第8話 影からの支え、妖精王たち
前書き
愛を学ぶ旅の途中、ちえは知識と責任の重さに押しつぶされそうになる。そんな彼女を影から見守る存在がいた。メーテリュの下僕たち――だがその正体は、次元を司る王たち。ロジカ、ヒューモ、パラドクス、メタリカ。彼らは妖精のように姿を隠しながら、ちえの歩みを支える。愛の試練は孤独ではない。背後には、見えない導きの光がある。
(すみません不手際がありました。訂正いたします)
主題歌 動画配信中 https://www.youtube.com/watch?v=SfqQaXrT6Dc
本文
図書室の窓辺で、ちえはノートを開いたまま動けずにいた。数式は整然と並んでいるが、心は揺れていた。いずみが自然に愛を学んでいく姿に、嫉妬と焦りが重なっていたのだ。
そのとき、背後に柔らかな気配が広がった。振り返っても誰もいない。だが、確かに「見守る視線」があった。
灰青色の髪を持つロジカは、書架の影から静かに佇んでいた。懐中時計を胸に抱え、冷たい硝子の瞳でちえのノートを見つめる。彼の存在は、知識の秩序そのもの。
「焦るな。式は答えを急がない。愛もまた、時間を要する」――その声は風のように届いた。
夕暮れの光に包まれたヒューモは、草むらの影から微笑んでいた。金髪が逆光に輝き、琥珀の瞳が温かく揺れる。
「君の心は冷たくない。少し休めばいい。愛は、遊び心からも芽生えるのだから」
幻想的な光の中、パラドクスは蛍のような輝きとともに現れた。紫の瞳が挑発的に光り、斜めの姿勢でちえを見つめる。
「嫉妬もまた愛の影だ。恐れるな。矛盾を抱えてこそ、人は深くなる」
そして、スポットライトのような硬質な光の中に、メタリカが立っていた。赤銅色の髪が揺れ、蜂蜜色の瞳が真っ直ぐにちえを射抜く。
「強さを恐れるな。愛は柔らかさだけではない。鋼のように守る力も必要だ」
ちえは目を閉じ、彼らの声を心に刻んだ。ノートの余白に一行を書き加える。
「愛は秩序、遊び、矛盾、そして守る力」
その瞬間、胸の重さが少しだけ軽くなった。妖精王たちは姿を消したが、彼らの導きは確かに残っていた。
泉の鐘が鳴り、夜の帳が降りる。ちえはノートを閉じ、静かに息をついた。彼女はまだ迷っている。だが、もう孤独ではない。影からの支えが、次の試練へと歩ませていた。




