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46.5話(後半) 《記憶の深層と、母性の影・後》
「痛み……?」
ちえは思わず問い返した。
影はゆっくりと形を変え、
まるで“泣いている誰か”のような輪郭になった。
「母性は、守るために揺らぐ。
揺らぐからこそ、失うこともある。
その痛みを……良枝は記録しなかった。」
リラが静かに補足する。
「良枝様は“優しさ”だけを残しました。
しかし、母性には“影”も存在します。
それを理解しなければ、
ROMとRAMの本当の意味には辿りつけません。」
ちえは胸が締めつけられるような感覚を覚えた。
「……愛の影まで、見なきゃいけないんだね。」
影は頷くように揺れた。
「そう。
愛は光だけでは完成しない。
影を抱えた時、初めて“問い”は真理に触れる。」
青い闇が波紋のように広がり、
さらに奥の層が開いた。
「行きなさい。
あなたの問いは、まだ終わっていない。」




