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魔王様のハーレムダンジョン ~俺は、ハーレム王になるっ~  作者: Red/春日玲音


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癒しを求めて その2

「お断りします。」

サラが放った第一声がこれだった。


―――だよねぇ。


「大体、腹黒って何ですかっ!酷すぎますっ!魔王様は、ハーレムの女の子皆にこういうことしてるんですかっ!」

「あ、いや、みんなってわけじゃ……。」

カズトはサラの勢いに押されて口ごもる。


――――――えっと、みんなについている称号は……

エルが『魔王の相棒』だろ?

そして、リラが『魔王の奴隷』

アリーナが『魔王の勇者』でルミナスが『魔王の愛妹』

リズレットが『魔王の愛玩ペット』でリーシアが『魔王のメイド』

後、セリアが『魔王の暗殺者』……って、なんだよ、怖すぎるだろ?

……うん、でもこれだけだ。シーラが入ってないから、みんなじゃないぞ。


俺の考えが伝わったのか、ルミナスが、「はぁー……」と深いため息を吐く。


「サラ姉、落ち着いて。称号は女神さまが与えてくださるものですから、カズト様が勝手につけれるわけないでしょ?」

「そ、それは……そうだけどぉ……。」

サラの勢いがなくなり、声も小さくなっていく。

「確かにさっきまで、サラ姉が腹黒だって話はしてましたし、どこからか、「面白そう」という女神様らしき声も聞こえましたが……。」

「やっぱりアンタたちのせいじゃないっ!」

キィーっと唸るサラ。

「えっと、ほら、サラ姉。称号がついたならスキルも増えてるでしょ。悪いことばかりじゃないと思うな。」


称号には、それに由来した固有スキルや、関連性の高いコモンスキルなどが発現する。故に、称号を持っているというだけで、他より強いと言えることが多い。

そして、サラに新たについたスキルは……


「まぁ……そうだけど……。」

サラはぶつぶつ言いながらルミナスに応える。

その間にルミナスは、サラを鑑定し、その結果を念話でカズトに伝える。


サラ 人族  見習いシスター

所持スキル

生活魔法 光魔法 回復 治癒 支援 隠蔽 詐術 偽証 人心掌握 魅了 欺瞞 扇動 カリスマ


(隠蔽以降がサラ姉が新たに取得したスキルみたい。すごい増えてるよ)

ルミナスが感心したように、そしてどこか拗ねたように言う。


ルミナスが『魔王の愛妹』という称号がついた時に得たスキルは、『魅了(対魔王)』『クリティカル(対魔王)』『絶対防御《魔王の愛》』の3っつだった。絶対防御以外は魔王に対してしか効かないので、実質一つ増えたのと相違ない。

しかし、サラの場合、内容はともかくとして8つもスキルが増えているのだから、ルミナスにしてみれば少々面白くなかったりするのだ。


「あっと、そうだ。そんなことより、魔王様に相談があるんだった。」

暫くむくれていたサラだったが、急に思い出したかのように言う。

「相談?」

「えぇ、とりあえずこちらへいらしてください」

口調を改めたサラが、サラをはじめとした元孤児院出身の使用人たちが住む離れのある裏庭へと案内する。

元々サラに会うために向かっていた場所なので、カズトもルミナスも黙ってついていく。


裏庭には、張りつめた空気が子供の背丈ほどの低さで漂っていた。

少年少女たちは自然と三つの小さな陣営に分かれ、互いを睨み合っている。まるで世界の行方を決める会議でもしているかのように、誰一人として軽口を叩く者はいない。


一つ目のグループの中心には、頭が二つある犬がどっしりと座り込んでいた。左右それぞれの頭が別々の方向を警戒し、低く唸るたびに、支持者の子供たちは「ほら、賢そうだろ」「二人分守ってくれるんだ」と必死に訴える。

二つ目のグループでは、猫が気まぐれに尻尾を振り、あくびのついでのように小さな炎を吐く。そのたびに、子供たちは誇らしげに、あるいは慌てて一歩引きながら、「ほら、すごいだろ」「ちゃんと躾ければ大丈夫だって!」と声を荒げる。

