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魔王様のハーレムダンジョン ~俺は、ハーレム王になるっ~  作者: Red/春日玲音


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魔王のダンジョン

ダンジョンの奥、拠点として整えられた広間に足を踏み入れた瞬間――

澄んだ声が、まるで示し合わせたかのように重なった。


「「おかえりなさいませ、ご主人様」」


横一列に並んだのは、孤児院の年長組。まだ身体つきは幼さを残しながらも、簡素なメイド服に身を包み、背筋をぴんと伸ばして深々と頭を下げている。足の位置、手の組み方、礼の角度まで揃っており、その一糸乱れぬ動作からは、日頃どれほど厳しく、そして真面目に教育を受けているかがありありと伝わってきた。


ほこり一つ落ちていない床、整然と配置された家具。

ダンジョンとは思えぬ光景に、思わず感心の息が漏れる――その矢先。


「……やっぱりロリコン……」


ぽつり、と刺すような声。


振り向けば、カンナが半眼でこちらを見ていた。感情を抑えた声音とは裏腹に、その視線は氷のように冷たく、説明を求める余地すら与えない。

年若いメイド見習いたちはその空気を察したのか、ぴしりと姿勢を正したまま、微動だにしない。


称賛と疑惑、規律と誤解。

静まり返った広間に、なんとも言えない居心地の悪さだけが、じわりと広がっていった。



とりあえず、長旅で疲れているだろう――そう判断して、カズトは手早く采配を振るった。

兵士たちには屋敷の裏庭にあつらえた簡易の小屋を割り当て、最低限の休息と食事を確保させる。一方で、カンナには屋敷内の客間を用意し、今日のところは無理をせず、ゆっくり身体を休めてもらうことにした。


客間へと続く廊下を進んでいると、角からひょっこりと顔を出した人物がいる。

シーラとセリアだった。


「あ、やっぱり。……ねえ、それ」


視線が、カンナとイリシスに向けられる。頭の先から足元まで、値踏みするように一瞥してから、露骨にため息。


「また、女の子拾ってきた。」

「ていうか、本当に聖女を捕まえてきたの?ってこっちは巫女さんってやつ??」


矢継ぎ早に投げられる言葉は、遠慮というものを知らない。

カンナは一瞬きょとんとした表情を浮かべ、次の瞬間には、すっと視線を逸らした。どう反応していいのか測りかねているのがありありと分かる。


「捕まえてきたって言い方はやめろ」

カズトが即座に訂正するも、セリアもシーラもは肩をすくめるだけだ。


「だってさぁ? どこかに行くたび、なにかするたびに増えてるじゃない。女の子……あと、設定」

「設定いうなしっ!後、聖女さんは貰い物で、巫女さんは、まだ、客だ。」

「《《まだ》》、ねぇ?」

「どうせ、なんか言いがかりをつけて、モノにするんでしょ?」


軽口の裏に、半分本気、半分呆れた視線。廊下の空気が、ほんの少しだけ騒がしくなる。


そんなやり取りをよそに、カンナは静かに息をつく。

何が何だか分からないけど、今日のところは休息――その一言に尽きる。

説明も誤解も交渉も、……すべては明日。今日はもう休みたい。

そう思うのだが、彼女が客間に通されたのは、それから30分ほど過ぎてからだった。


◇ ◇ ◇


「やっと帰ってきた。」


執務室の扉をくぐった瞬間、低く抑えた声が飛んできた。声の主――エルは、書類から視線を上げ、カズトと、その背後に控えるイリシスを一瞥する。


「あなたの留守中、不審な侵入者があったの。一応カズトの判断を仰ぎたいわ。」


その言い方が、ただ事ではないと物語っていた。カズトが頷くと、エルは立ち上がり、無言で先導する。廊下の空気はひんやりとして、どこか重い。


案内されたのは、執務棟の奥にある簡易拘束室だった。


扉が開いた瞬間、カズトは思わず息を呑んだ。


部屋の中央、X状の拘束柱に、一人の少女が手足を伸ばして拘束されている。

衣服はところどころ破れ、ギリギリ大事な所を隠しているだけの、ほぼ全裸。

身体そのものに不必要な傷は見当たらないが、エルに散々嬲られたのだろう、アヘった表情で、白目をむいたまま、完全に失神していた。


「……これは、どういう状況?」


カズトの声には、思わず硬さが混じる。

エルは何でもな事のように、事務的に説明を始めた。


「いきなりダンジョンのA-NPポイントに転移してきたの。身元不明、目的不明。通常なら即排除なんだけど、あそこって、例の計画の場所だったでしょ?だから拘束して、尋問してたのよ……」


そこで一瞬、言葉を選ぶように間を置く。


「だけどね、『聖女とヘタレっぽい男』から魔道具を貰った。助けてくれるって言った、って何度も、それを繰り返すのよ。心当たりある?」


「……ある。」


カズトはこめかみを押さえた。

そう言えば、転移石の事話してなかったっけ。

どうせまだ時間があるって思って、後回しにしてたところで、カンナの件だったから、忘れていた。


しかしなぁ……。


ヘタレ。

その単語が、自分を指す代名詞として、この城の中で静かに、しかし確実に定着しつつある事実に、心が折れかける。


「だから、多分、またカズトが何かしたのかな?とは思ったけど、関係ない可能性も捨てきれないから、あまり酷いことはしないで様子見をしてるのよ」


エルはそう締めくくった。


カズトは、再び少女に視線を戻す。

酷いことをしていない、といいながらこの状況。多分に、失神するまで快楽の波に飲まれ続けたのだろう。サキュバスのエルにかかったら、普通の人間が正気を保てるわけがない。


「……エル」


「ん?なぁに?この娘とシたいの?」


「したいか、したくないか、と言えばしたいが……って、そうじゃない!この状況は十分“酷いこと”だと思うぞ?」

イリシスが小さく頷き、エルは一瞬だけ視線を逸らした。

「……でもぉ、この娘喜んでたんだよ。何度も何度もお願いしてきてさぁ。」

「そういう風にしたんだろ?」

拘束室に、短い沈黙が落ちる。

しばしの後、逆ギレしたエルに、イリシス共々搾り取られ、捕らわれの少女の件は後回しとなるのだった。



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