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第18話:アヴァロンの再設計。……俺の技術が、世界に『アップデート』を強要する

深夜のガレージ。

作業灯の下で、アヴァロンの内部フレームが剥き出しになっていた。


「……ひどいな。メインバスの回路が熱で癒着ショートしてる」


俺は焦げ付いた基板を引き抜き、深く溜息をついた。


前回の「オーバークロック」の代償だ。今のままで黒騎士と再戦すれば、次こそアヴァロンのコアが焼き切れる。


「カイト、昨日の電気街で買ってきた『超高純度シリコン』よ。……これなら、あなたの求める演算速度に耐えられるはず」


 セレナが、数千万円は下らないであろう特殊素材のケースを差し出す。


「……助かります。……黒騎士は『心を捨てた純粋演算』で襲ってくる。なら、こっちはその演算を『分散』させて無効化するしかない」


「分散……? 1機しかいないのに、どうやって?」


「メインコアだけで考えない。……各駆動部に独立したAIを持たせる『エッジコンピューティング』の実装です」


俺の新しい設計図。

それは、アヴァロンを一つの巨大なロボットとしてではなく、数百の小さなユニットが連携する「群れ(クラスター)」として再定義するものだった。


—— 一箇所をハックされても、他の部位が独立して反撃する。

——黒騎士の「一撃必殺」の計算を、数千の「小さな計算」でいなす。


俺の指が、キーボードの上を猛烈な速度で踊り始めた。


 ***


 同時刻、勇者警察本部。


「……馬鹿な。あの黒騎士と互角に渡り合ったというのか!?」


技術局の巨大モニターには、昨夜の戦闘ログが映し出されていた。


アヴァロンが放った「オーバークロック」の熱量。

そして、警察のシステムを無効化したあの謎の波形。


「長官。もはや『坂本カイト』は、一介の整備士という枠に収まる存在ではありません。

 ……彼は、国家の武器体系そのものを旧式化(レガシー化)させる『歩くバグ』です」


冷徹な官僚の声が響く。

「放置すれば、世界の軍事バランスは崩壊する。……特区ごと消去デリートすべきです。

……警察庁長官の直轄部隊、『粛清者パニッシャー』を動かしましょう」


警察は、アヴァロンを「ヒーロー」ではなく、自分たちの秩序を脅かす「ウイルス」として認識し始めていた。


 ***


「……ふぅ。……ハードウェアの『ホットフィックス(緊急修正)』、完了」


夜明け。

アヴァロンの全身に、新しく張り巡らされた蒼い光のラインが走る。


分散処理システム。コードネーム——『アヴァロン・オーケストラ』。


「……すごい。……昨日までのアヴァロンとは、纏っている『密度』が違うわ」


 スミレ(スカーレット)が、畏怖の念を込めて機体を見上げる。

 彼女には分かっている。この機体が、かつての上司である黒騎士を「旧型」へと追い落とす可能性を。


「カイトくん、お疲れ様! ……でも、なんだか街の様子が変だよ。

 ……さっきから、ネットの通信規制が強まってる。……これ、大規模な『検閲』が始まってるのかも」


リナがスマホの画面を見せながら駆け寄ってくる。


俺はアヴァロンのコクピットから、外の景色を見つめた。

工場の外、特区の境界線に。

これまでの勇者警察とは明らかに違う、漆黒の重装甲部隊が集結し始めていた。


「……警察の『本気』ってやつか。

 ……いいですよ。俺のアップデートが、国家の正義とどちらが強固か……試してみましょう」


俺は、新しくコンパイルされた起動コードを叩き込んだ。


世界が俺を拒絶するなら。

俺は俺の技術で、世界そのものを再起動リブートしてやる。

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