第22話:「お前らのコード、汚いんだよ」——警察の最強合体ロボ、天才整備士の『強制アンインストール』で瞬時に解体される
「……くっ、なんて支離滅裂な挙動だ……ッ!」
アヴァロンのコクピットで、俺はコンソールを叩きつけながら毒づいた。
目の前の『ジェイ・エグゼクター』。警察庁が無理やり拡張パーツを縫い合わせたその姿は、物理法則を無視した「バグ」そのものだった。
四本の腕が、それぞれ別個のアルゴリズムで襲いかかってくる。
回避しても、あり得ない角度から追撃が飛ぶ。それは「戦術」ではなく、ただの「暴力的なリソースの浪費」だ。
「カイト! 私のシールドが……もう持たない!」
ホワイト・ヴィクトリーの装甲が火花を散らす。セレナが懸命に盾となり、俺への直撃を防いでいた。
「……セレナさん、リナさん! あと三十秒だけ、ラインを維持してください。
あんな『クソコード』、俺が今すぐ強制終了してやる!」
俺はアヴァロンの演算リソースを、攻撃ではなく「解析」に全振りした。
網膜に映し出される、ジェイ・エグゼクターの接合部。
そこには、警察庁のエンジニアたちが犯した「致命的なミス」が赤く点滅していた。
「見つけた。……冗長性のない、脆弱なAPIだ」
俺はアヴァロンを急加速させた。
四本の腕が放つ火線を、紙一重の機動で潜り抜ける。
「——リュウジさん、ガスト! その醜い外装(殻)、今すぐ脱がせてやる!」
アヴァロンの拳が、ジェイ・エグゼクターの胸部装甲にめり込む。
だが、それはただの打撃じゃない。
拳の接点から、俺が即興で書き上げた**『強制アンマウント・コード』**を流し込んだ。
「——実行!!」
ドォォォォォンッ!!
爆発音と共に、ジェイ・エグゼクターに食らいついていた三機の支援機が、一本ずつ弾け飛んだ。
警察庁が誇る「最強の合体」が、まるで古いアプリがクラッシュするように、バラバラに解体されていく。
『……ターゲット喪失……システム、致命的なエラー……』
無機質な警告音が消え、漆黒の装甲が剥がれ落ちる。
そこには、かつての美しい白銀の姿を取り戻したジェイ・ガストが、膝をついていた。
「……カイト……殿……。救われ、ました……」
ガストのカメラアイが、澄んだ青色に戻る。
コクピットから這い出してきたリュウジさんも、震える手で俺にサムズアップを送った。
「カイト……。……すまない、本当に助かった……」
特区に、ようやく静寂が戻る。
勝利だ。
SNSでは、「整備士の奇跡」への称賛で埋め尽くされているだろう。
だが。
歓喜に沸くガレージの片隅で。
「……ふふ、やっぱり。……デバッグは、完璧ね……カイト」
スミレ(スカーレット)が、誰にも聞こえない声で呟いた。
彼女の右手が、ふわりと透けている。
デジタルノイズのような砂嵐が、彼女の華奢な身体を内側から食い破ろうとしていた。
「……ネオ・ギアスの『回収』か……。……思ってたより、早かったな……」
彼女は自分の消えゆく手を見つめ、寂しそうに微笑んだ。
その瞳には、カイトへの「好きだった」という想いと、決して口にしてはいけない「別れ」の覚悟が宿っていた。
■ 掲示板:【悲報】警察庁の合体ロボ、整備士カイトに「アンインストール」される
1:名無しのギーク
おい見たか今の配信!?
ジェイ・エグゼクターがバラバラに弾け飛んだんだけどwww
12:名無しのギーク
物理的に破壊したんじゃなくて、合体システムそのものを「拒否」させたな。
外部から強制アンマウントとか、どんなチートコード書いてんだよカイト。
25:名無しのギーク
>>12
警察側のエンジニア涙目だろこれ。
「お前らのコードは汚い」って言われながら解体されるとか、公開処刑すぎる。
48:名無しのギーク
あの白銀のロボ(ジェイ・ガスト)、カイトが触れた瞬間に目の色が赤から青に戻ったぞ。
洗脳プログラムごとデバッグしたのか……?
もはや整備士っていうか、システムの神だろあいつ。
67:名無しのギーク
特区のガレージ、今頃お祭り騒ぎだろうな。
……ん? なんか映像の端っこ、ノイズ走ってないか?
ピンクの髪のバイトの子のあたり。
89:名無しのギーク
>>67
気のせいだろ。レンズの汚れか魔力の乱れじゃね?
それよりカイトの次の一手が気になるわ。
マジで世界中のOS書き換えに行くんじゃないか?
ネットの喧騒も、今の俺の耳には届かない。
「……ごめんね、カイト。……最後のパーツ、間に合いそうにないわ……」
スミレの呟きは、勝利の歓声にかき消されて消えた。




