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魔王様のハーレムダンジョン ~俺は、ハーレム王になるっ~  作者: Red/春日玲音


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魔王の一手 後編

「何やってんだよっ! くそがぁっ! どいつもこいつもっ!」


怒声が天幕の中に叩きつけられ、卓上の木杯が跳ねた。

ハルゲルは乱暴に椅子を蹴り、荒い息のまま地図を睨みつける。赤く刻まれた領都の印――それは、もう手を伸ばせば掴めるはずの獲物だった。


領都の陥落は目前。

あの城を落とせば、パンニャ領は丸ごと手に入る。長い戦の果てにようやく掴んだ勝利、そのはずだった。


だというのに。


「あり得ねぇだろ……!」


死に体であるはずの城壁防衛は、予想を裏切って苛烈を極めていた。

兵は疲弊し、矢も尽きかけている――そう踏んでいたのに、実際に返ってくるのは統制の取れた反撃と、異様な粘りだった。


それだけではない。


管理下に置いたはずの街や村が、次々と魔物に襲われているという報告。

糧食を集積していた街は、正体不明の何者かに焼き討ちにされ、補給路では待ち伏せと襲撃が相次ぐ。


食料は減り、武器は届かない。

数字で見ればまだ戦える――だが、現場は確実に痩せ細っていた。


「くそ……くそっ……!」


ハルゲルは拳を握りしめ、卓を叩く。

木の天板が鈍い音を立てるたび、胸の奥に溜まった苛立ちが噴き出す。


それでも、あと一週間。

たった一週間耐えきれば、領都は堕ちる。そうすれば状況は一変する。兵站がどうであれ、魔物がどうであれ、勝者になってしまえば後は何とでもなる。


――その、はずだった。


最近になって流れ始めた噂。

夜に消える兵、帰らぬ斥候、補給地を焼く“影”。

これらすべては、「魔王復活」によるものだと。

ここで領都を落としたとしても、待ち受けるのは魔王軍との戦い、この領都はその最前線となる・・・・・・と。


根拠のない与太話だと切り捨てたかった。

だが、噂は噂のまま終わらず、兵たちの顔から血の気を奪い、怯えが広がる。

勝馬に乗ったはずなのに、気づけば周りを敵に囲まれているみたいだと・・・・・・命がけで領都を落としたとしても、その報酬が、魔王軍への特攻・・・・・・そんな事に付き合っていられねぇ・・・・・・と、ついには脱走者という形で現実になった。


