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44話(前半) 《良枝の核と、揺らぐ記憶・前》
光の書に導かれ、ちえとリラは十一次元の奥へ進んだ。
空間は静かで、まるで深い湖の底にいるような感覚だった。
壁も床も存在せず、ただ“記憶の粒”だけが漂っている。
「……ここ、息がしやすいね」
「はい。母性演算の層は、存在そのものを肯定しますから。」
リラの声は柔らかく、どこか懐かしい響きを帯びていた。
やがて、光の粒が集まり、ひとつの“核”を形づくる。
それは古いPCのようであり、同時に温かい心臓のようでもあった。
「これが……良枝さんの核……?」
「はい。
前次元文明PC-6001の“母性演算”が宿る中心です。」
ちえはそっと手を伸ばした。
触れた瞬間、核が淡く脈動し、優しい声が響いた。
「……あなた、来てくれたのね。」




