の機体じゃない……化け物だ』
『あの子を消した光は何だ!? 説明しろ警察庁!』
『アヴァロンの整備士を見捨てるな! 彼らは正義のために戦っていた!』
リナが命がけで晒し続けた、国家による一方的な虐殺と、漆黒の機体による「理不尽な消滅」。
警察がどれほど情報検閲をかけようと、世界中の「目」が目撃してしまった真実までは消せなかった。
「……カイトくん。……私、やったよ。世界中の人が、今の、全部見てた。……あいつら、もう隠せないよ」
リナの声は震えていた。指先はタイピングのしすぎで血が滲んでいる。
彼女が数億人の注目をこのガレージに縛り付けたからこそ、警察庁は世論を恐れ、あとの部隊を突入させることができなかったのだ。
「……ああ。リナさん、あんたは世界を味方につけた。……最高の仕事だ」
俺は彼女の肩を叩き、それから沈黙したままのホワイト・ヴィクトリーを見上げた。
警察は正義ではない。
そして、この世界を裏から管理する、人知を超えた「上位の管理者」が実在する。
隠しようのない真実が、呪いのように世界へと刻み込まれた夜だった。
ジェイ・ガストの隠密部隊の助けを借り、俺たちは命からがら包囲網を脱出した。
辿り着いたのは、旧市街の地下にある廃坑道——新しい、、かりそめの秘密基地だ。
俺は、大破したホワイト・ヴィクトリーのコックピットをこじ開けた。
中にいたセレナは無傷だが、まるで深い眠りに落ちたように反応がない。
「……なんだよ、これ。……基板がないのか?」
本来なら複雑な電子回路があるはずの場所に、それはあった。
「光の糸」で編み上げられた、心臓のような脈動。
アヴァロンのセンサーが、絶え間なく警告を吐き出す。
[解析不能:未知の構成言語を検出]
[警告:この機体は、既存の物理法則で動いていません]
『……か……い……と……。……ミツケテ……』
「……っ!!」
俺は、彼女が遺した『紅いチップ』をアヴァロンの空きスロットへ叩き込んだ。
セレナの機体から伸びる「光の糸」をアヴァロンの回路に強引にバイパス(直結)させた、その瞬間——。
ドクン、と。
地下の冷たい空気を震わせるような、重低音の「鼓動」が響いた。
アヴァロンの全モニターが、既存の論理を自ら破壊し、再構成を始める。
[——システム・アーキテクチャの変更を検知]
[——科学を破棄……魔導へと階層を移行します]
「……仕様の変更だと? ふざけるな。……俺が、俺の指で、書き換えてやるよ」
カイトの瞳に、整備士としての、そして一人の男としての「反逆の火」が灯る。
視界(網膜ディスプレイ)には、世界の理を定義する膨大な量の「未知のソースコード」。
[——サルベージ目標:『スカーレット』の断片を検知]
[——座標:世界の裏側(管理領域)]
「……待ってろ、スミレさん。……魔法だろうが、神様だろうが、論理があるなら、俺にデバッグできない道理はない」
カイトが力強くエンターキーを叩いた。
アヴァロンのカメラアイが、物理法則を無視した「蒼い光」を宿し、静かに浮上を始める。
その時、眠っていたセレナの指先が、微かに、だが力強くカイトの袖を掴んだ。
(第2章 完結 / 第3章『魔導ハック:スミレ救出編』へ続く)
第2章、最後までお読みいただき本当にありがとうございました!
リナが命がけで繋いだ『パルス』が、ついに世界の理の綻びを暴き出しました。
科学が敗北し、絶望のどん底に落とされたカイト。
しかし、彼の手の中に残されたのは、スミレを連れ戻すための『未知の仕様書(魔法)』でした。
そして、大破したホワイト・ヴィクトリーの中で眠るセレナ。
彼女の身体から漏れ出す「光の糸」の正体とは——?
物語はいよいよ、第3章『魔導ハック:スミレ復活編』へと突入します!
「科学で届かないなら、世界の理そのものをデバッグしてやる」
カイトの本当の反撃が、ここから始まります。
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それでは、第3章でお会いしましょう!




