勇者姫アリーナ その2
「クックック……ついにこの時が来たぞっ!」
俺の目の前には縛り上げたリナとシーラが、ベッドの上で、互いに深いキスを繰り広げている。
もちろん俺の命令でだ。
美少女の百合百合な光景は何度見ても尊いものだ。
キスを繰り返している二人は、切なげな吐息を漏らしている。
お互いに慰めたくても、腕が縛られているためできないのだ、そしてそれがもどかしさを生み、切なげな吐息が切ない声に変わるのは時間の問題だった。
「ほら、欲しければおねだりするんだぞ」
俺は二人にそんな声をかけると、二人は俺に視線を向け、顔を赤らめてしまう。
自らおねだりをするような恥ずかしいことはできない、でも、切ないの、と葛藤しているのがわかり、俺は大満足だ。
「ほらほら、ちゃんと言わないと、もっと恥ずかしい目に合わせるぞ?」
俺は彼女たちの衣服を一枚一枚ゆっくりと脱がせながら、彼女たちの敏感な部分を愛撫していく。
リナもシーラも、羞恥に悶えながら、恥じらいと本能の間で揺れ動いている。
「安心しろ。時間はたーっぷりあるからなぁ!」
クックック……と俺は笑いを漏らす。
そう、時間はあるのだ。
いつもいいところで邪魔をするエルが、今日はいない。
今日、この時のため、練りに練った計画により、エルは今、シーラの故郷であるパンニャ領の領都「パルマ」に向かっている。
ハルゲルによる反乱の状況を確認してもらい、どこかつけ入るすきを窺ってもらうため……という事になっている。
正直な話、ハルゲルやパンニャ領のことなんかどうでもいいが、一応シーラを好きにするためには「反乱を何とかする」という姿勢を見せておかなければならない。……という理由付けで、エルに偵察に行ってもらっているのだが、実はすべて口実に過ぎない。
そう、俺がリナやシーラと深い仲になるためには、俺が他の子と仲良くすることが出来ないくらい搾り取ってくるエルが邪魔なのだよ。
だから適当な口実をつけてエルを引き離し、こうして二人を呼び出したのだ。
朝から精の付く食事もとっているし、マイ特製のエナジードリンクも用意してある。準備は万端といえよう。
「か、カズト様ぁ……」
「お、お願い……ですぅ……」
お互いにキスを交わし合い、玩具により愛撫をつづけられていた二人は、いよいよもって限界が近いようで、蕩けた目で俺を見つめ、切なげな声で訴えてくる。
うん、準備は整った。じゃぁ、頂きまーす!!
俺は二人の間に飛び込み、そのたわわな果実を思う存分堪能し、さて、メインディッシュを頂こうとしたその時……。
「ご主人様、お楽しみのところ大変申し訳ございませんが……。」
ミィが部屋の中に入ってきて、最重要報告をするのだった……。
◇
「で、こいつが侵入者か?」
俺はモニターに映った、侵入者を眺めながらマイに訊ねる。
「えぇ、彼女の強さでは、第一階層の魔物たちでは相手にならないと判断し、無駄死にさせるよりは、と、そのまま第二階層まで通しました。しかしながら、彼女は戦闘力以外のセンスも秀でているようで、第二階層もほどなく突破されるでしょう。……いかがなされますか?」
「俺が出る。」
「っ!危険です。侵入者の強さは、推定でSランク。ご主人様は、大甘に判断してもEランク相当です。瞬殺ですよ。まだ岩の方が時間が稼げますっ!」
「……そんなはっきり言わなくても。」
告げられた真実に涙目になる。
「大丈夫だ。策はある。それに……」
「それに?」
怪訝そうに聞いてくるマイ。
「せっかくのチャンスを不意にしてくれたお礼を、たっぷりとしてやらないとなっ!」
侵入者の胸元をアップで映し出す。
そこには、リナやシーラよりも大きく実った果実が、プルンプルンと揺れていた。
◇
そのころ、アリーナは、ダンジョンを苦戦しながら踏破していた。
モニターを見ていたマイやカズトからは、アリーナが難なくトラップを潜り抜け、正しき道を選んでいるように見えていたが、その実、アリーナは一杯一杯だったのだ。
「はぁ……またトラップですかぁ……。ここのダンジョンマスターは相当捻くれてるね。」
アリーナは、スキルが感知した罠に対し、別のスキルで対応する。
罠を感知したのは「危機感知」というスキルで、身に迫る危険を知らせてくれるというもの。基本的には、奇襲などの不意打ちに対して有効といわれているこのスキルだが、実は、このようにダンジョン内でのトラップに対しても有効である。
ただ、難点を言えば、「危機」に関しては反応するが、そうでないことには反応しないので、例えば、ただ落ちるだけの落とし穴などには反応しない。
とはいっても、致死性のトラップを、事前に感知できるというだけでも、十分助かる。
そして、トラップを無効化するのは、「未来予測」と「並列思考」の二つのスキル。
