ダメ男製造機
剣と知恵、そして勇気を携え、未知へと歩み出す者――それが冒険者だ。
彼らは安寧を捨て、危険を選び、名もなき誰かの明日を守るために戦う。
荒野に道を切り開き、闇に灯をともすその背中は、多くを語らずとも人々の希望となる。
栄光も傷も等しく背負い、それでも前へ進み続ける存在・・・・・・
「……そんな誇り高い冒険者に、俺はなるっ!」
カズトの宣言に、その場にしらーっとした空気が流れる。
「ご主人様、寝言は寝てから言うものです。それともまだお目覚めじゃないですか?」
シーラが額に手を当てながら言う。
そして、隣で書類の山と奮闘しているセリアに目を向ける。
その視線を受け、セリアは、ハァーと、小さくため息をつきながらカズトと向かい合い、口を開く。
「ご主人様、あのね、冒険者ってのはね、英雄でもスターでもないんだよ」
セリアの声は静かだが、やけに重い。
「食い詰めて、他に行き場がなくて、それでも犯罪者にだけはなりたくない――そういう連中が、最後に流れ着く場所なんだよ」
彼女はかつて自分が背負っていた古傷に触れるように、腕をさすった。
討伐依頼は地味で、汚れて、危険ばかりが多い。
荷運び、害獣駆除、下水の掃除。命を賭けても、返ってくるのはわずかな銅貨だけ。
明日を生き延びるために今日を削る、それが冒険者の現実だった。
「ご主人様が思ってるみたいな、喝采と栄光に包まれた世界なんて、夢のまた夢なんだよ。」
一瞬だけ、セリアの視線が遠くを向いた後、、チラッと、アリーナへ視線を落とす。
「アリーナみたいなのは……本当に、稀。奇跡みたいな存在よ」
説教じみた言葉を、彼女は何度も、何度も噛んで含めるように続ける。
カズトの夢を壊す気はなかった。ただ、その考えの甘さを知ってほしかった。
今のカズトの状況で、冒険者をする必要はないのだから。
冒険者とは、輝く称号ではない。
それは、生きるために選ばざるを得なかった、あまりにも現実的な職業だった。
それでもなお、不満を隠そうともしないカズトの表情を見て、セリアは小さく息を吐いた。
説得は失敗――そう悟った彼女は、感情を切り替えるように思考を現実的な方向へと滑らせる。
(まぁ、ボクが何を言っても無駄なんだろうけど。)
ならばせめて、生きて帰らせる。
それが、元冒険者としての責任でもあり、セリア自身が今の環境を手放さないために、必要な事だった。
「……分かった。でもね・・・・・・」
セリアはそう前置きして、テーブルの上に一枚の紙を広げる。
そこには、彼女なりに考え抜いた編成案が書かれていた。
「冒険者をやるなら、最低限、パーティを組んで。一人は論外よ」
前衛にはアリーナとメイ。
耐久と突破力を兼ね備えた、信頼できる壁。
遊撃と斥候はセリア自身とリズレット。索敵と離脱、奇襲への対応。
そして――
「ご主人様は後衛だよ。」
迷いなくそう言い切る。
「全体の指揮を執りながら、アイテムで支援と回復。無理に前に出る必要はないからね」
今の実力、今の状況。
危険を最小限に抑え、役割を明確にした、ほとんど完璧と言っていい布陣だった。
パーティ人数は少し多いかもしれないけど、自分はリズレットが斥候の役割を覚えるまでの臨時だから構わないだろう。
冒険に慣れてきて、優秀なヒーラー兼バッファーが見つかれば、メイさんを外せばいいだろう。
今の状況では、これが最善だ・・・・・・しかし・・・・・・。
それを一目見たカズトの顔が、みるみる歪んでいく。
唇を引き結び、紙を睨みつけ――次の瞬間、感情が爆発した。
「こんな過保護なパーティ、やってられるかぁっ!!」
◇
柔らかな午後の空気が、その場だけとろりと溶けているかのようだった。
シーラやセリアとの話し合いの後、カズトは自室でルミナスと共にいた。
ルミナスの膝に頭を預けたカズトは、わずかに拗ねた表情のまま、天井を見つめている。けれどその髪には、彼女の指先がゆっくりと、慈しむように差し込まれていた。さらり、さらりと髪を鋤くたび、指の動きに合わせて小さな温もりが伝わる。
「クスクス、おにいちゃんはバカですねぇ」
抑えきれないというように、ルミナスは小さく肩を揺らして笑う。その声はからかうようでいて、どこまでも優しく、甘い。見下ろす瞳には、呆れと同時に、溢れそうな愛おしさが滲んでいた。
「正直に、こんなくだらない遊びにお姉ちゃんたちを付き合わせる気はない、って言えばよかったのに」
そう言いながらも、指は止まらない。むしろ先ほどよりも丁寧に、絡まった髪を解くように撫でていく。
「いいんだよ。別に」
カズトはそっぽを向くように、ぼそりと答える。その声音は拗ねていて、強がっていて――それがまた、たまらなく可愛い。
ルミナスは思わず頬を緩め、少し身をかがめた。
「ハイハイ」
彼の額にかかる前髪をそっと整え、まるで幼子をあやすように、柔らかく囁く。
「おにいちゃんは、ルミナスが甘やかしてあげまちゅからねぇ」
わざとらしく幼い口調で言いながら、指先で頭を撫で、軽く抱き寄せる。その温もりに包まれ、カズトの拗ねた気持ちも、少しずつ溶けていく。
正直、幼女に甘える自分というのは如何なものか?と思わなくはない。
しかし、「ルミナスに甘やかされている」という、背徳的なこの状況が心地いい。ダメになるという気持ちもあるが、それでも逃れることが出来ない誘惑が凄い。
「いいんでちゅよぉ、おにいちゃんは、ルミナスがダメダメにしてあげまちゅよぉ。」
カズトの思考を読んで、そんな事を言うルミナス。
ダメだ、この誘惑には抗えない。
―――この娘、サキュバスの血が混じってないか?
「魔性の幼女」そんな言葉が浮かび上がる。
―――将来、ルミナスの魅力にあてられて、ダメダメな男が量産される未来が思い浮かぶ。
「おにぃちゃんは、時々失礼ですぅ。ルミナスはぁ、おにぃちゃん一筋だから、将来ダメダメになるのはおにぃちゃん一人だけですよぉ。」
―――あかん、すでにルミナスにダメにされている。
カズトは降参というように手をあげた後、ルミナスの膝の上の感触を、心ゆくまで堪能する。
くすくすという小さな笑い声と、静かな呼吸だけが重なる、甘くて穏やかなひとときだった。
その翌日、ギルドに向かったカズトとルミナス、そしてリズレットの三人。
まさか、あのような出来事に巻き込まれることになるとは・・・・・・。
この時は、誰一人思いもよらなかった。
一応誤解のない様に言っておきますが、筆者はケモナーではありますがロリではないです。
ロリじゃないのです。
大事なことなので2回言いました。
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