ダンジョンの紹介
エルとダンジョンにこもってから1週間が過ぎた。
ただ、エルとひたすらイチャイチャするだけの1週間……といいたいが、実はそうでもない。
まぁ、夜はいちゃいちゃしていたんだけどね、昼間は意外とやることが多かった。
まず、俺のこの世界における常識のお勉強。
ある程度はエルから教えてもらえたが、エルは魔族、どうしても人族側の常識とかには疎い。
そのため、古代文明の英知を詰め込んだ(とマイが言っている)ダンジョンコアの情報に期待していたのだが、情報が古すぎてあまり役に立たなかった。
逆に、情報収集のために、いくつかの案を俺が提案したぐらいだった。
結局、落ち着いたらダンジョンを出て街を回ろうという結論になる。
それから、ダンジョンの拡張について。
マイの説明によれば、ダンジョンはコアが集積するマナによっていくらでも拡張できるという。理論的には大陸どころかこの世界すべての地下を影響下に置けるとのこと。
でも、まぁ、未だに全世界どころか、大陸一つにも影響が及んでいない時点で、どれほどのモノかは想像できるだろう。
現段階で、このダンジョンは深さは5階層、広さは村3つ分にまで広がっている。
再起動してから1週間でこの規模というのは一見勢いがよく思えるが、もともとは、このあたり一帯に、影響下にあるダンジョンが形成されていて、それが休眠に当たり閉鎖されていただけという理由がある。
また、休眠期にため込んだマナの量が多かったというのもある。
簡単に言えば、ある程度の大きさまではいいけど、その先の拡張は時間がかかる、ということだ。
俺としてはこのダンジョンを拠点と定めたが、それほど拡張する気はなかった。
しかし、マイの説明を受け、俺が思うとおりに設計できると聞くと、話は変わってくる、
俺が日本にいた時に、嵌っていたゲームの一つに「ダンジョンメーカー」なるものがあった。
これは簡単に説明すれば、よくある箱庭ゲームのようなもので、プレイヤーは自分の領地に色々な施設を置いて発展させていくというもの。施設の種類は数百に及ぶが、当然領地に設置できる施設は限られていて、その設置した施設の組み合わせでその領地の特産品が決まる。その特産品を基に、各プレイヤー同士で貿易を行い、領地を富ませ、プレイヤーの分身ともいえる冒険者を育てていく。
そして、このゲームで最も特徴的なのが、タイトルにもある「ダンジョン」。
各プレイヤーは、領地の中に、自らが設計したダンジョンを設置することが出来るのだ。
このダンジョンをどう設計するかが、それぞれのプレイヤーの個性が現れるところであり、このゲームの人気の秘訣にもなっている。
ダンジョン内で取得できるアイテムやクリア時のアイテムはプレイヤーが自由に設置できるため、あるプレイヤーは、ダンジョンの難易度を低くし、誰もが気軽に訪れることが出来る領地作りに励む。
また、あるプレイヤーは、バランスというものを重視し、難しくも簡単でもなく、レベルにあった歯ごたえのあるダンジョンというものを目指し日々改良している。
またあるプレイヤーは、とにかく凶悪。クリアできるものならしてみろ、と言わんばかりの凝ったダンジョンを設計する。
俺も、その挑戦系ダンジョンを設計したプレイヤーの一人だ。
挑戦したプレイヤーたちからは「とにかく凶悪」「クリアさせる気ゼロ」「設計者の性格が破綻している」等など、数多くの称賛を頂いたものだ。
結局、訪れるプレイヤーがいなくなり、なし崩しに引退したのだったが。
その「ダンジョンメーカー」をリアルでできる、ともなれば、燃えないわけがない。
昼は熱く燃えてダンジョンの設計、夜はエルに萌えて、敗北必至のバトルを……という日々を繰り返していたのだ。
その結果出来上がった、俺のダンジョン。
まず、手始めの1階層。ここは多少入り組んだ道を作ってあるが、基本放置。
ダンジョンからあふれるマナに引かれて、周りの森から魔獣たちが集まってくるので、それらすべてを快く迎え入れ、ダンジョン内で争いが起きないように、適度に縄張りを散らすぐらいしかしていない。
つまり、このフロアは、地上とそう変わりがないということだ。
今後、色々な魔獣を誘致するつもりではいるが、現在はゴブリン、コボルト、オーク、トロール、そしてジャイアントアントなどの虫系モンスター数種しかいないが、まぁ手慣らし程度なら、とりあえずは十分だろう。
次の2階層。ここからがこのダンジョンのスタートといってもいいかもしれない。
まず、入り組んだ迷路。何もなくても、踏破するのに丸一日はかかるように設計した。
それに加えて、トラップや先に進むためのギミックを設置し、適度にモンスターを散らす。
