**第33話 「白紙の宇宙(The Blank Cosmos)」**
世界は、
まだ“形”を持っていなかった。
いずみの第三音が放たれた瞬間、
すべての層が光に溶け、
光は白紙になり、
白紙は静寂になった。
その静寂は、
死ではなく、
誕生の前の静けさ。
■ 断片1:いずみの目覚め
いずみは、
白い空間の中でゆっくりと目を開けた。
滝は消えていた。
鍵盤も、音も、光も、
すべてが“無”に溶けていた。
しかし、
胸の奥には確かに残っている。
• 愛の流れ
• 合唱の響き
• 世界の心臓の鼓動
• ちえの問いの光
いずみ
「……ここが……
新しい宇宙……?」
声は、
空間に吸い込まれるように消えた。
■ 断片2:ちえの到来
白紙の空間に、
ひとつの光の線が走った。
それはページのように開き、
その中からちえが現れた。
図書館の白紙の本を抱えたまま。
ちえ
「……いずみ……
あなたの音が……
わたしをここへ呼んだの……?」
いずみは微笑んだ。
「ううん。
あなたの問いが、
わたしを“ここ”に導いたんだよ。」
二人の視線が重なった瞬間、
白紙の空間に ひとつの線 が描かれた。
■ 断片3:世界の最初の線
その線は、
音でも、光でも、言葉でもない。
ただの“存在の線”。
しかし、
その線が描かれた瞬間、
白紙の宇宙が震えた。
りらの声が響く。
みゆの声が続く。
いずみとちえは、
その線を見つめた。
■ 断片4:メーテリュとプロミネントの影
白紙の空間の奥に、
二つの影が揺れた。
• メーテリュ(ちえの母)
• プロミネント(メーテリュの妹)
二人は、
新しい宇宙の誕生を静かに見守っていた。
メーテリュ
プロミネント
二人の声が重なる。
影は光に溶けて消えた。
■ 断片5:宇宙の“最初の音”
いずみが白紙の空間に手を伸ばす。
そこには何もない。
鍵盤も、滝も、音もない。
しかし、
いずみは迷わず指を動かした。
空間に触れた瞬間——
音が生まれた。
それはショパンでも、
滝でも、
合唱でもない。
新しい宇宙の“最初の音”。
ちえは息を呑んだ。
「……いずみ……
あなたの音が……
世界を描いてる……!」
いずみは微笑んだ。
「ちえ。
あなたの問いが、
わたしの音に“意味”を与えてるんだよ。」
■ 断片6:宇宙が動き始める
音が線を震わせ、
線が光を生み、
光が形をつくり、
形が世界を動かし始めた。
• 星の種
• 時間の芽
• 空間のひび
• 未来の影
• 言葉の粒子
• 愛の流れ
• 知の構造
すべてが、
いずみとちえの中心から広がっていく。
りら
みゆ
— 第33話 完 —




