続・魔王様のハーレム騒動 ~セリア~
「さて、次は……。」
リーシアを別室へと下がらせ、カズトは残った二人を見る。
「じゃぁボクが。」
そう言って一歩前に出たのはセリア。
―――ボクっ娘かぁ。
この手のタイプは、大体がボーイッシュな格好をしていて、場合によっては、主人公が、最初は男と勘違いし、お風呂や水浴びの時に、躊躇う相手を無理やり脱がせて「お前女だったのか!」と驚くまでがセットだったりするのが、テンプレ。
セリアも、御多分にも漏れずそのパターンっぽい。
後、追記するなら、おっぱいが小っちゃい。9歳のルミナスより小っちゃい……ってか、ルミナスが大きいだけか?
そう考えた途端、再び、ルミナスにつねられる。
(おにぃちゃんのエッチ)
横を見るとルミナスが顔を真っ赤にしてそっぽを向いている。
うん可愛い。
カズトはルミナスの頭を撫でたい衝動にかられたが、目の前のセリアがジィっと見ているのに気づき、慌てて意識を切り替える。
「じゃぁ、募集に応じた理由を聞こうか?リーシアにもいったが、ハーレムに入るという意味を理解しているのだろうな?」
「うん、理解してる……っていっても、ボクの貧相な身体で満足してもらえるかはわからないんだけど……。」
おっぱいを両手で抱え、少しでも強調させながら、上目遣いでチラッと見てくるセリア。
……うーん、あざといが、計算なのか天然なのか判断がつかないなぁ。……可愛いからいいけど。
(計算ですよ、アレ。おにぃちゃんを利用する気、満々です。)
ルミナスがそう教えてくれる。
……そっか、計算なのかぁ。
少しだけしょんぼりするが、今に始まったことじゃないので、気にはしない。
(おにぃちゃん……可哀想……)
……いや、本当に気にしてないんだからねっ。悲しくなるから同情はやめて。
「それで?」
カズトは、何事もなかったように。セリアにそう告げる。
内心は動揺しまくりではあったが。
それを、怒らせたと勘違いしたのか、セリアは神妙な面持ちになり、居住まいを正す。
そして一度、小さく息を整えてから語り始めた。声は落ち着いているのに、どこか震えを含んでいて、聞く者の胸を自然と締め付ける。
「……もともと、ボクはずっと一人で冒険者をしていたんだ。誰にも頼らず、誰にも迷惑をかけずに。それが自分のやり方だと、信じていた。」
そう言いながら、視線を伏せる。ソロで戦い続けた日々の記憶が、わざとらしくも、しかし確かに苦いものとして胸をかすめる。限界を感じたのは事実だ。剣を握る手が震え、背中を預ける相手が欲しいと思った夜もあった。
「シャガートの街に来た時……ここが、人生を変える場所だと思ったんだよ。仲間を作れば、きっと前に進めるって」
その言葉には、後悔と未練が巧妙に混ぜられていた。パーティを組んだこと、信じたこと、裏切られたこと――語られる内容はすべて真実だ。ただし、真実の“全て”ではない。
セリアは、ふと、転機となったあの時の事を思い出す。
◇
シャガート郊外、霧の残る遺跡跡。
その依頼は、最初からどこか歪んでいた。
「――セリア、後衛を頼む」
仲間の一人がそう言った声は、いつもより軽かった。戦闘が始まる直前だというのに、緊張感がない。セリアは一瞬だけ眉をひそめたが、何も言わずに頷いた。
セリアのポジションは基本遊撃だ。
武器は両手に持ったショートソードを基本にしているが、投げナイフや暗器などの扱いにもたけているし、簡単な魔法も使え、治癒も出来る。
器用貧乏と、口の悪い冒険者は言うが、ソロでやっていこうと思えば色々と出来なければいけないのだ。
だからパーティを組んだとも、相手に合わせて、前衛後衛を過不足なくこなしてきた。
だから今回の指示もおかしい訳ではないのだが……
(……変だね。でも、今さら疑っても仕方ないか)
魔物は想定よりも強く、数も多かった。前衛が押され、陣形が崩れ始める。セリアは歯を食いしばりながら支援と牽制をしつつも、身の安全だけに集中していた。
――仲間が倒れても構わない。そう割り切っていたからだ。
(どうせ、この依頼が終わったら……)
信用なんてない。今の仲間も、いずれ捨てる。
そう思い、先に切り捨てるつもりだったのは、セリアの方だった。
だが。
「……あ?」
背後で、何かが弾ける音がした。
魔物ではない。人の気配だ。
振り返った瞬間、視界の端で“縄”が跳ねた。
「っ――!」
足を絡め取られ、体勢を崩す。地面に倒れ込んだセリアの耳に、聞き慣れた声が落ちてきた。
「悪いな、セリア。借金の肩代わりには、ちょうどいい」
その瞬間、理解した。
魔物が強すぎた理由。増援が来ない理由。
そして――自分だけが、狙われていた理由。
「……最初から、だった?」
問いかけは虚しく宙に消える。仲間たちは視線を合わせないまま、戦闘を続けている“ふり”をしていた。逃げ道は塞がれ、助けは来ない。
