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魔王様のハーレムダンジョン ~俺は、ハーレム王になるっ~  作者: Red/春日玲音


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ハーレム王におれはなるっ!

「ハーレムの王に、俺はなるっ!」

そう叫んだら、異世界へ来てしまった。

あー、うん待て。言いたいことはわかる。

自分でも「何言ってんだ?コイツ」感が半端ないんだ。だけど、これは全部ホントのことなんだ。


俺の名前は、田中一人。名前の漢字がシンメトリーだということ以外、なんの特徴もないモブだ。

そう、モブ……。超絶美少女の幼馴染がいるモテ主人公でもなければ、イジメを受け続け、力を得て復讐するザマァ系ネクラ主人公でもない、タダの背景なのだ。


だけど、最近では、ただのモブだけど、実は主人公よりつえぇ!というのもあるから、そこにワンチャンかけて、色々頑張ってきたんだよ。主に異世界に転生した時に向けて、雑学を中心に……。でも、まぁ、世の中そんなに甘くはない、という事で、俺は代わり映えのない日々を無為に過ごしていたんだ。


そんなある日、いつもの様に昼休みに屋上でボッチ飯を食べていると……。


「……あぁ…だめぇ……」

「おい、声を出すなよ。」

「だってぇ……あぁぁん、だめぇぇ……。」

給水塔の影で情事に耽っている男女の生徒がいた。

男の方は、よく知らないが、確かバスケ部だかバレー部だかの副部長だったと思う。

そして、嬌声をあげている女の子は、学年ランキングトップ5に入る巨乳美少女、隣のクラスの安藤まどかだった。実を言えば、俺も密かに憧れていて、何度もおかずにした事もある。


二人は俺に気づかずに、情事に夢中。俺は思わず、スマホでその様子を最後まで撮影していた。

結局、二人は事を終えたあと、逃げるように屋上から去っていき、俺は録画したまどかの痴態を何度も見返していた。

そして……………。


「チクショー!俺だって女の子をとっかえひっかえ弄びてぇよぉっ!ハーレム王になって、女の子とイチャイチャしてぇっ!」

気づけば、そんなくだらないことを叫んでいた


『その望み叶えましょう』

どこからともなく、そんな声が聞こえた。

「へはぁ?」

思わず間抜けな声が漏れる。

『あなたの望みを叶えましょう、と言ってるのですよ。』

「………。」

『あぁ、勿論無償ではありませんよ。』

「まぁ、そうだろうな。」

タダでさえ怪しいのに、これで無償で願いを叶えるなどと言い出したら、完全に詐欺の類だろう……タダだけに。

『信用されないのは織り込み済みですので、まずは先にあなたの望みを少しだけ叶えて差し上げます。それで信用してもいいと思っていただいてから交渉に入りましょう。』

謎の声がそんなことを言う。

なる程、お試し体験版ありってことか。

「……どうすればいい?」

『あなたの望みを叫んでください。心から。すべての思いを込めて。』

「そんなのでいいのか?」

『えぇ。言葉には力が宿ります。想いが強ければ強い程、言霊は強固になり事象の偏移へ作用します。』

言っていることはよくわからないが、とにかく想いを言葉にすればいいわけだ。

だから俺は叫ぶ。


『ハーレム王に、俺はなるっ!!』


と………。



「……と、まぁそんな感じで、気づいたらここに居たって訳なんだけど?」

俺はいま、目の前の小瓶の中に閉じ込められた小さな女の子に向かって、事の経緯を話していた。

「はぁ……そういう事かぁ。」

手のひらサイズのその女の子は、頭を抱えながら、何度も首を振っている。


「はぁ、仕方がないかぁ。……アナタ、私と契約を結びましょう。」

「契約?なんの?」

いきなり何を言い出すんだ?

「しゅじゅ………パートナー契約よ。あなたが私の言うことを聞く代わり、私はあなたの力になってあげる。そういう契約よ。」

妖精のような女の子がそう言うが、視線が泳いでいるあたり、なにか怪しい。

そもそも、この手の、何かに封じられている存在と言うものは、訳有と言うのが定番だ。となればこっちのほうが立場が上ということが多い。

「主従契約なら結んでやってもいいぞ。つまり、俺が主人でお前は奴隷だ。俺の言う事には黙って従え!」

「あんた馬鹿なのっ!そんな契約結ぶわけ無いでしょっ!」

当たり前のように少女が怒りの声を上げる。

まぁ、そうだろうな。だけど、これは、先に無茶な要求を突きつけて、そこから妥協したように見せて本来の要求を通すという、高等な交渉テクニックなのだ。……俺も本で読んだだけだから知らんけど。

