第7話 ドラマの中の愛を学ぶ
前書き
詩立乗愛学園の試練は、数式や制度だけではなく、心の奥に潜む「愛の理解」を求める。いずみはまだ愛を知らない。だが彼女は、偶然手にした一つの物語から学び始める。それは韓国ドラマ『アクシデント・カップル』――外見や地位に左右されない誠実さ、計算のない献身、偽りから始まった関係が真実へと変わる過程。いずみはその物語を通じて、自分の「与える愛」がどのように変わり得るかを考え始める。
第弐楽章 強くてニューゲーム「ブラックホールの救済」
(すみません不手際がありました。訂正いたします)
主題歌 動画配信中 https://www.youtube.com/watch?v=SfqQaXrT6Dc
本文
夜の図書室は静かだった。いずみは水差しを膝に置いたまま、端末の画面を見つめていた。そこには『アクシデント・カップル』の映像が流れている。
主人公ドンベクの不器用な誠実さに、いずみは思わず微笑んだ。彼は外見や地位ではなく、ただ相手を思う心で行動する。いずみは自分の所作と重ね合わせる。水差しの一滴も、返礼を求めない誠実さから生まれているのではないか、と。
「愛って…こういうことなのかな」彼女は小さく呟いた。
画面の中で、偽りから始まった関係が少しずつ本物へと変わっていく。計算も駆け引きもない、ただ相手を支えようとする献身。いずみは胸の奥が温かくなるのを感じた。自分が知らなかった「愛の真髄」が、物語を通じて少しずつ形を持ちはじめていた。
その頃、ちえは別の机でノートを開き、数式を走らせていた。彼女は理論で愛を説明しようとするが、いずみの横顔を見て、嫉妬にも似た感情が胸に広がる。
「どうして…あんなに自然に学べるの」
二人の間に、また小さな波紋が生まれる。だがその波紋は、やがて合奏へと変わる予感を秘めていた。
泉の鐘が鳴り、夜が静かに更けていく。いずみは画面を閉じ、水差しを抱きしめた。彼女の瞳には、初めて「愛を学ぶ少女」の光が宿っていた。




