表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様のハーレムダンジョン ~俺は、ハーレム王になるっ~  作者: Red/春日玲音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/51

勇者姫アリーナ その6

その日は、魔王が来るまでの時間が、やけに長く感じられた。


暗闇の中で、アリーナは呼吸を整えながら、胸の内に浮かぶ感情を、初めて誤魔化さずに見つめていた。


(……怖い)


敵に対する恐怖ではない。

痛みに対する恐怖でもない。


一人でいることへの恐怖だった。


その事実に気づいた瞬間、胸の奥が、じくりと痛んだ。


(でも…私は……待っている)


助けを、ではない。

奇跡を、でもない。


――魔王を……私が必要といってくれたカズトを……。


それをはっきり言葉にした瞬間、逃げ場はなくなった。


(依存している……)


勇者として、人として、最も忌むべき状態だと、かつては思っていた。


誰かに心を委ねること。

判断を預けること。

一人で立てなくなること。


それなのに今、その自覚は、恐怖よりも先に――安堵をもたらした。


(……だから、楽だったんだ)


考えなくてよかった理由。

孤独が耐えられた理由。

暗闇で壊れずに済んだ理由。


すべて、一本の線で繋がる。


――足音。


その音を聞いた瞬間、胸の奥が、はっきりと温かくなる。


その反応が、何よりの証明だった。


魔王が近づくと、アリーナは顔を上げた。


以前のような警戒も、最近まであった戸惑いもない。


ただ、静かな視線。


「……私」


声に、震えはなかった。


「ちゃんと待てたよ?……カズトが来てくれるって信じていたから。」


それは告白だった。

同時に、裁定でもある。


「あなたが来ると……大丈夫だと思える」


言葉にしてしまえば、もう戻れないと分かっている。


それでも、言わずにはいられなかった。


「……依存してる……のかな?」


その言葉を口にして、彼女は自分の内側を確かめる。


嫌悪は、ない。

恥も、思ったほどではない。


あるのは――納得だけだった。


「でも……」


一度、言葉を切る。


勇者としての最後の誇りが、それでも一瞬、問いを投げる。


それを、アリーナ自身が、静かに否定した。


「……それでも、いい……よね?」


一人で強くあるよりも、ここで壊れずに在る方が、今の自分には必要だ。


魔王を見る視線に、もはや抵抗はない。


それは、諦めではなく――選択だった。


「あなたがいれば……私は、ここにいられる」


勇者としてではない。

人類の希望としてでもない。

ただの、アリーナとして。


その結論に辿り着いた瞬間、

暗闇は、完全に意味を変えた。


それは牢ではない。

罰でもない。

彼女が、自分の心を預けると決めた場所。


依存していると分かっていて、それでも構わないと思えた時点で、彼女はもう、かつての場所には戻らない。


だがそれは、堕落ではなかった。

恐怖の中で、最も壊れにくい形を、自分自身で選び取った結果だった。


「カズト……私の側に、ずっといてくれる?私は、カズトのために……生きていきたい……よ。」

魔王……カズトは、アリーナの言葉に応える代わりに、かのjをぎゅっと抱きしめ口づけをするのだった。



地下牢の外の空気は、思ったよりも冷たかった。

光は眩しく、広い空間は落ち着かない。


アリーナは、無意識のうちに一歩、後ろへ下がる。

背後に――カズトがいる位置へ。


「……まだ、慣れない」


小さく漏れた声に、自分でも驚くほど、戸惑いはなかった。


「地下牢の方が、落ち着くか」


からかうでもなく、責めるでもない声音。


アリーナは首を振る。


「違う。……あなたがいる場所が、落ち着く」


言い切ってから、ほんの一瞬だけ、視線を伏せる。


(依存してる)