最も、交渉する気がないと思われたら、それでお終いなのだが。



「『あなたは私を開放し、衣食住の保証をする。代わりにわたしはあなたのパートナーとして、あなたの野望実現の手助けをする』…これでいいわね?」

「あぁ、いいだろう。」

「じゃぁ契約するわよ。……我、エルフィーネ=ラスティアの名において先の契約を結ぶものなり」

少女…エルフィーネの体が光る。

俺は続いて手を差し出し、自分の名を告げて、同じように誓句を口にする。

俺の手から光が流れ、さらにエルフィーネを包み込んでいく。


やがて、光が薄れると、そこには一人の少女が立っていた。


封印を解かれた少女……エルは、まるで夜そのものが人の形を取ったかのような存在だった。

深い黒紫の髪は月光を受けて静かに揺らめき、見る者の視線を自然と引き寄せる。長い睫毛に縁どられた瞳は、宝石のように妖しく輝き、見つめられた者の思考を絡め取るような魔性の光を宿していた。

唇は柔らかく艶を帯び、そこに微笑が浮かぶだけで周囲の空気が甘く変わる。彼女が一歩近づくだけで、肌に触れないはずの熱が頬を撫で、心臓が無意識に跳ね上がる。

立ち振る舞いは滑らかで、何気ない仕草さえ計算され尽くしたようであり、彼女の存在そのものが、見る者を惹き込み、抗いがたい魅力で心を揺さぶる。

「クスッ、驚いた?見ての通り私はサキュバスよ?」

エルはそう言ってほほえむ。まさに“サキュバス”という名に相応しい、底知れない妖艶さと危険な魅力を秘めた笑みだった。

その魅力の奔流を真正面から受け、喉が渇くのを感じながら、俺は必死に自分を制していた。

「落ち着け……オレは大丈夫だ。理性的にいけ……!」

頭の中で何度も唱えているのに、エルが一歩近づくたびに心臓が裏切るように跳ねる。

彼女が微笑んだ瞬間、胸の奥に甘い震えが走り、足元がふらつきそうになる。

視線を逸らそうとしても、いつの間にか再びエルの瞳を追ってしまう自分がいる。近くで感じる彼女の香りは、意識を溶かすように甘く、呼吸を浅くさせた。

「……やばい。可愛い。目を合わせるだけで意識が持っていかれる……っ」

額に汗が滲み、指先に力を込めて踏ん張る。

身体の奥でふらつく心を必死につなぎ止め、何とか彼女の誘惑に飲まれまいと抵抗する。

エルはそんな俺の葛藤を楽しむように、ふわりと微笑みを深めた。

エルが一歩近づく。

ただそれだけで、俺の心臓は胸の内側から飛び出すのではないかと錯覚するほど跳ね上がった。

「ち、近い……! なんでそんな自然に寄ってくるんだよ……っ!」

心の中では叫んでいるのに、口からは何も言えない。喉が乾いて声が出ないのだ。

しかも、エルの香りがふわりと漂い、脳のどこかのスイッチを勝手に押してくる。

今まで、女の子にこんなに近づかれたことは、小学生の時のフォークダンス以来だ。

でもあの時は、相手は俺のことをナメクジを見るような目で見ていた。だけど目の前の女の子は……。

ごくっと思わずのどが鳴る。

その態度でエルには何やら伝わったようで、さらに近づき、唇を紅い舌がチロリと舐め、囁く様に告げる。

「お腹が空いてるの。あなたは私に食事を提供する義務があるのよ。あなたも私を好きにできる……それが望みでしょ?」

やばい。近づかれるだけで意識が飛ぶ……。

でも、でも、手を出すなんて……どうすりゃいいんだ?俺にできるわけないだろ……!

……敢えて言おう、俺はヘタレだ……いや、認めたくないけど、仕方が無いだろう。

目の前の美少女が――美しいサキュバスが――自分に向けてくれている好意とも誘惑ともつかない圧に、どう反応していいのかわからない。

だから、固まる。

だから、無言で耐える。

しかし、それが、エルには“精神力で押し返している”ように見えてしまうらしかった。

エルは小首をかしげ、俺の瞳を覗き込む。

「……カズト、人間の中ではかなり強い方なのね。わたしの誘惑を受けて、まだ正気でいられるなんて」

違う。正気じゃない。

むしろ崩壊寸前だ。

俺は心の中で激しく否定したが、口には出せない。しかし、相手が誤解しているなら丁度いい。それで押し通そう。

硬直したまま固まるしかない俺だったが、それがまたエルには“余裕の態度”に見えるらしい。

エルは微笑を深め、わずかに身を屈めて顔を近づけてくる。

「……ふふっ。もっと近くで試してみてもいい?」

「ちょ、ちょっと待て……!」

反射的に後ずさったのは、拒絶ではなく“耐えきれない恐怖に近い焦り”。

だがエルの目には、それがまた別の意味で映ったらしい。

「本気で抵抗しているのね……。ふふ、意地悪したくなるじゃない」

エルは指先を顎の近くまで伸ばすが、触れる寸前で止め、触れずにいる。

触れないのに、触れられたように脳内がしびれる。

なんで触れてないのに……!?