狭い場所では強固なゴーレムが立ちふさがり、開けた場所では、ウルフ種のような群れで獲物を狩る魔獣たちが待ち構えている。
駆け出し冒険者では、全く歯が立たないだろうと、エルのお墨付きももらったほどだ。
それら艱難辛苦を超えて挑む3階層。
実は、このダンジョンに入り込んだものが移動できるのは、1/4程度の広さしかない。
しかも一本道で迷うことがない。
ただ、降りてきた場所から、4階層へ降りる場所まで、全部で10の小部屋を通る必要がある。
その小部屋一つ一つがモンスターハウスになっていて、一度はいれば、全滅させるまで出ることが出来ない仕様になっている。
「これはクリアできないわよ」とエルは言っていたが、モノの試し、とエルが挑み、あっさりとクリアしてしまったので、少し見直す必要があると考えている。
マイの分析では、エルほどの実力がなければクリアできないというが、逆に言えばAランク冒険者なら通り抜けれるということなんだろう。
ちなみに、使っていないフロアの部分は、俺たちだけが出入りできるようになっていて、ダンジョンから排出される素材の回収場所となっている。
回収しているのは、マイたちホムンクルスと同型の、量産型ホムンクルスともいうべき少女たち。
マイたちほどではないが自我があり、そして感情は芽生えていない、本来のホムンクルスたちだ。
彼女たちの数は100体にものぼり、ダンジョン内での採掘以外にも、家畜の世話や、ダンジョン内菜園のお世話、プライベートルームの管理や俺たちの世話など、のメイド仕事などなど、あらゆる場面で労働にいそしんでいる。
メイによる戦闘訓練もされており、いざという時は、俺とダンジョンを守る要ともなる。
話はそれたが、三階層を抜けるといよいよ4階層。5階層はコアがあり、その他俺たちのプライベート空間として使っているので、ダンジョンとしては実質この4階層目が最奥となる。
降りてすぐに大きな扉があり、開けて中に入ると、そこはボス部屋。
ここのボスを何にしようかというのは現在検討中だが、今のところ、候補が決まるまでは、バトルメイドたちが相手をすることになっている。
大抵の場合、ここでENDになるだろうが、それでも抜けてきた場合、その奥にある広間……通称「謁見の間」に入ることが出来る。
ボス部屋と謁見の間。4階層にあるのはこれだけだ。
そして謁見の間には玉座があり、そこに座るのは俺。
ここまで来た者と話をする場なのだが、運悪く交渉が決裂した場合、メイを初めとするガーディアン部隊との戦闘となる。
ここで負けると後がないので、ここでの戦闘はガチだ。
部屋の中にはあらゆるトラップが仕掛けてあり、たとえ勇者といえども、勝利を得ることはできない……筈……大丈夫だよな?
そしてようやく完成した俺様ダンジョンではあるが、ここに来て問題が発生する。
「人がこない」
俺は根本的な問題に頭を抱える。
「まぁねぇ。そもそも、入り口が「魔の森」の奥でしょ?森そのものに人があまり来ないのに、その最奥まで来る人なんていないわよねぇ。」
エルの言葉にガックリとうなだれる俺。
マイに確認したところ、このダンジョンのある森は「魔の森」と呼ばれ、生息する魔物たちも、人族が定めた脅威度に照らし合わせれば、弱くてランクC、ダンジョン入り口がある最奥には、ランクAの魔物たちがひしめき合っているのだとか。
俺たちが無事にたどり着けたのは、女神の結界があったからで、それがなければ、早々に魔物の餌になっていたと言う。
ダンジョンの一階層に、魔物たちが数多く押し寄せたのは、地上にはもっと怖い魔物がいるせいだということを、今初めて知ったのだった。
「マスター。私からの提案があるのですが?」
マイが手を挙げて発言を求めてくる。
わざわざそんなことしなくていいと以前にもいったのだが、様式美だと、言って受け入れてもらえなかった。
「ん?なんだ?」
「えぇ、マスターのお悩みを解決するために、こういうのはいかがでしょう?」
マイが提案してきたのは以下の通り。
まず、入り口を魔の森の入り口付近に創る。これにより、ゴブリンを倒すことが出来る程度の者ならダンジョンにも入りやすくするというのだ。
そして、ダンジョンの入り口があるということを近隣の町や村に流す。
ついでに、一階層の浅いところで、鉱石などの素材が取れるようにしておけば、噂を聞き付けた冒険者たちがやってくるだろうというのだ。
ちなみに、今の入り口は封鎖し、いざという時の脱出口にすることで無駄をなくすとのこと。
「それから、ここからが重要なのですが・・・。」
とマイが声を潜める。
「近隣の村を襲います。」
「まじか?」
なんかとんでもないことを言い出しましたよ?