そして三つ目のグループは、その二つに挟まれ、視線を右へ左へと忙しなく動かしながら、落ち着きなく立ち尽くしていた。「犬も猫もかわいいけど……」「そもそも勝手に飼ったら怒られるんじゃ……」「いっそ、捨ててきた方が……」と、言葉は弱々しいが、表情だけは真剣そのものだ。


大人の目から見れば、どこか滑稽で、取るに足らない口論に映るかもしれない。だが子供たちにとっては、自分たちの正しさや責任、そして小さな命をどうするかという、逃げ場のない問題だった。握りしめた拳、潤んだ目、今にも泣き出しそうな声――そのすべてが、彼らが本気で悩み、必死に答えを探している証だった。


サラとしては、出来る限り子供たちの意見は尊重したい。だが、勝手な判断で済ませていい話でもない。

結局、最終的な決断を委ねるべき相手は一人しかいなくて、カズトの姿を探していたという。


カズトはその様子を見て目を丸くする。

――――――オルトロスとヘルキャット??

なんで魔物がこんなところに?


「どうやら、あの子たちが拾ってきたようです……けど、どうします?」

ルミナスの言葉に、カズトは即答する。

「いや、魔物なんか飼えないだろ?」


その一言が落ちた瞬間、裏庭の空気がはじけた。


「えっ――!?」

「そんなの、ひどい!」

「ちゃんと見てください、全然悪い子じゃないです!」


少女たちが一斉に前に出る。まるでその言葉を待ち構えていたかのように、次々と声が重なり合った。


「この子、ちゃんとおすわりも出来るんです!」

二つの頭を持つ犬――オルトロスの首元を必死に抱きしめながら、少女は涙目で訴える。犬の片方の頭は誇らしげに胸を張り、もう片方は不安そうにカズトを見上げていた。


「こっちの子だって!」

炎を吐く猫を抱えた別の少女が、慌てて割って入る。

「火も、勝手に出してるわけじゃありません!びっくりした時だけで……それに、すごくあったかいんです!」

猫はタイミングを計ったように、小さく「にゃ」と鳴き、炎ではなく喉を鳴らした。その仕草に、少女はさらに声を強める。


「私たちでちゃんと世話します!」

「危ないことはさせません、約束します!」

「ごはんも私の分を上げます!」

「私も」

「私だって」

一人の少女の言葉に、他の少女たちが追従する。


言葉は必死で、少しずつ噛み合わない。それでも共通しているのは、必死に守ろうとする視線だった。

誰かが捨てられる、引き離される――その可能性を想像しただけで、少女たちの声は震え、目には涙が浮かぶ。


「この子たち、行くところがないんです……」

小さな声でそう言った少女は、ぎゅっと拳を握りしめていた。

「放っておいたら、きっと……」


言葉の続きを言えず、唇を噛む。


大人から見れば、無茶で、危うくて、感情的な願い。

だが少女たちにとっては、今ここで「見捨てない」と決めることが、自分たちのすべてだった。


オルトロスたちは、そんな少女たちの背中に身を寄せるようにして、ただ黙って成り行きを見守っていた。

その姿が、彼女たちの願いをいっそう必死なものにしていた。


「でもなぁ、魔物だぞ?」

カズトの言葉にルミナスが小さな溜息をつく

「はぁ……。おにいちゃん、それに何か意味あるんですか?」

「いや、だって、魔物だよ?魔物が街中に居たら……。」

「おにいちゃん、ここって共存の街ですよね?獣人も魔族も亜人も、そして人族も分け隔てなく過ごせる街……その中に魔物のペットがいて何の問題が?」

ルミナスに言われて、はっと気づくカズト。

言われてみれば何の問題もないよな。魔物というだけで反対するのは、むしろ筋が通らない。

しかし……。

「直接話してみては?繋ぎますから。」

ルミナスがそういうと、頭の中に、何か回線がつながるイメージが現れる。

カズトは、そのイメージを保持したまま声に出さずにオルトロスたちに呼びかけてみるのだった。


無理強いしないのがカズトのいいところ・・・・・・というか、強気に出れない単なるヘタレなんですけどね。



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