表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/26

第17話:【伝説の証明】死闘を経て『英雄』へ。美女たちを伴う整備士の休日は、全世界に身バレする事態に

昨夜の激闘から一夜。


俺は全身の筋肉痛と、知恵熱に近い頭痛に悩まされていた。


「……カイトくん! 寝てちゃダメだよ! 今日はアヴァロンの予備パーツを買いに行くんでしょ?」


「そうよ、カイト。……たまには外の空気を吸わないと、脳の演算回路が腐ってしまうわ」


ガレージには、朝から元気なリナと、なぜか「お出かけ用」の気合の入った私服を着たセレナが立っていた。


「……パーツなら、ネットで『パッケージ管理(外部発注)』すれば済む話だろ……」


「ダメよ! 特区宣言のせいで、今あなたの住所には配送業者が入れないんだから!」


……そうだった。


 俺が、警察をブロックするために設定した「サンドボックス」のせいで、物流まで止めてしまっていたらしい。


「……分かったよ。行けばいいんだろ」


「よし! ……あ、スミレさんも行くわよ! 荷物持ちが必要でしょ?」


隅っこで気まずそうにしていた新人のスミレ(スカーレット)も、無理やり連れ出されることになった。


 ***


やってきたのは、国内最大級の電気街。


ボロボロの作業着から、セレナに無理やり着せ替えさせられた「小綺麗なジャケット姿」の俺が歩き出すと。


瞬時に、周囲の空気が変わった。


「……おい、見ろよ。あの集団」


「なんだあいつ……。左にいるの、東都新聞の看板娘のリナじゃないか?」


「右の金髪の子もヤバいぞ。……おい、あれブレイブ財閥の令嬢、セレナ様だろ!? なんでこんな所に……」


通りかかる男たちの視線が、突き刺さるように痛い。


さらに後ろには、モデル顔負けのスタイルを持つクールな美女スミレが、複雑な表情で俺の背中を守るように歩いている。


「……あいつ、何者だよ。……あんな美女三人を連れ回すなんて、どんな特権階級だ?」


「……羨ましすぎる。代わってくれ、一秒でいいから……!」


周囲の「殺気」に近い羨望の眼差しを浴びながら、俺はジャンク屋の棚を物色していた。


「カイト、このサーボモーターはどう? 規格は合ってるかしら」


「いや、こっちは『依存関係(互換性)』に問題がある。……こっちの古い海外製の方が、今の俺のパッチには合うんだ」


俺が専門的な指示を出すたび、セレナが感心したように頷き、リナが甲斐甲斐しくカゴを持って寄り添う。


その時だった。


「……あの、すみません。もしかして、坂本重機整備の……カイトさんですか?」


一人の少年が、震える手でスマホを差し出してきた。

 画面には、昨夜の「全世界配信」のスクリーンショットが映っている。


「……ええ、まあ。……それが?」


俺が認めると、周囲のざわめきが一気に爆発した。


「やっぱり! 『独立宣言』の整備士だ!」


「うおおお、本物だ! 警察のケルベロスを指一本で止めたっていう、あの伝説の……!」


「すげぇ……実物は意外と若いんだな。……っていうか、あの美少女たちを従えてる理由が分かったぞ。……あれが『英雄』の特権か!」


一瞬で人だかりができ、人々が尊敬と畏怖の眼差しで俺を取り囲む。


「握手してください! 兄貴のファンなんです!」


「あの、サインを……! 自分のパソコンに書いてもらえれば、バグが直る気がして!」


俺は困惑したが、隣のリナが誇らしげに胸を張った。


「ふふん、サインは後でね! 今、カイト君は世界を救うための『デバッグ作業』の途中なんだから!」


「そうよ。……あまり彼を疲れさせないで。……彼は、私たち三人が独占しているの」


セレナが俺の腕にグイッと自分の腕を絡め、周囲を威圧するように言い放つ。


スミレも、なぜか負けじと反対側の袖を掴んできた。


「……邪魔をしないで。この人の時間は、一秒だって無駄にはできないんだから」


 周囲の男たちから、今日一番の絶望に近い悲鳴のような溜息が漏れた。


「……三人に独占……だと……?」


「……伝説の整備士、マジで人生の勝ち組すぎるだろ……」


俺は、熱狂する群衆と、左右からかかる柔らかな感触に、アヴァロンのオーバークロック時よりも心拍数が上がっているのを感じた。


「……お、おい。買い物は済んだだろ。……早く工場に帰るぞ」


「えー、もうちょっとデート気分を味わいたいのに!」


「ダメよカイト、次はランチ。私の知り合いのレストラン、貸切にしてあるから」


俺は逃げるように電気街を後にしたが。

 

その日のSNSには、『伝説の整備士カイト、三人の女神を連れて降臨!』という動画が数百万再生された。


俺の「平穏なモブ生活」という名の理想郷は、またしても修復不可能なレベルで遠ざかっていくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