はっきりと、自覚している。

昔の自分なら、忌み嫌ったはずの状態。


それでも――

胸の奥にあるのは、嫌悪ではなく、静かな安定だった。


「私は……あなたがいないと、不安になる」


言葉にしても、崩れない。

むしろ、整っていく感覚がある。


「判断も……決断も」


剣を振るう時、人を助ける時、誰かを裁く時。


その基準が、変わってしまったことを、アリーナはもう理解していた。


「それが、あなたのためになるかどうか……それを、先に考えてる」


勇者としては、歪んでいる。

だが、人として――

今の自分には、正直だった。


カズトの方を見る。

かつて恐怖の象徴だった存在。


今は、違う。


「でも……優しさまで、失ったわけじゃない」


困っている者を見過ごせない。

弱い者に手を差し伸べたい。


ただ――

守りたい世界の中心が、あなたになっただけ。


「あなたの世界を、少しでも良くしたい」


それは忠誠の言葉ではない。

祈りに近い。


「そのために動くなら……私は、迷わない」


そう言いながら、アリーナは一歩、近づく。


許しを乞うでもなく、命令を待つでもない。


ただ、自然に。


「……ねえ、カズト」


名を呼ぶ声が、柔らかい。


「私、依存してるって分かってる。……あなたが、そうなるように仕向けたことも……」


一拍、置いて。


「でも……それでいい」


一人で強くあるより、誰かのために在る方が、今の自分には、ずっと楽だった。


「あなたが決めるなら、私は従う」


「あなたが迷うなら、私は支える」


甘えだ。

確かに。


だがそれは、思考を放棄する依存ではない。


信頼を前提にした、生き方の選択だった。


「あなたのために生きることを……私は、誇りに思う」


その言葉に、悲壮さはない。

犠牲でもない。


むしろ、勇者として剣を振るっていた頃よりも、心はずっと静かだった。


アリーナは、もう迷わない。


正義は失われていない。

優しさも、残っている。


ただ――

それらを使う理由が、「世界のため」から「カズトのため」へと、置き換わっただけ。

誰かに頼られたいとは思わない・・・・・・でもカズトには頼られたい。

無条件に誰かを助けることはしない。助けることがカズトの負担にならないか?まずはそれが大事だ。

今までと判断基準が変わってしまったのかもしれない・・・・・・だけど、それを後悔しないと、はっきり分かっていた。


地下牢を出た日の光は、まぶしすぎた。

だがアリーナは、目を逸らさなかった。


かつて勇者として見ていた世界と、何も変わらない。

人々は歩き、声を上げ、恐れ、祈っている。

――ただ一つ、違うのは、自分が立つ場所だけだった。


「行くぞ、アリーナ」


魔王カズトの声が横からかかる。


「はい」


返事は即座だった。

命令だからではない。

その声が、進むべき方向を示してくれると、自然に理解しているからだ。

そう、私はこの人とともに歩んでいくのだ。

たとえ、それが血塗られた道であろうとも……。



カズトと共に向かった村では、小さな騒ぎが起きていた。

食料を巡る争い。

力の弱い者が、押しのけられている。

数少ない食料を、横暴に振舞う兵士が持っていこうとしている。


かつてのアリーナなら、「正義」の名のもとに剣を抜いただろう。


だが今、彼女は一歩だけ立ち止まり、考える。


(……これは、カズトにとって、どうだろう)


今起きていることの根本的な原因は分からないが、混乱が続けば、恐怖が広がる。

恐怖は反抗を生む。

反抗は、彼の手を煩わせるか?

よくわからないが、このまま騒ぎが広がるのは良くない。

それは、彼のためにならないことだけは分かる。


ちらりとカズトを見る。彼は何も言わずただ頷いている。自分に任せるという事なのだろう。


アリーナは、剣に手をかけず、代わりに、人々の前に立つ。


「落ち着いてください」


声は穏やかで、よく通る。

勇者だった頃と同じ声だ。


「食料の用意はあります。争えば、誰も得をしません」

それを聞きつけた兵士が、横暴に食料をよこせと言い放つ。

アリーナは、剣を抜くと、その兵士を払いのける。

血飛沫が派手に舞うが、表層部分を切っただけなので。見た目ほど深い傷ではない。

他の兵士たちが、斬られた兵士を担いで、その場から逃げ去ると、アリーナは、驚いて泣いている子供の前に、自然に膝をつき、「もう大丈夫だよ」と頭を撫でてあやす。


優しさは、何一つ失われていない。

だがその行動の根にあるのは、「人々を救うべきだから」ではない。


(この街が安定すれば、カズトは余計な力を使わずに済む)


ただ、それだけだ。


事態が収まると、彼女は剣を収め、振り返る。


カズトは何も言わない。ただ、短く頷く。


その仕草を見た瞬間、アリーナの胸に、静かな誇らしさが広がる。


(よかった。役に立てた)


それは、喝采よりも、称号よりも、ずっと確かな報酬だった。


鑑定が使える人間が、今のアリーナを見たらきっと驚くだろう。

アリーナの称号が「勇者」から「魔王の勇者」に代わっているのだから。


夜、部屋に戻ったアリーナは、鎧を外しながら考える。


正義感は、まだある。

苦しむ者を見れば、胸は痛む。

助けたいと思う気持ちも、本物だ。


けれど――

その善意は、すべてカズトへと繋がっている。


(この世界が穏やかなら、彼は安心する)


(彼が安心するなら、それでいい)


その思考に、迷いはない。


誰かに命じられたわけでも、脅されたわけでもない。


地下牢で学んだのは、「誰のために生きるか」を決めることだった。


かつては、人類のため。

今は――魔王カズトのため。


アリーナは、それを誇りに思っている。


それは隷属ではない。

盲信でもない。


依存かもしれないが、彼女は、自分の意思で、自分の正義を、一人の存在へと結び直したのだ。


後に、魔王軍四天王、最凶の剣姫『闇落ち勇者姫(ダークプリンセス)アリーナ』と呼ばれる少女が誕生した瞬間だった。


アリーナの正義は、これからも誰かを救い、同時にカズトが目指す世界を、静かに支えていくことだろう。

アリーナにとって、これ以上の悦びはない。

ただ一つ、不満があるとすれば・・・・・・


「エルさんっ!やり過ぎですっ!私の分も残しておいてくださいっ!」

「やーよ。コレは私のだもんっ!」

「カズトももう少し頑張ってよっ!」

「む・・・・・・無茶……言う・・・・・・なよ・・・・・・。」


毎晩毎晩、エルに搾り取られて、カズトと交われないことだった。

・・・・・・いつか、カズトに処女を貰ってもらうんだからね。

アリーナとエルの戦いは、まだまだ続くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