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魔王様のハーレムダンジョン ~俺は、ハーレム王になるっ~  作者: Red/春日玲音


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20/51

シーラの憂鬱?

アリーナの膝の上で、カズトはすっかり気を抜いていた。柔らかな太ももに後頭部を預け、見上げると、朝の光を受けた彼女の微笑みがやけに眩しい。

「はい、あーん」

一口サイズに切り分けられた瑞々しい果実が、細い指に摘まれて差し出される。カズトが素直に口を開けると、果汁の甘さと同時に、アリーナのくすぐったそうな笑い声が降ってきた。

「美味しい?」

「……うん」

そんな他愛もないやり取りが、朝の静けさに溶け込むように続いていく。


だが、その光景を少し離れた場所で見つめていたシーラの額には、青筋が浮かび始めていた。最初は咳払い、次は足踏み。それでも二人は気づかない。ついに限界を迎えたシーラは、拳を握りしめて怒鳴った。

「私の事ほっといて、イチャイチャしてるんじゃないわよっ!」

張り裂けるような叫びに、アリーナはきょとんと瞬きをし、カズトは果実を咥えたまま固まる。

甘ったるい空気は一瞬で破られ、朝のアリーナには、シーラの不満と二人の気まずい沈黙が、くっきりと響き渡った。


「ほっといて、と言われてもなぁ。シーラはエッチさせてくれないじゃん?


肩をすくめて言うカズトに、シーラは一瞬きょとんとし――次の瞬間、耳まで真っ赤になった。


「な、なに言ってんのよ!」

そう叫びかけてから、ぐっと言葉を飲み込み、指を突きつける。

「それはカズトがヘタレだから出来ないんでしょ!」


「はぁ!?」

カズトは目を丸くし、思わず声を裏返らせた。

「いやいや、前に言っただろ? エッチできたなら助けるって。約束が履行されてない以上、俺は悪くない!」


「履行って言うな履行って!」

シーラはぷいっと顔を背けるが、頬はりんごのように赤い。

「そもそも出来ないのは、カズトに問題があるからでしょ!私のあられもない姿を何度も見てるくせにっ!」

「仕方が無いだろっ!俺だって襲いかかりたいのにエルが・・・・・・」

「ヘタレ!それを乗り越えるのが男ってもんでしょ、この甲斐性なしっ!」

「おのれっ、言ってはならんことをっ!」

二人がぎゃあぎゃあと言い合う横で、アリーナは状況を理解しきれないまま、こくりと首を傾げる。

「えっと……果実、もう一個食べる?」

その一言で、さらにシーラの赤面が深まり、カズトは気まずそうに視線を逸らした。


甘ったるい空気と、恥じらい混じりの言い争い。

朝の一幕は、どこか騒がしくも、妙に微笑ましい騒動へと変わっていった。



「ぐすっ……ひっく……私の気持ち……わかっているくせにぃ……」


さっきまで勢いよく言い合っていたシーラの声が、急にしおれて震えだす。肩を小さくすくめ、目元を手で覆った瞬間、ぽろりと涙がこぼれた――ように見えた。


「え、ちょ、シーラ!?」

カズトは完全にパニックだった。

「ま、待て待て、泣くほどの話じゃ――いや、俺が悪かった! たぶん! きっと! ほら、えっと、その……」


言葉は空回り、手は宙をさまよい、どこをどう慰めればいいのかわからず右往左往。

「ハンカチ!? あ、ない! 水!? いや逆にまずい!?」

完全にお手上げ状態で、ついには頭を下げた。

「ごめん! 悪かった! 俺が全部悪いから!・・・・・・泣き止んでくれよぉ・・・・・・。」


その様子を、シーラは俯いたまま、ちらりと盗み見る。

――よし、かかった。

唇の端が、ほんのわずかに緩む。


「……じゃあ、私の言うこと、ちゃんと聞いてくれゆ?」

まだ涙声を装いながら、控えめに、しかし確実に要求を差し出す。


「聞く! 聞くから!」

カズトは即答だった。疑う余地すらない。


その瞬間、シーラの心の中では小さな勝利のファンファーレが鳴り響く。

(ふふん……カズトのばぁか。今日こそはちゃんと話を聞いてもらうからね。)

