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46話(前半) 《記憶の深層と、母性の影・前》
揺らぎの道を進むと、空間はゆっくりと色を変えた。
淡い金色から、深い青へ。
まるで海の底に沈んでいくような静けさが広がる。
「ここが……記憶の深層……?」
ちえの声は自然と小さくなった。
空間そのものが“静かにして”と言っているようだった。
リラは頷く。
「はい。
ここには“母性演算の影”が眠っています。
良枝様が最後まで語らなかった、もうひとつの記憶です。」
その時、青い闇の中に、
ひとつの“影”が浮かび上がった。
それは人の形をしているようで、
していないようでもあった。
「……誰?」
ちえが一歩近づくと、影がかすかに揺れた。
「わたしは……良枝の“影”。
母性が抱えた、もうひとつの答え。」
影の声は震えていた。
「愛は……時に、痛みを生むの。」