(……やられた)
胸の奥が、ひどく冷えた。
利用するつもりだった相手に、先を越されただけ。
それだけの話なのに、思った以上に、胸が痛んだ。
「ボクに……全部の責任を、被せるってわけだ」
呟いた声は、震えていた。演技ではない。
悔しさと、怒りと、そして自分への苛立ち。
(甘かった……ほんの少し、油断した)
魔物が倒されたが。目的のモノは得られず、依頼は“失敗”として処理される。
失敗の原因は、裏切った女冒険者。
借金の名義も、責任も、すべて彼女一人に押し付けられる筋書きだ。
仲間の一人が、最後に振り返った。
「恨むなら、お前の運の悪さを恨めよ」
その言葉に、セリアは笑った。
乾いた、ひどく静かな笑みだった。
(あぁ……恨むよ、見抜けなかった自分の甘さを。でも次は、ボクが勝つ)
縛られたまま連れ去られながら、セリアの瞳から感情は消えていく。
代わりに残ったのは、生き延びるための冷たい決意だけだった。
◇
「……結果は、噂通り。依頼は失敗し、責任を押し付けられて……気づけば、返せるはずのない借金だけが残ったよ。誰も信じてくれないけど、ボクは罠に嵌められた。ボクは裏切ってなんかない、。裏切ったのはアイツらの方なんだ。」
唇を噛みしめ、ぎゅっと拳を握る。その仕草は、弱者のそれにしか見えない。自分もまた相手を利用するつもりだったなどという本音は、胸の奥で冷たく沈められている。あの時負けたのは、ただ相手の方が狡猾だった、それだけのことだ。
「……だから、もう、冒険者はやめようと思ったんだよ。誰かを踏み越えて生きる世界は、ボクには向いていなかったんだ。これからは……誰かを支える側として、生き直してみようと思った……おかしいかな?」
しおらしくそう締めくくり、セリアはそっと頭を下げる。魔王のハーレムという選択が、彼女にとって“保護”であり、“救い”であるかのように。
――奴隷として売られるよりは、ずっとマシだ。
――どうせなら、この身一つで、生き延びてやる。
そんな計算高い思考は、長い睫毛の奥に隠されている。今ここにいるのは、裏切られ、行き場を失い、必死に縋りつこうとする哀れな女冒険者。ただそれだけだ。
少なくとも、表面上は。
セリアが顔を上げたとき、その瞳はうっすらと潤んでいた。涙が零れ落ちるほどではない。だが、「必死に堪えている」ように見える、その絶妙な湿り気が、彼女自身の計算の産物であることを知る者はいない。
「……笑ってもいいよ。自分でも、情けないと思うから。」
自嘲気味にそう言って、口元にかすかな笑みを浮かべる。その笑みは弱々しく、もう抗う力も残っていない者のようだった。
(――ここで強がったら終わり。助けを求める女は、弱くなきゃ)
心の中でそう整理しながら、セリアはわざと肩をすくめる。守られる立場に立つには、誇りは邪魔だ。過去も、矜持も、必要とあらば涙と一緒に切り捨てる。
「借金取りに追われて……逃げるように街を出ようとしたけど……気づいたら、どこにも行き場がなくなって……」
事実だ。だが“逃げた”理由は一つではない。捕まれば奴隷落ち――それを想像した瞬間、背筋を這ったのは恐怖だけではなく、強烈な拒絶だった。誰かの所有物になるくらいなら、もっと“安全”で、“得”な場所を選ぶ。
「だから、この募集を見たとき……正直、怖かった……けど……」
ほんの一瞬、視線を伏せる。魔王。恐怖の象徴。世界の敵。
だが同時に、圧倒的な力を持つ存在。保護を与える側。
(――力がある男ほど、扱いやすい)
そんな本音は、胸の奥で甘く囁くだけに留める。
「それでも……これ以上、堕ちるくらいなら……。せめて、誰かの役に立てる場所で、生きたかった……魔王様の癒しとなり支えられるならば……と。」
声は震え、指先がわずかに絡み合う。その姿は、もう選択肢のない女そのものに見えるように……。
(魔王のハーレム? 結構じゃない)
(守られて、甘やかされて、信頼を得て――)
(その先は、ボクが決める)
セリアは最後に、深く頭を下げた。
「……どうか、ボクを傍に置いてください。役に立つよう、精一杯尽くしますから」
その姿はあまりにも健気で、あまりにも哀れで。
誰もが、彼女を“騙された被害者”だと信じて疑わないだろう。
事実、カズト自身も、セリアの言葉を完全に信用していた……ルミナスがいなければ。
成人の日です。
新成人の皆様おめでとうございます。
でも、お祝いしてるのって、20才の子たちばかりなんだよね
18才に成人年齢が引き下げられても、20才で成人という意識は、中々変えられない、と。
実質が変わらないなら、いっそのこと15歳まで成人年齢引き下げちゃえばいいのにね。
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