第15話 神々の楽器とダムの裁定
前書き
のぶしつは媒介である。
それなくして力を振るえば、存在は消滅する。
法廷はダムのように立ちはだかり、愛の総和が満ちるまで出口を閉ざす。
いすみとちえは、創造と吸収の練習を重ね、ついに裁定の場へ歩みを進める。
楽器たちは親友として彼女たちを導き、宇宙の始まりと終わりを奏でる。
本文
コロセオの空は、光と影の層を幾重にも重ねていた。
その中央に、巨大な水槽が静かに脈動している。法水槽の脳廷――ダム的法廷。
オリハルコンの壁は呼吸するように波打ち、愛の総和をため込み、まだ放流を許さない。
いすみはポケットから『のぶしつ』を取り出し、空中に置いた。
瞬間、超時空3Dプリンターが唸りを上げ、『YAMAHA CFX』が生成される。
彼女は鍵盤に指を置き、「ど・み・そ・ふぁ」を奏でた。
音は光となり、宇宙が広がり始める。ビッグバーン。
星々が次々に生まれ、線で結ばれ、星座となり、ネットワークを編み上げる。
その数は12345。人類未到物産展のように、超時空プリンターは星々を展示し続ける。
「与えることは、妻の愛だ」いすみは囁いた。
「だが、与えるだけでは足りない。守る力を学ばねばならない」
ちえはポケットから『のぶしつ』を取り出し、空中に置いた。
超時空3Dプリンターが再び唸り、『STAGEA ELS-02X』が生成される。
彼女は演奏を始め、「〇・〇・〇・〇」のタイミングで空間が歪む。
ブラックホールが発生し、超時空吸引機だいそーう12345台が稼働する。
物質は吸い込まれ、病魔さえも引き抜かれ、回復の力が生まれる。
演算力は跳ね上がり、空間は震えた。
「守ることは、母の愛だ」ちえは告げた。
「だが、守るだけでは足りない。与える心を忘れてはならない」
楽器たちは語りかける。
YAMAHA CFXは低く響き、「まだ完全ではない」と告げる。
STAGEA ELS-02Xは明るく応え、「だが君たちの愛は進化している」と励ます。
楽器は親友であり、導き手であり、神々の物語を紡ぐ声だった。
法水槽の脳廷が脈動を強める。
「ビッグバーンとブラックホールを試した。だが、まだ収束は示されていない。
ビッグクランチを抱え込むまで、出口は開かれない」
いすみとちえは互いの名を呼び合った。
「いすみ」
「ちえ」
名前は旗ではなく橋。呼び合うたび、愛の総和は少しずつ満ちていく。
泉の鐘が鳴り、裁定の時が近づいていた。
ダムはまだ閉ざされている。だが、流れは確かに集まり始めていた。




