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魔王様のハーレムダンジョン ~俺は、ハーレム王になるっ~  作者: Red/春日玲音


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姫巫女 その4

「そう言えば、そなたらの件があったのう。」


低く、澄んだ声が山肌に反響した瞬間、白銀の鱗をまとうホワイトドラゴン――ユキが一歩、前へと身を乗り出した。その巨大な瞳が、進み出てきたカンナを射抜く。氷点下の空気が一層張り詰め、ただ睨まれているだけだというのに、全身を押し潰すような威圧が波となって押し寄せた。

カンナは思わず息を呑み、足が竦みそうになるのを必死に堪える。震えそうになる声を抑え、彼女は頭を下げた。領域に踏み入ってしまった非礼への謝罪、そして自分たちの目的はただ山脈を越えることだけで、他意は一切ないのだと説明しようと口を開く。


だが、その言葉が形になる前に、横から一歩踏み出した影があった。

「ちょっと待ってくれ」


穏やかだが芯のある声で、カズトが二人の間に立つ。ユキの威圧を真正面から受けながらも、彼は肩をすくめるようにして続けた。

「ここじゃ落ち着いて話もできないだろ。少し移動しないか? 話はそれからでも、遅くはないはずだ」


凍りついた空気の中で、その提案だけが、不思議と静かな余白を生み出していた。



カズトたちとカンナギ国一行が移動した先は、山道から少し外れた、視界の開ける場所に建つ古い山小屋だった。分厚い丸太で組まれた小屋は、長年雪と風に耐えてきたのだろう、素朴ながらもどっしりとした存在感を放っている。


外では、カンナギ国の兵士たちが手際よく広場に散り、火を熾して野営の準備を始めていた。乾いた薪が弾け、赤々とした炎が立ち上る。

イリシスはその中を行き来しながら、重い物を運ぶのを手伝い、合間に負傷した兵士のもとへ膝をついては、淡い光を帯びた治癒の力で傷を塞いでいく。そのたび、兵士たちは安堵の息を漏らした。

一方、リズレットはというと、率先して串に刺した肉を火にかけ、香ばしい匂いを漂わせている。緊張の残る空気の中で、その匂いだけが不思議と場を和ませていた。


山小屋の中には、限られた者だけが入っていた。

白銀の巨体からは想像もできないような、小さな幼女姿のホワイトドラゴンのユキ。向かいにはカズトとルミナス。そして、緊張を帯びた面持ちのカンナと、彼女を守るように背後に立つガルド。

扉が閉まると、外の冷気は遮られ、暖炉の残り火がほんのりと室内を温めていた。その温かさに、カンナは思わず小さく息を吐く。張り詰めていた肩の力が、わずかに抜けた。


カンナは姿勢を正し、改めて一同に向き直る。

「……失礼いたしました」


静かな声でそう前置きしてから、彼女は深く一礼した。

「私はカンナ。カンナギ国の王女にして、巫女をしております。そしてこちらは、我が国の将、ガルド。先ほどは、我らの不始末により、この地に無断で足を踏み入れてしまいましたこと、改めてお詫び申し上げます」


顔を上げたカンナの瞳には、恐れと同時に、誠実さが宿っていた。

「我々は追われる身となり、やむを得ずこの山脈を越えねばならなくなったのです。争う意思はなく、ただ道を通していただきたい。それだけが、我らの願いです」


山小屋の中に、薪がはぜる音だけが響く。

ユキの氷のような視線、カズトの探るような眼差し、ルミナスの静かな観察。

そのすべてを受け止めながら、カンナは言葉を終え、次の返答を待つのだった。



山小屋の空気が、再び張り詰めた。

ユキは一言も発さぬまま、ぶしつけとも言える視線をカンナとガルドに向け続けている。白銀の瞳に宿るのは、明確な敵意ではない。ただ、すべてを見透かし、価値を量るかのような、圧倒的な存在の眼差しだった。その視線だけで、室内の温もりが薄れるように感じられる。


耐えかねたように、カズトが一歩前へ出た。

「まあまあ、ユキ。そこまで睨まなくてもいいだろ」


場を取りなすような軽い口調だが、声には確かな意思がある。

「少なくとも、この二人に悪意は感じない。事情もあるみたいだし……とりあえずは信用していいと思う」


カンナとガルドが、同時にカズトを見る。

彼は続けて、あっさりと、しかし核心を突く言葉を口にした。

「それに俺たちは、女神の依頼を受けて動いてる。カンナたちを助けるためにな」


一瞬、時間が止まったかのような沈黙が落ちた。

「……女神様、の……?」

カンナは目を見開き、言葉を失う。ガルドもまた、驚きを隠せず、思わず一歩前に出かけて踏みとどまった。巫女である彼女にとって、“女神の依頼”という言葉が持つ意味は、あまりにも重い。


カズトは二人の反応を横目に見てから、改めてユキの方へ向き直った。

「ここから先は、俺が直接話を聞く。いいか?」


しばし、ユキの瞳が揺れる。

やがて、興味を失ったように、ふっと視線を伏せた。

「……好きにするがいい」


低く呟くと、ユキは一人の隣に腰を下ろし、そのままたのう。」


低く、澄んだ声が山肌に反響した瞬間、白銀の鱗をまとうホワイトドラゴン――ユキが一歩、前へと身を乗り出した。その巨大な瞳が、進み出てきたカンナを射抜く。氷点下の空気が一層張り詰め、ただ睨まれているだけだというのに、全身を押し潰すような威圧が波となって押し寄せた。

