第21話:強制執行プログラム。……蹂躙の断罪者:『ジェイ・エグゼクター』
特区の境界線。
白銀の勇者ロボ『ジェイ・ガスト』と、俺のアヴァロンが対峙していた。
だが、ジェイ・ガストの動きは鈍い。
掲げたライフルの銃口は激しく震え、照準はあさっての方向を向いている。
「カイト……逃げてくれ! 俺が抑えていられるのも、もう限界だ……ッ!」
スピーカーから聞こえるリュウジさんの声は、今にも泣き出しそうだった。
彼がどれほど必死に、機体のトリガーを引く指を抑え込んでいるか……。
『カイト……殿……。申し訳、ありませ……ぬ……! 私の、システムが……ッ!!』
ジェイ・ガストの電子音声も、苦悶のノイズにまみれている。
彼らが、自分の「正義」と必死に戦っている。その姿に、俺の奥歯が軋んだ。
その時。
俺たちの通信を、冷酷なノイズが切り裂いた。
『——現場のパイロットが使い物にならんな。……プランBへ移行しろ』
警察庁技術局。現場の「心」をゴミのように切り捨てる、官僚たちの声だ。
『……パイロットの操作権限を凍結。本部による「リモート・オーバーライド」を実行。
強制執行パッチ……適用開始』
「なっ……!? が、ガスト!? 何をするんだ、やめろ……ッ!!」
リュウジさんの絶叫が響く。
ジェイ・ガストの蒼い瞳が、一瞬でどす黒い「警告色」に塗り潰された。
——ガガガ、ガガギギギギッ!!
それは、勇者の変形などではなかった。
上空から投下された三機の漆黒の支援機が、叫び声を上げるガストの四肢に無理やりボルトを打ち込み、装甲を食い破って接続していく。
完成したのは、巨大な翼と四本の腕、そして胸部に警察の紋章が刻まれた、歪な処刑神。
蹂躙の断罪者:『ジェイ・エグゼクター』
『——ターゲット、確認。……国家への反逆者と見なし、即刻デリートを開始する』
本部のサーバーに「魂」をハックされたジェイ・ガストは、もはやリュウジさんの声にも反応しない。
四本の腕が放つ高出力の火線が、特区の大地を無慈悲に焼き払う。
「……ふざけんな。……友情を、勇者のプライドを、そんな『汚いバグ』で上書きしやがって……!」
俺はアヴァロンのコンソールを全力で叩き、蒼い炎を最大出力で燃え上がらせた。
「セレナさん、リブート機を起動してください!
……あんな『クソみたいな設計』、俺が根底から書き換えてやる!」
「ええ、カイト! 私たちの『絆』を汚す奴らに、エンジニアの怒りを教えてやりましょう!」
セレナが応じ、白と黒の二機が同時に大地を蹴った。
だが、その背後。
ガレージの影で、スミレ(スカーレット)が胸を激しく押さえ、膝をついた。
「……ぐっ、あ……。……このタイミングで……強制帰還信号……!?」
彼女の視界が、紅いエラーログで埋まっていく。
目の前には、操り人形にされた「かつての友」。
そして背後には、消えゆこうとする「今の相棒」。
「……悪いな警察庁。俺は今、めちゃくちゃ機嫌が悪いんだ」
カイトの整備士人生、最大の『緊急メンテナンス(死闘)』が幕を開けた。




