表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
OWPSシリーズ:乗愛の協奏曲 第弐楽章 強くてニューゲーム「ブラックホールの救済」“Chapter II: Black Hole of Salvation”  作者: 大皇内 成美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/8

第6話 崩れた指揮者


朝の学園は、昨日までの静けさとは違う緊張を帯びていた。泉の水面に映る影は揺らぎ、そこに見慣れぬ人影が横たわっていた。

コンダクター――かつて次元を渡り、愛を翻訳する力を持っていたはずの存在。だが今は、問いに囚われて意識を失い、ただ弱々しく息をしている。

いずみは駆け寄り、水差しを抱えたまま膝をついた。

「大丈夫…? 聞こえる?」

返事はない。ただ、彼の瞳は閉じられ、額には見えない重力がのしかかっているようだった。

ちえは眼鏡を押し上げ、冷静にその状態を観察する。

「水槽の脳の問いに囚われているのね。…精神が、5次元の迷路に落ちている」

彼女の声は硬いが、震えを隠せてはいなかった。

いずみは水差しから一滴を落とし、彼の唇に触れさせた。

「わたし、愛って…まだよくわからない。でも、これだけはできる。与えることなら」

その一滴は小さな波紋となり、彼の胸の奥に届くように見えた。

ちえはノートを開き、詩式演算の一行を走り書きする。

「与える行為 × 受け取る構造 = 回復の可能性」

式は未完成だが、彼女の心は確かに動いていた。

その瞬間、コンダクターの指がわずかに震えた。

いずみとちえは顔を見合わせる。

「まだ…間に合う」ちえが呟く。

「うん、わたしたちで支えよう」いずみが答える。

泉の鐘が遠くで鳴り、学園の一日が新しい試練の始まりを告げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