 やめろ……やめてくれ……! もう耐えきれない……!

顔が熱い。視線が定まらない。

逃げたくても、足がすくんで動けない。

エルは俺の反応を見て、瞳を細め嘆息する。

「あなた、本当にすごい精神力ね……。なら、もっと深く誘っても壊れないわね。」

いや壊れる。

むしろすでに壊れかけている。

俺は頭を抱えたい衝動を必死で押しとどめながら、心の中で絶叫した。

わかってない! エルはぜんっぜんわかってない!

オレは強いんじゃなくて……ただのヘタレなんだよぉ!!

もはや恥も外聞もない。

エルが欲しい。欲望の赴くまま、エルを俺のものにしたい……だけどどうすればいいか分からない。下手な事をして、目の前の女の子に失望の目で見られるなんて耐えられないっ!

だから動けないだけなんだよっ!

どうすればいいのか、誰か教えてくれよぉぉっ!

エルはそんな俺の内心の混乱にまったく気づかず、 俺を魅了しようと、より妖艶な微笑みを浮かべる。

「ねぇ、カズト。あなたって……本当に面白いわ」

「な、なにが……っ」

声が裏返るのがわかる…。くぅ、情けない。

しかしエルは、そんな俺の狼狽すら“余裕の演技”だと本気で考えていた。

エルはゆっくりと、俺のパーソナルスペースに踏み込んで来る。

もう逃げ場はない。

息を呑む気配が近すぎて、そのまま体温を分け合いそうな距離。

「ここまで近づいても……崩れないのね。本当に、強いわ」

「ち、違っ……ちが……っ」

違う。違うんだ。

耐えてない。耐えられてない。

エルを抱きしめたい、だけど拒否されるのが怖い。こんなことを思っていると悟られ、キモいと思われるのに耐えられない…心がバラバラに引き裂かれる感じがする。

喉が詰まって言葉がうまく出てこない。

その結果、エルには「沈黙=余裕」と思われている。

「ふふ……じゃあ、もう少し強く誘っても平気よね?」

エルはそっと、彼の耳元に息をかけるように近づいた。

吐息が耳をくすぐり、衝撃が全身に走る。

視界が一瞬ぐらりと揺れる。

ムリムリムリムリムリ!!

今のはどう考えても反則だろ!!

いいのか?ここで押し倒してもいいのか?

ことに及ぼうとしたところで、「プークスクス、ひっかっかったぁ!」ってやるんじゃないだろうなぁっ!

このままでは理性が吹き飛ぶ……っていうか吹き飛んでもいいんじゃね?

エルが誘惑しているのは間違いないし、何があっても、「誘惑に抗えなくて何も覚えていない」ってことにすれば問題ないんじゃね?

そう考えて、俺はエルのたわわな果実に手を伸ばそうとして……。

スカッ。

タイミングよくエルが身を引いたために空振りする。

「……これだけ魅了をかけても平然としているなんて……あなたすごいわ。本当に、芯の強い人ね――それでこそ私のパートナーに相応しいわ。」

俺の手の動きには気づかず、エルが感嘆の声を上げる。

「だから違うって……!!」

声にならない声が喉に詰まり、泣きたくなってくる。

今の動きからすると、俺の行動は読まれてるかもしれない。

焦らすだけ焦らして、俺の情けない姿をさらけ出そうとする作戦なのかも。

しかし、俺の考えなどお構いなしに、エルの誘惑は続く……が、何もできずに涙目になっている俺の姿が、エルには“必死で抵抗しながらも保っている強靱さ”に見えるらしい。

エルが指先をゆっくりと伸ばす。

頬をエルの手が包み込む。

「クスッ、わかったわ。私の負けよ。でもご飯のお預けはイヤよ……」

エルの顔が近づいてくる。

桜色の唇が迫り、俺の唇に……

――その瞬間。

俺の頭の中で何かがプツンと切れた。


他の連載放っておいて新連載です。

仕方がなかったんやぁ!ネタが出てこないんやぁ。


とりあえず、ある程度書いたら、その後は、のんびり他の作品も並行して連載する予定です。

尚、一応R18ではありません。R15ですっ!

R18に行きかけるのを一生懸命抑えているつもりです。

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