「マジです。マスターの望みはハーレムを作ること。しかし、ここには奥様しかおられません。ならば、村を襲って女性を手に入れるべきでしょう。」
それが一番合理的です、とマイが言う。
「ちょっとまてっ!村を襲うなんてそんな……。」
「大丈夫です、人死にはできる限り出さないように気を付けます。村を襲うのも魔獣たちです。マスターはギリギリのところで現れ村を救うのです。そして、代価として3か月に一人、若い娘を差し出すように言うだけです。」
「うぅ……それならギリギリ……いや、ダメ……」
「もし、村が言うことを聞かなかったら?」
俺がそう言いかけたところに、エルが口をはさむ。
「その時は再度村を襲い、女たちだけを攫ってくればいいのです。」
「はぁ、こういうところは”お人形さん”なのねぇ。」
感情が芽生えているとはいえ、感情に関しての理解に乏しいと、エルは、ホムンクルスのことを判断している。
基本にあるのは合理的な判断。
マスターであるカズトの望みをかなえるために最適だと思える判断を下す。そこには相手の感情に考慮するという考えは及んでいない。このあたりが、まだまだなのだとエルは考えるのだった。
「でも、まぁ一考の余地はあるわね。生贄を差し出させるのは最初の1~2回で十分よ。いくつかの村を回れば、数人の女の子が手に入るわね。彼女たちは、まぁ……十分飽きるまで弄んでから丁重に返せばいいと思うのよ。もちろん気に入った娘がいれば、そのままいてもらえばいいけどね。そして、ちゃんと約束を守った村に対しては、色々と便宜を図る。そうすれば大きな反乱は起きないはずよ。約束を守らなかった村に対しては、マイの言う通り村を襲って恐怖を植え付けるの。まぁ、見せしめってやつね。」
エルはそこで一息ついてからさらに言葉をつづける。
「それでね、しばらくすれば、無謀な冒険者とかが「魔王なんて退治してやる」って言いだすと思うの。教会や国も動くかもね。」
「ちょっと待てっ!」
俺はエルの言葉を遮る。
「魔王って、俺のことか?」
「えぇ、そうよ?魔物たちを操って女の子を拐す、魔物たちの王……立派な魔王サマでしょ?」
「……。」
ぐぅの音も出ない。
「まぁ、そういうことだから、あとは冒険者さんたちに犠牲になってもらえばいいわ。冒険者の中に女の子がいれば捕らえて、カズトが好きにすればいいわ。男は、まぁ、せいぜいミルクサーバーになってもらおうかな?……なんて顔してんのよぉ?」
ブスっとした俺の頬をエルが突っつく。
だが、サキュバスの習性と分かっていても、エルがほかの男と、あんなことやこんなことをするのは面白くない。
「拗ねないの。私の相手はあなただけよ。」
ちゅっ、と頬にキスをするエル。
「実はね。せっかくだから、他のサキュバスの娘たちを呼ぼうと思うのよ。ここにきてからすぐ呼んでもよかったんだけど、ある程度の目途が立たないと、カズト一人だけじゃ大変でしょ?」
何が?とは言わない。だけど、想像すれば……確かに大変そうだ。
エルの提案を受け、マイが詳細を詰める。
細かいところのチェックをして、準備を整える。
最初の村を襲うのは3日後と決まった。
ダンジョンメーカー……誰か作ってください。
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