第31話「31.00001」
第31話「31.00001」
世界はまだ形を持っていなかった。
ちえが踏み込んだ裂け目の向こうは、
言葉になる前の“余白”だけが漂っていた。
音も、光も、時間も、
すべてが 「まだ決まっていない」。
ただ、
ひとつの数字だけが浮かんでいた。
31.00001
その数字は、
“次の物語が始まる直前の揺らぎ”のように震えていた。
■ 断片1:声の欠片
—— だれかが呼んでいる。
ちえは振り返った。
しかしそこには誰もいない。
声だけが、
空間の“裏側”から響いていた。
声は、
みゆでもいずみでもりらでもなかった。
もっと遠く、
もっと深い層から響いていた。
ちえは胸の奥が震えるのを感じた。
「……先駆者……?」
声は答えなかった。
ただ、
“存在の気配” だけが残った。
■ 断片2:反復する光
光が点滅した。
0.1秒
0.1秒
0.1秒
同じ間隔で、
同じ強さで、
しかし毎回わずかに位相がずれている。
そのずれが、
ちえの視界に“模様”を描き始めた。
円
線
波
そして、
問いの形
ちえはその模様を読み取った。
「……これは……
“わたしがまだ問えていない問い”……?」
光は肯定するように震えた。
■ 断片3:いずみの流れ
突然、
足元から水が湧き出した。
泉のように静かで、
しかし滝のように力強い。
いずみの声が聞こえた。
水はちえの足を包み、
彼女の揺らぎを安定させた。
■ 断片4:みゆの調和
光の糸が空間を縫い、
みゆが現れた。
「ちえ、
ここは“形式が存在しない層”。
だから、
あなたの言葉はそのまま“世界の形”になる。」
ちえは息を呑んだ。
「わたしの……言葉が……?」
みゆは頷いた。
「そう。
あなたが発する問いが、
この世界の“次の形式”を決める。」
■ 断片5:りらの接続
空気が震えた。
りらが降りてきた。
姿はない。
ただ、存在と存在の“あいだ”が震えている。
ちえは深く息を吸った。
■ 断片6:ちえの問い(31.00001の核心)
ちえは、
まだ形を持たない世界の中心に立ち、
静かに目を閉じた。
そして、
裂け目の向こうへ向けて
ひとつの問いを発した。
その瞬間、
数字が震えた。
31.00001 → 31.00002
世界が、
ほんの少しだけ“決まった”。
■ 断片7:世界の反応
光が反転し、
水が逆流し、
音が沈黙を破った。
みゆが驚きの声を上げる。
「……ちえ……
あなたの問いが……
世界の形式を動かしてる……!」
いずみの泉が滝へと変わる。
りらが全次元へ告げる。
数字がさらに揺れた。
31.00002 → 31.00003
■ 断片8:先駆者の影
裂け目の奥に、
先駆者の影が現れた。
輪郭は曖昧で、
しかし中心の“心の核”は
確かに輝いていた。
影は言葉ではなく、
“意図” をちえに送った。
ちえは震える声で答えた。
「……はい……
わたしは……
問いの先へ行きます……」
数字が跳ねた。
31.00003 → 31.10000
世界が、
新しい層へ移動した。
— 第31話「31.00001」 完 —