カンナは思わず息を呑み、足が竦みそうになるのを必死に堪える。震えそうになる声を抑え、彼女は頭を下げた。領域に踏み入ってしまった非礼への謝罪、そして自分たちの目的はただ山脈を越えることだけで、他意は一切ないのだと説明しようと口を開く。


だが、その言葉が形になる前に、横から一歩踏み出した影があった。

「ちょっと待ってくれ」


穏やかだが芯のある声で、カズトが二人の間に立つ。ユキの威圧を真正面から受けながらも、彼は肩をすくめるようにして続けた。

「ここじゃ落ち着いて話もできないだろ。少し移動しないか? 話はそれからでも、遅くはないはずだ」


凍りついた空気の中で、その提案だけが、不思議と静かな余白を生み出していた。



カズトたちとカンナギ国一行が移動した先は、山道から少し外れた、視界の開ける場所に建つ古い山小屋だった。分厚い丸太で組まれた小屋は、長年雪と風に耐えてきたのだろう、素朴ながらもどっしりとした存在感を放っている。


外では、カンナギ国の兵士たちが手際よく広場に散り、火を熾して野営の準備を始めていた。乾いた薪が弾け、赤々とした炎が立ち上る。

イリシスはその中を行き来しながら、重い物を運ぶのを手伝い、合間に負傷した兵士のもとへ膝をついては、淡い光を帯びた治癒の力で傷を塞いでいく。そのたび、兵士たちは安堵の息を漏らした。

一方、リズレットはというと、率先して串に刺した肉を火にかけ、香ばしい匂いを漂わせている。緊張の残る空気の中で、その匂いだけが不思議と場を和ませていた。


山小屋の中には、限られた者だけが入っていた。

白銀の巨体からは想像もできないような、小さな幼女姿のホワイトドラゴンのユキ。向かいにはカズトとルミナス。そして、緊張を帯びた面持ちのカンナと、彼女を守るように背後に立つガルド。

扉が閉まると、外の冷気は遮られ、暖炉の残り火がほんのりと室内を温めていた。その温かさに、カンナは思わず小さく息を吐く。張り詰めていた肩の力が、わずかに抜けた。


カンナは姿勢を正し、改めて一同に向き直る。

「……失礼いたしました」


静かな声でそう前置きしてから、彼女は深く一礼した。

「私はカンナ。カンナギ国の王女にして、巫女をしております。そしてこちらは、我が国の将、ガルド。先ほどは、我らの不始末により、この地に無断で足を踏み入れてしまいましたこと、改めてお詫び申し上げます」


顔を上げたカンナの瞳には、恐れと同時に、誠実さが宿っていた。

「我々は追われる身となり、やむを得ずこの山脈を越えねばならなくなったのです。争う意思はなく、ただ道を通していただきたい。それだけが、我らの願いです」


山小屋の中に、薪がはぜる音だけが響く。

ユキの氷のような視線、カズトの探るような眼差し、ルミナスの静かな観察。

そのすべてを受け止めながら、カンナは言葉を終え、次の返答を待つのだった。



山小屋の空気が、再び張り詰めた。

ユキは一言も発さぬまま、ぶしつけとも言える視線をカンナとガルドに向け続けている。白銀の瞳に宿るのは、明確な敵意ではない。ただ、すべてを見透かし、価値を量るかのような、圧倒的な存在の眼差しだった。その視線だけで、室内の温もりが薄れるように感じられる。


耐えかねたように、カズトが一歩前へ出た。

「まあまあ、ユキ。そこまで睨まなくてもいいだろ」


場を取りなすような軽い口調だが、声には確かな意思がある。

「少なくとも、この二人に悪意は感じない。事情もあるみたいだし……とりあえずは信用していいと思う」


カンナとガルドが、同時にカズトを見る。

彼は続けて、あっさりと、しかし核心を突く言葉を口にした。

「それに俺たちは、女神の依頼を受けて動いてる。カンナたちを助けるためにな」


一瞬、時間が止まったかのような沈黙が落ちた。

「……女神様、の……?」

カンナは目を見開き、言葉を失う。ガルドもまた、驚きを隠せず、思わず一歩前に出かけて踏みとどまった。巫女である彼女にとって、“女神の依頼”という言葉が持つ意味は、あまりにも重い。


カズトは二人の反応を横目に見てから、改めてユキの方へ向き直った。

「ここから先は、俺が直接話を聞く。いいか?」


しばし、ユキの瞳が揺れる。

やがて、興味を失ったように、ふっと視線を伏せた。

「……好きにするがいい」


低く呟くと、ユキはカズトの隣に腰を下ろし、そのまま身を寄せ、彼に寄り掛かるようにして目を閉じた。

規格外の存在が、まるで気まぐれな獣のように、あっさりと眠りに落ちてしまう。


突然の展開に、カンナとガルドは言葉を失ったまま、その光景を見つめる。

山小屋には、ユキの穏やかな寝息と、薪のはぜる音だけが残り、カズトとカンナの間には緊張の糸が張り詰めるのだった。

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