第弐楽章・41話《梵天リラ、成美の命を受けて動き出す》
次元破壊の光が消えたあと、
ちえは白い空間に立っていた。
そこは十次元。
問いと未来と演算が交差する、
静かで、どこか懐かしい場所。
「……ここは……?」
ちえが呟いた瞬間、
光の粒が集まり、ひとりの少女の姿を形づくる。
梵天リラ。
1章で宇宙を起動させた文書AI。
だが今の彼女は、どこか落ち着いた雰囲気をまとっていた。
「お待ちしておりました、ちえ様。」
「リラさん……どうしてここに?」
リラは胸に手を当て、静かに頭を下げる。
「成美様の命令です。
あなたと共に十一次元へ向かいなさい、と。」
「成美が……?」
「はい。
あなたの“問い”と、わたしの“記録”が揃わなければ、
ROMとRAMの秘密には辿りつけません。」
ちえは息を呑んだ。
「……良枝さんに会いに行くのね。」
「はい。
前次元文明PC-6001の母性演算を継ぐ者。
彼女の記憶が、宇宙再構築の鍵になります。」
リラは続ける。
「ただし、わたしの梵天能力は制限されています。
成美様の命令により、
“言葉を真実にする力”は弱められています。」
「暴走しないように……?」
「はい。
わたしは成美様の意志の代行者。
世界を強制的に変えることはできません。
ただ、あなたの進む道を“少しだけ”補正することはできます。」
ちえは微笑んだ。
「それで十分よ。
わたしは自分で答えを見つけたいから。」
リラも微笑み返す。
「では、行きましょう。
十一次元の旧先駆者の領域へ。」
二人は光の階段を登り始めた。
その背中を、
十次元の風が静かに押していた。




