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第14話:伝説の整備士に潜入調査!……のはずが、無自覚にハックされて帰還不能になりました

「……よし。今度は完璧なはずよ」


坂本重機整備の門の前。

スカーレットは、先日並んでいた時の派手なドレスを脱ぎ捨て、地味なグレーのパーカーに身を包んでいた。


サングラスも、より「地味なデザイン」のものに新調してある。


(先日、客として並んだ時は、あの男があまりに忙しそうでまともに話せなかった……)


(なら、内側から潜り込むしかないわ。……これがネオ・ギアスの潜入術よ!)


彼女は意を決して、ガレージのシャッターを叩いた。


「ごめんください! ……バイトの面接に来たんだけど!」


中から出てきたカイトは、首にタオルを巻き、油の付いた手で頭を掻きながら彼女を見た。


「バイト……? ああ、親方が出してたやつか。……どうぞ、中へ」


カイトは彼女を作業机の椅子に促す。

そこには既に、リナとセレナが「新入りを値踏みする目」で座っていた。


「……ねえ、あなた。どこかで会ったことない?」


リナが身を乗り出して尋ねる。

スカーレットは心臓が跳ね上がるのを必死に抑えた。


「……い、いいえ。今日が初めてよ。私はただの、仕事を探している苦学生……のようなものだわ」


「ふーん……。でも、その歩き方。重心の置き方が、並の人間じゃないわね」


セレナが眼鏡をクイッと上げ、冷徹なエンジニアの目で彼女を観察する。


「……カイト。この子、先日並んでいた『ドレスの女』と骨格が一致するわよ」


「えっ!? ど、ドレス!? 何の話!? 私はパーカーしか持ってないわよ!」


必死に否定するスカーレット。

カイトはジッと彼女を見つめ……それから、彼女が持ってきた「履歴書」に目を落とした。


「……『趣味:ドローンのメンテナンス』。……ふむ。

 この字の癖……。前に俺が直したドローンの、通信ログに残ってた署名シグネチャと同じですね」


「っ!? ……そ、それは……!」


スカーレットが絶句する。

エンジニアであるカイトにとって、筆跡よりも「データの癖」の方が確実な指紋だった。


「……まあ、いいです。正体を隠したい事情があるんでしょう。

 ……それに、今のうちの工場には、あんたみたいに『現場で動ける人間』が必要だ」


「カイトくん!? 採用しちゃうの!?」


「カイト、この子は危険よ。……でも、その『技術への執着』だけは本物みたいだけど」


カイトはスカーレットに、一本の汚れたスパナを差し出した。


「いいか。うちは今、勇者警察からもネオ・ギアスからも目をつけられている『独立特区』だ。

 ……それでも、ここで働きたいか?」


スカーレットは、そのスパナを力強く握りしめた。

サングラスの奥の瞳が、熱く燃える。


「……ええ。……あなたの技術を、一番近くで盗んで……いえ、学んであげるわ」


「……よし。採用だ。……名前は?」


「……スカ……じゃなくて、スミレよ。スミレ」


「いい名前ですね。……じゃあスミレさん。

 まずはその、さっきからポケットで暴れてる『修理済みのドローン』を落ち着かせてやってください。……あんたのことが好きみたいですよ」


カイトの無自覚な、そして優しい笑み。

スカーレット(スミレ)は、顔が真っ赤になるのを隠すために、慌てて背を向けた。


こうして、伝説の整備士のガレージに。

最強の敵幹部が「新人バイト」として加わるという、前代未聞の共同生活が始まった。


(……こちらスカーレット。……潜入は成功した。……繰り返す、潜入は成功した。……当面、帰還は不可能……というか、したくない。……以上)


彼女の心に刻まれた「ネオ・ギアスへの忠誠心」というコードは。

カイトの何気ない言葉によって、次々と書き換え(ハック)され始めていた。

お読みいただきありがとうございます!

第14話、スカーレットが「スミレ」としてバイト採用される回でした。

12話の引きをしっかり回収しつつ、カイトの「データから正体を見抜く」エンジニアらしい凄さを描いてみました。


「スミレちゃん、チョロすぎて可愛いw」「カイト、気づいてるのに採用する余裕がかっこいい」「ヒロイン3人の修羅場、いよいよ本番!」

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