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魔王様のハーレムダンジョン ~俺は、ハーレム王になるっ~  作者: Red/春日玲音


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女神降臨

「取りあえず休憩にするか。」

岩肌が露出した小さな平原に出たところで、カズトはそう言って休憩を宣言する。

ダンジョンに帰るだけなら、あの魔道具を使えば一瞬だ。

なのに、わざわざ、時間をかけて歩いているのは、イリシスとの関係をもう少し深めておきたいという思惑があったからだ。


このままダンジョンに帰ってもいいが、そうした場合、イリシスが現状を受け止め、慣れるまでに、様々なトラブルが起きることは間違いない。


カズトたちは焚き火を囲み、張りつめていた神経を緩める。


そのタイミングを見計らったように、風が止み、空気が不自然なほど澄み切る。

焚き火の炎が揺らめき、まるで何かに頭を垂れるかのように低くなった。


次の瞬間、カズトたちの前に、光が“降りた”。


白銀の光が人の形を結び、やがて一人の女神の姿へと変わる。

長く流れる髪は夜空の星をすくい取ったように淡く輝き、慈愛と威厳を同時に宿した瞳が、まっすぐにカズトを射抜いた。


――女神ネェルフィー。


その名を知るイリシスは、無意識に膝を折りかけた。

だが彼女はそれを制するように、静かに手を上げる。


「……カズト」


名を呼ばれた瞬間、胸の奥を冷たいものが撫でた。

ネェルフィーは感情を抑えた声で、しかし確かな怒気を含ませて告げる。


「あなたをこの世界に呼び寄せたのは、シェラザード。故に、私から干渉することは出来ませんが・・・・・・イリシスに、無体なことをしてはいけません」


その言葉は責めるようであり、諭すようでもあった。

彼女の視線は一瞬、カズトの背後――仲間たちへと流れ、そして再び彼に戻る。


「……私達の事柄はご存じでしょう?」

「あぁ、シーちゃんと勝負しているんだってな。」

「シーちゃん・・・・・・あなたは我々に対する敬意というものを勉強するところから始めましょうか?」


そう言って、ネェルフィーは小さく息を吐いた。

その吐息には、神でありながら人のような苦味が滲んでいた。


「私の駒であった聖女も、勇者も……あなたの手に堕ちたと聞きました」


責める言葉は続かなかった。

代わりに、どこか寂しげな微笑が浮かぶ。


「正直に言えば、残念です。ですが……それもまた、神々の盤上で起きた結果ですから、仕方が無い事です。」


ネェルフィーは一歩、カズトへ近づく。

その存在感に、空間そのものが圧迫される。


「だからせめて――」


声が、わずかに柔らいだ。


「大事にしてあげてください。彼女たちは、誰かの道具として生まれたわけではないのですから」


「そんなこと知るか。俺のをどう扱おうが俺の勝手だろ。」

カズトがそういうと、ルミナスがボソッと呟く。

「おにぃちゃん、もっと素直に言わないと誤解されちゃうよ?」

「ご、ご、ご、誤解ちゃうわっ!俺は傲岸不遜、唯我独尊の、悪い魔王なんだぞ。勇者も聖女も毒牙にかけるのだ。」

「はいはい、おにぃちゃんはまおー様。えらいえらい。」

「そんなことよりっ!ネェちゃんはイリシスを虐めるな、というだけの為に出て来たのか?」

揶揄う様に言うルミナスから顔を背け、照れ隠しのようにネェルフィーに問いかけるカズト。


「それは前置きですよ。本題は別にあります。」

焚き火の余熱が残る中、消えかけていた光が再び揺らめき、女神ネェルフィーはその場に留まったまま、静かに本題へと入った。


「……あなたに伝えるべきことがあります、カズト」


その声音に、先ほどまでの感情の揺れはなく、どこか事務的ですらあった。


「あなたの支配下にあるダンジョン・・・・・・正確には街の方ですが・・・・・・・を目指している一行がいます。彼らは現在、“紫焔山脈”で難儀しているようです。それらを助けに行ってくれませんか?」