未来予測は、次に起こす行動に対し、数秒後の未来を見ることが出来るスキルで、並列思考は同時に複数の事象をとらえ思考を加速することが出来るスキルである。
アリーナは、この二つのスキルを使って、どうすればトラップを交わせるのかを瞬時にシミュレート、思考を繰り返して、最適解を導き出しているのだ。
今2階層に入ってからは、絶え間なくそれらのスキルがフル稼働している状態だった。
アリーナは、他にも「超回復」という、回復スキルもあるのだが、このスキルの効果は肉体に限り、疲弊した精神にまで効果は及ぼさない。だから、2階層を踏破するころには、肉体的にはともかく、精神がかなり披露していた。
「ふぅ……少し休む。」
3階層にたどり着き、大きな扉を目の前にしたアリーナは、その扉を開けることはせず、その場で座り込み、軽く目を閉じる。
一見して無防備に見えるが、《《扉の向こうを含め》》、このあたり一帯から危険は感じないし、アリーナに危害を加えようとするものが近づいてくれば、「危機感知」のスキルが発動するため、アリーナは即対応が可能である。だからこそ、こうしてゆっくりと休むことが出来るのだ。
というより、この先のことを考えれば、このあたりで休息をとっておかないと、足元をすくわれる……そんな気がするのだ。
これも、アリーナの持つ「未来予測」がそう感じさせるのかもしれない。
アリーナは、隣国である「ガルマニア帝国」の第七皇女として生を受けた。皇帝と正妃の間には、長らく子が出来ず、ようやく恵まれたのがアリーナだった。
正妃の子とはいえ、女児であること、第二妃、第三妃、側妃との間に4人の男児がいることなどから、アリーナの王位継承権は低く、それ故にかなり自由に育てられた。それがよかったのか悪かったのか、アリーナは「身分」というものに対してはかなり寛容だった。
自分が知らないことを教えてくれる人、自分が出kないことをやってのける人に対しては、たとえ相手が奴隷だとしても、相手を尊重し、頭を下げて教えを請い、理不尽な対応には怒りを示すのだった。
だから、アリーナは皇族にもかかわらず、庶民との距離が近く慕われていた。
アリーナが転機を迎えたのは、今から8年前、7歳の洗礼式の時のこと。
他の皆と同じように、司祭のお言葉を聞き、女神さまに祈りを捧げた時、女神様の声が聞こえたのだ『我が愛し子アリーナに祝福を授けましょう』と……。
洗礼式に、女神様の声を聞いたという実例はそれなりに存在し、そのすべてが、何らかの恩恵……ギフトと呼ばれる加護を受けている。
それは珍しいユニークスキルであったり、称号だったりするのだが、共通するのは、それらがすべて強力であるという事。
たとえ、身体強化一つをとっても、女神の加護を受けている者は、通常の三倍以上の効果があるのだ。
アリーナが賜ったのは『勇者』の称号。
比類なき力を示し、魔王を唯一倒すことが出来るといわれている称号。
ただ、不可解なことがあるとすれば、「勇者」の称号には必ず「〇〇の」という修飾がついているのが普通だった。
例えば「剣の」勇者であれば、その剣の腕は、当代の剣聖をしのぐ程といわれ、「鉄壁の」勇者であれば、その頑強さは、何物をも背後に通さないといわれている。
ただ逆に言えば、勇者は一転極振りであり、その権能に関しては他者の追随を許さず、比類なき力を見せるが、それ以外に対しては他と大差はないともいえる。
だが、アリーナの称号には、権能を示す修飾が何もついていないことから、関係者一同の頭を悩ませることになった。
さらに言えば、この2年前に、正妃が待望の男児を生んだという事もあり、裏では継承争いが秘かに動き出しているところだった。
正妃が産んだ男児こそ、正統な後継者であるという保守派、第三妃の産んだ第一皇子にこそ正当性がある、と主張する回顧派、第二妃の産んだ第三皇子が一番優れているという、改革派など、それぞれの皇子に着く派閥が、色々と騒ぎ始めているところに、アリーナが「勇者」という称号を得たのだ。彼女こそ、女神に選ばれし、時代の王である、と聖教派が騒ぎ出すのも無理はないだろう。
「勇者」という称号は、それだけの力を秘めているのだ。そして、アリーナは正妃の第一子であることからも、王位に就く正当性があるといわれる。
心優しきアリーナは、自分のせいで身内が争うのを見たくはないと、王位継承権を返上し、ただの冒険者として国を出た。
それが6年前のことだったが、「勇者」の称号に護られたアリーナの活躍は、冒険者を通じて瞬く間に広がり、今では、アリーナのことは知らなくても「勇者姫」の二つ名を知らないものはいない、といわれるほどにまでなったのだった。