「臆病風に吹かれやがって……!」


吐き捨てるように言いながら、ハルゲルの胸中には別の感情が渦巻いていた。

怒りだけではない。焦りだ。苛立ちだ。そして、認めたくない不安。


何かが、おかしい。

敵は城の中だけではない。見えない何者かが、確実に、こちらの急所を突いている。


ハルゲルは歯を食いしばり、地図から目を逸らした。


「……一週間だ。糧食も武器も、・・・・・・士気も、1週間なら持たせることができる」


それは自分に言い聞かせる呪文のようだった。

1週間以内に領都を落とすのだ。

そして魔王軍が向かっていることを王都に連絡し、援軍を呼び寄せる。

事は、人類総出で当たらなければならない、魔王軍との戦いだ、反乱がどうとか言っている場合ではないはずだ。

領都さえ堕とせば何とかなる・・・・・・ハルゲルはそう自分に言い聞かせるように何度もつぶやく。

だが、その声は、苛立ちと焦燥に震えていた。



勢いよく広げられた地図の上で、マイの白い指先が一点を押さえた。


「カズト様。この辺りの街が不安定です。いかがいたしましょう?」


示された場所を見た瞬間、カズトは小さく息を吐いた。

そこはこの領内でも指折りの交通の要所。街道と街道が交差し、人も物も必ず通る、まさに“喉元”とも言うべき街だった。


「……ここか」


それだけに、防備は固い。

城壁は整い、民兵も訓練されている。これまでに幾度か魔物の小規模な襲撃を受けながらも、辛うじて持ちこたえているという報告が上がっていた。


とはいえ、時間をかければ陥落するのは間違いない。

数を揃え、包囲して削っていけば、いずれは落ちる。


だが――。


カズトは腕を組み、地図から目を離さずに考え込む。

ここを力押しで堕とせば、街は荒れ、流通は止まり、民は怯える。今後この地を利用し、支配していくことを考えれば、それはあまりに効率が悪い。


「むやみに壊すのは得策じゃないな」


かといって、放置すればどうなるか。

反乱軍が逃げ帰ってきたとき、この街に立ちこまれては、面倒が長引く結果になるだろう。

そうでなくても、補給と交通の要衝を敵意を持った相手に握られたままでは、いくら反乱軍を押し返したと言っても、背後に刃を突き立てられるようなものだ。噂と不安が広がれば、反乱軍を利する事になるのは目に見えている。


「守りが固い街ほど、民の不安も大きい。外から見れば踏ん張っているが、中は相当張りつめているはずだ」


カズトはそう呟き、マイの指先の位置をなぞるように軽く叩いた。


「正面から叩く必要はない。ここは――“崩す”んじゃなく、“揺さぶる”」


補給路を一時的に止める。

夜間に魔物の動きを誇張して見せる。

そして、もう後がないという時に現れる救世主の存在。


「恐怖と安心、その両方をこちらで握る。そのカギとなるのは、領主の娘であるシーラと勇者姫の二つ名をもつアリーナだ」


静かな声だったが、それだけにカズトの決意の固さがうかがえる。

その決断に迷いがなかった、と言えばうそになる。


(どうしよう! 事が終わっった後、二人とも戻ってきてくれるかなぁ?民衆が話してくれるかなぁ?)

いや、不安でいっぱい、今からでもやめようかと迷っているカズトだった。


そんなカズトの内心など分かる筈もなく、マイは一瞬だけ目を見開き、すぐに深く頷く。


「承知いたしました。では、その方向で手配を」


「頼む。この街は、落とすんじゃない。――取り込むんだ。」

「仰せのままに・・・・・・マイ・ロード!」


度重なる魔物の襲撃により疲弊した民衆の前に現れる、勇者姫アリーナ。そして、取り仕切ってくれる領主の娘シーラという指導者。

この二人の存在は、民衆が今、まさしく求めていた存在である。

この二人によって、脅威は取り除かれ、街は安定を見せる。そうなれば、シーラを通じて、想いのままに利用できるだろう。

場合によっては、シーラは魔王の使いだと告げてもいい。

反抗はあるだろうが、実際に救われた状況下において、以下ほどの反抗が出来るものだろうか?

見捨てられれば、今度こそ破滅が待っていると知れば、そして素直に従う限り、今までと変わりのない暮らしができるのであれば・・・・・・。


地図の上の一点は、もはや“敵拠点”ではなく、これから使うべき“要”として、カズトの目に映っていた。


「あとは、ハルゲルの軍の逃げ道を誘導してやれば終わりだな。」

シリルの最新の報告によれば、ハルゲルの軍は脱走者が1/4を超えたところで瓦解。もはや城壁を攻略するほどの力はなく、壊走し始めたそうだ。

シリルが、ゲルハルトと契約を結んでから1日しかたっていない。カズトの売った手が思った以上に効果を発したのか、ゲルハルトの勢いが良かったのか・・・・・・。

どちらにしても、敗走した反乱兵が、あっちこっちで野盗に成られても、面倒が増えるだけだ。

だから、魔物の配置をうまく使い、王都方面にしか逃げ道がない様に誘導する。

後はこの国の兵士が上手くやってくれるだろう。

落ち着いたらゲルハルトとの話し合いが待っている。


カズトは、めんどくせー、と思いながら癒しをアリーナに求め・・・・・・。

「あ、そっか、今はいないんだった。」

カズトは仕方が無く、癒してくれる女の子を探しに、ダンジョン内をうろつくのだった。

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