その言葉に、カズトは露骨に顔をしかめた。


「はぁ……?」


肩を落とし、焚き火のそばにどかっと腰を下ろす。

頬杖をつき、いかにも面倒くさそうに空を仰いだ。


「俺、今ちょっと忙しいんだけど。ていうかさ、なんでわざわざ俺が助けに行かなきゃなんないわけ?」


ため息ひとつ。

やる気ゼロ、という文字がそのまま形になったような態度だった。


「大体さぁ、紫焔山脈って、アレだろ?ホワイトドラゴンの支配権っていう?何でドラゴンに喧嘩吹っ掛けようとさせるの?俺に死ねというの?大体、それに見合うだけの見返りはあるのか??」


即座に飛び出す、あまりにも率直な一言。


「何もないなら却下。慈善活動とか、俺の柄じゃないし」


仲間たちの視線が一斉にカズトへ集まる中、ネェルフィーはわずかに眉をひそめた。

だが、すぐに思い直したように、ひとつ咳払いをする。


「……助けを必要としているのは、カンナギ国の“姫巫女”です」


その瞬間。


「――行く」


間髪入れず、即答だった。


ついさっきまで、やる気なさげに、ルミナスの膝の上でだらけていたカズトが、バネ仕掛けのように跳ね起きる。

だるそうだった目は見開かれ、背筋はピンと伸び、表情はなぜか妙に爽やかだ。


「紫焔山脈だろ? 任せろ。ドラゴン?蹴散らせばいいだろ?最短ルートで行くぞ。ここからならすぐだな。準備? いらんいらん、もう行けるだろ?」

カズトはそう言いながら、焚火を消し、道具をまとめて『無限収納ポーター』に入れる。


「……さっきまでの態度は何だったのですか」


ネェルフィーの問いに、カズトは悪びれもせず胸を張る。


「いやぁ、姫巫女って言われたら話は別じゃん?しかも“姫”だぞ? 巫女に“姫”が付くんだぞ?」


力説するその様子に、イリシスが小さく呟いた。


「……見事なまでの手のひら返しです」


ネェルフィーはこめかみに手を当て、深々とため息をついた。


「……あなたという人は……」


神としての威厳を保とうとしながらも、その表情にははっきりとした呆れが浮かんでいる。


「まあいいでしょう。助けると決めたのなら、それで構いませんが……」


ちらりとカズトを見る。


「くれぐれも、手出しは控えてくださいね」


「大丈夫大丈夫、姫巫女様に不埒な真似はしませんって。してもらうことはあるかもしれないけどなっ!」


その軽口に、ネェルフィーはもう何も言えなくなった。

何故かやる気に満ちて、張り切るカズトを見つめながら、女神はただ一言、小さく呟く。


「……本当に、扱いづらい人間ですね。シエラは何を考えてこんな人間を・・・・・・」


その声は、呆れと諦観が綺麗に混ざった、神にしてはずいぶん人間臭いものだった。



「おにいちゃん、本当に紫焔山脈に行くの?」

女神ネルフィーが姿を消した後、ルミナスが少し怒った口調で問いかけてくる。

「そりゃぁ、女神様に頼まれたんだ、嫌とは言えないだろ?」

「おにぃちゃん、最初、きっぱりとイヤだって言ってたよ?」

「……ほら、あれだ。困っている人がいるなら、助けるのが人情ってものだ。そうだろイリシス。」

流れ的に、厳しい状況になりそうだったので、カズトはイリシスに助けを求める。


「え、えぇ、まぁ。人助けは尊い行いです。」

イリシスは、そう応えながらも、釈然としない顔をしている。

「そんな事より、急ぐぞ。」

カズトは話を誤魔化すようにそう告げる。

「急ぐと申されましても、ここから紫焔山脈までは1週間はかかります。食料などの物資が尽きるのでは?」

心配そうにそういうイリシス。


「大丈夫だ、こんな事もあろうかと!」

カズトは『転移石ぃ~』と、少し裏返った声で言いながら、魔道具を取り出す。

「これで、一瞬で紫焔山脈に行けるからな。」

カズトはそう言って、ルミナスとイリシスの手を繋ぐ。

まだ試作段階のモノなので、身体が触れ合っていないと、一緒に跳べないのだ。

因みにリズレットは、休憩に入ったところからカズトにおぶさったままである。


―――どうでもいいけど、リズの影薄くね?

魔道具を作動させながら、カズトはそんな事を考えるのだった。

R15ってどこまで許されるのでしょう?

オッパイ、と叫ぶぐらいは許されますかね?



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