今はウソ泣きを続けているが、最初は本当に悲しくて涙がこぼれたのだ。

あまりにもカズトが動揺するものだから、ついでに調子に乗ったけど・・・・・・

けれど、それは決して悪意からではない。

カズトなら最後にはちゃんと向き合ってくれる、受け止めてくれる――そんな信頼があるからこその、少しずるい甘え方だった。


(でも、カズトも悪いんだからね。最近はアリーナにばかり甘えちゃってさ。私だって甘やかしてあげるのに。)

だから、少しぐらいはイジワルしても許されるだろう。


やがて涙を拭ったシーラは、ほんのり赤い目で顔を上げる。

「……ありがと。カズト」

その声は、さっきまでの芝居とは違う、素直で柔らかなものだった。


カズトはほっと胸をなで下ろしながら、苦笑する。

「まったく……ズルいぞ・・・・・・泣かれるの、一番弱いんだからさ」

「うん・・・・・・・ごめんね。これで許して。」

シーラが、カズトをアリーナから奪い取り、優しくキスをする。


少し騒がしくて、少し不器用で、でも確かに温かい。

そんな二人のやり取りを、今日もまた朝の空気がやさしく包み込んでいた。


そして、手に持った果実の行方を彷徨わせ、仕方が無く自分の口に運ぶアリーナの姿が、少しだけ悲哀に満ちていたのだった。



シーラとの取引は、シーラがカズトのモノになる・・・・・・つまりハーレムに入る代わりに、反乱を起こしたハルゲルから、領都を取り返してほしい、というもの。


正確に言えば、領都そのものはまだ落ちていない。城壁も、守備隊も健在だ。だが戦局は明らかにハルゲル有利で、補給線は断たれ、援軍の見込みも薄い。このままでは、時間の問題で陥落する。


その現実を前に、カズトは頭を抱えていた。

「はぁ……面倒だ……」


より正確に言うならば、「シーラとエッチできたら前向きに検討する」というものであり、シーラとエッチしていない現状では、無視しても構わない案件だったはずだ。

しかし、本番はしてないとはいえ、その直前まではイチャイチャしているし、何より、シーラの「お願い」は、出来るだけ叶えてやりたいと思う。それがハーレムの主としての甲斐性だとカズトは考えていた。

「うん、そうだ、俺は甲斐性なしなんかじゃねぇ!」

・・・・・・意外と、シーラの放った一言が堪えていた。


それはそれとして、ここに色々と問題が山積みになっている。

まず、一番の問題は、単純な軍事力ではない。

今のカズトは“魔王”という立場にある。自分で名乗ったわけじゃないが、なぜかそうなってしまった。そんな存在が、正面切ってパンニャ公爵に味方し、反乱鎮圧に乗り出せば、後々まで政治的なしこりを残す。

「魔王が人間の内戦に介入した」

その事実だけで、周辺諸国は警戒し、いずれ別の火種を生むだろう。


だからこそ、後回しにしていたというのもある。

表立って、下手な介入は出来ない――理屈では、それが最善だった。


だが。


「……お願い。カズト。カズトならうまくやれるでしょ?」

さっきまでの涙の名残を残した目で、シーラが見上げてくる。すり寄って甘えた態度で「お願い」してくる

そこにあるのは計算ではなく、純粋な信頼と甘えだとわかってしまうから、なおさら厄介だった。


「……わかったよ」

カズトは観念したように息を吐く。

「ただ、真正面からはやらない。あくまでもフォローしかできない」


作戦は、あくまで“影”に徹することだった。


まず、ハルゲル軍の優位の根拠――補給と情報網を断つ。

実は、これはすでに行っていたりする。

ハルゲルが・・・・・・というか、ゲール伯爵が代官を任されている地域のうち、この魔の森付近の10の村と3の街が、魔物被害を受け、住民達は皆、他の街へと避難している。

流石に街の住民は、そう簡単に移動できる程人口が少なくないため、3割程度の住民がまだ残っているのだが、魔物の侵攻に怯え、隠れるように息を潜めて暮らしている、今の状況では、街としての機能は望めないだろう。

つまり、ハルゲルの息のかかった土地の内1/4程が使えず、残った土地も、難民を抱えているため、食糧事情に負担がかかっているというわけだ。

それでも、今は何とかなっているので、この勢いで突き進めば、問題が浮上する前に、領都を落とすことができるかもしれない。

だから、ここからはさらに一歩進めて、魔物たちを進軍させ混乱を起こすのもありかと思う。

他にも、夜陰に紛れて倉庫や中継拠点を潰したり、原因不明の混乱を巻き起こすのもいいだろう。

魔物の侵攻はタイミングが悪かった。焼き討ちや混乱は治安が悪くなった結果だ、として処理される程度が理想ではある。間違っても、今の段階で、裏で誰かが手を引いていると思われてはいけない。


それらの活動を支援しつつ、次に行うのは、領都内部への間接支援。

直接援軍を送る事は出来ないから・・・・・・というか、魔物の援軍を送ってもらっても困るだろう・・・・・・、士気と統制を回復させるための「きっかけ」を与えることを念頭に置いた策を練る。

指揮官の入れ替え、偽情報の流布、ハルゲル側の内部不信を煽る策――パッと思いつくだけでこれぐらいは出てくるので、情報を精査すれば、より細やかな対応が出来ると考えている。


最後に、決定打。

ハルゲル本人を討つのが早いのだが、必ずしも倒す必要はない。

兵士たちに「この戦は勝てない」と悟らせ、わかりやすい逃げ道を作ってやることで、撤退を選ばせる状況を作るだけでいい。それでも「逃げずに戦え」などとハルゲルが強要するのなら、程なくして反乱軍は瓦解し、領都は自然と持ち直すだろう。


「要するに……基本、裏で暗躍するってことだ。」

カズトは苦笑しつつ、シーラを見る。


「それでも、領都は助かるんでしょ?」

シーラは少し安心したように、でもどこか誇らしげに胸を張った。


「ああ。ただし――」

「ただし?」

「状況によっては、表舞台に立つ必要があるかもしれない。その時は、シーラ、お前が矢面に立つんだ。」


その言葉に、シーラは一瞬きょとんとし、やがて小さく笑った。

「……うん。カズトがそういうならいいよ。」


カズトは内心でため息をつきながらも、覚悟を決める。

シーラにはああいったが、いざという時はカズトが表に出るつもりでいる。その時は、もちろん「魔王」としてだ。

そうなってしまえば、人同士で争ってはいられなくなるだろう。


まとめると……。

現行のA案・・・・・・タイミング悪く魔物の侵攻が起きたため、領都を陥落できなかった。

 パンニャ領が二つに割れ、火種が燻ったままになるけど、これが一番無難。


建前のB案・・・・・・反乱を事前に察知し、領都を脱出していたシーラ公女が、援軍を集めて加勢する。

 この場合、シーラだけでなく、アリーナの『勇者姫」の名前も使う必要がある。

が、この案を採用する気はない。

 大体、これをやったら、シーラと下手すればアリーナ迄、ハーレムから外さなければならなくなるかもしれない。そんな事になるぐらいなら、シーラに泣かれてもパンニャ領が潰れる方を選ぶ。だから不採用。


裏のC案・・・・・・野生の魔王が現れた。争っている場合じゃないから手打ちにしよう。

 一番簡単ではある。ついでに近隣を恐怖支配して、女の子を差し出させるのもいいだろう。

 だけど、色々相手しなきゃならなくなってめんどくさい。この案を採用するという事は、引き籠りイチャイチャライフを捨てるという事でもあるから、で斬らばやりたくないよなぁ。


でも、まぁ、やるだけやってみますか。

これは、シーラに対する愛情の結果であり、決して泣き落としに負けたわけではない、とカズトは誰にともなく言い訳をするのだった。



ご意見、ご感想等お待ちしております。

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