夏美が突き止めた真相
夏美は病室の片隅で腕を組み、考え込んでいた。
(どうすれば、真相を知ることができるだろう……?)
お姉ちゃんが記憶をなくしている今、適当な憶測で話をするわけにはいかない。でも、私の勘は告げている。ゆう君は、絶対にお姉ちゃんを裏切ったりしない。
何か裏がある。何かおかしい。
その時、ふとある名前が頭をよぎった。
(……そうだ! ゆう君と同じ高校に、ゆかがいる!)
ゆかは夏美の中学時代の同級生で、今はゆうの高校に通っている。もし彼女に聞けば、何か情報が得られるかもしれない。
夏美はすぐにスマホを取り出し、久しぶりにゆかへLINE通話をかけた。
「夏美? どうしたの、急に?」
「ゆか、お願い! ゆう君ってゆかと同じ川上高校だよね?ゆう君のことで知りたいことがあるの!」
「ゆう君? もしかして、YUIのスキャンダルのこと?」
「そう! あれ、本当なの!? ゆう君がYUIと付き合ってるなんて考えられないんだけど」
ゆかは少し考え込むように息をついてから、ゆっくりと話し始めた。
「うーん、あのね……実は、YUIこと悠依がゆう君に興味を持ってたらしくて、ラブポーションがゆう君を校門から駅の近くまで護衛して、二人で歩かせたみたいなの。」
「えっ……? それってつまり……強制ってこと?」
「そうみたい。ゆう君、嫌そうにしてたって話も聞いたよ。でもラブポーションが見張ってたし、逆らえなかったんじゃないかな……。」
「……やっぱり……!」
夏美は確信した。
やっぱり、ゆう君は悪くない。彼はただ巻き込まれただけ。
でも、お姉ちゃんはそのことを知らないまま倒れちゃったんだ。
「ありがとう、ゆか! 本当に助かった!」
「ううん、夏美のためなら協力するよ!」
電話を切った夏美は、急いで病室に戻った。
---
その日の夕方。
のぞみは2日ぶりに家に帰ってきた。病院の白いベッドよりも、やっぱり自分の部屋の方が落ち着く。
(でも……なんで私は倒れちゃったんだろう……?)
それが、まだわからない。
ふと、机の上に置きっぱなしだったスマホを手に取る。
画面を開いた瞬間、のぞみの心臓が跳ね上がった。
ゆうからの大量の着信とメッセージ。
「……!」
何十回もかかってきた着信。未読のまま溜まったメッセージ。
(どうしよう……ゆう君……)
すぐにでも折り返したい。でも――
「お姉ちゃん、待って!」
夏美が慌ててのぞみのスマホを押さえた。
「夏美……?」
「ゆう君に電話するのはちょっと待って!」
「えっ……でも……」
のぞみの手が震えている。心の中に、何か説明できない不安が渦巻いていた。
「ねえ、夏美……私は何か、大事なことを忘れてる気がするの。でも、思い出せないの……。」
のぞみの顔がこわばる。夏美は、強く頷いた。
「それはね、お姉ちゃんがショックを受けるようなことがあったからだよ。でも、大丈夫。私が真実を突き止めたから。」
のぞみは驚いたように妹を見つめた。
「だから、ゆう君に電話する前に、ちゃんと聞いてほしいの。」
のぞみは息をのんだ。夏美の目は真剣だった。
「……わかった。聞く。」
のぞみはベッドの上で正座し、緊張した面持ちで夏美の話を待っていた。
夏美は一度大きく息を吸い込み、しっかりとのぞみの目を見つめた。
「お姉ちゃん、最初に絶対に伝えておきたいことがあるの。」
「……なに?」
「ゆう君が好きなのは、お姉ちゃんだけ。 それは絶対に変わらないし、ゆう君はお姉ちゃんを裏切るようなことは何一つしていない。」
のぞみの心臓がドクンと跳ねる。
「……どういうこと?」
「実はね、私、ゆかに聞いたの。」
そう言って、夏美はゆかとの会話をのぞみに説明し始めた。
悠依がゆうに興味を持っていたこと。
ラブポーションが見張る中で、ゆうが仕方なく悠依と歩かされたこと。
そして、その瞬間を写真週刊誌のカメラマンが撮影し、ネットニュースになったこと。
のぞみは、息をのむように黙って聞いていた。
「……それが……全部だったんだ。」
夏美の声が震え始める。
「でも、お姉ちゃんはそのことを知らないまま、寝起きで私がニュースを伝えちゃった……。だから、お姉ちゃんはショックで倒れちゃったんだ……!」
その瞬間、夏美はワアァァと泣き崩れた。
「ごめんね、お姉ちゃん!! 私のせいで……私があんな伝え方をしなければ……!!」
のぞみは目を丸くしながら、そんな夏美の姿をじっと見つめた。
「……夏美。」
「ひっく……うう……ごめんなさい……!」
「ありがとう。」
「……え?」
のぞみは優しく微笑んでいた。
「私のために、真相を調べてくれて、ありがとう。」
「……っ!!」
夏美の瞳から、さらに大粒の涙がこぼれる。
「でも……でも……! 私のせいで、お姉ちゃんは記憶をなくして、救急車で運ばれたんだよ……!?」
のぞみはゆっくりと首を振った。
「それでも、私は夏美がいてくれてよかった。私は大事なことを見失っていた。でも、夏美が真実を教えてくれたから、取り戻せた。」
そう言って、のぞみはそっと夏美の頭を撫でた。
「……お姉ちゃん……」
夏美は鼻をすすりながら、のぞみの肩にぎゅっとしがみついた。
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しかし――
のぞみは次の瞬間、あることに気づき、表情を曇らせた。
「……ゆう君、きっと私が怒って、何も返してこないって思ってるよね……。」
「……!!」
夏美もハッとする。
「ゆう君、何度も電話やメッセージをくれてた。でも、私はずっとそれを無視してることになってる……。」
「ど、どうしよう……!? きっと、ゆう君すごく落ち込んでるよ!」
「……うん。」
二人は顔を見合わせた。
「どうやって、ゆう君に誤解を解けばいいんだろう……?」
のぞみはスマホを握りしめながら、決意したように口を開いた。
「今すぐ、ゆう君に電話すればいいんじゃない?」
しかし、夏美は少し考え込んでから、首を横に振った。
「でも、お姉ちゃん……。最後にゆう君が電話してきてから、もう丸一日以上経ってるんだよ?」
「……そうだけど。」
「このタイミングでいきなり電話がかかってきたら、ゆう君、びっくりしちゃうと思う。」
のぞみは息をのんだ。確かに、ずっと無視されたと思っていた相手から、突然電話がかかってきたら……ゆうはどう思うだろうか?
「……じゃあ、どうすればいいの?」
のぞみが戸惑ったように尋ねると、夏美は少し考えてから答えた。
「お姉ちゃん、ゆう君の家、知ってるよね?」
「……うん、知ってるよ。」
「じゃあ、今から直接、ゆう君の家に行こう。」
のぞみの瞳が大きく見開かれた。
「えっ……今から!?」
「うん。だって、このまま何もしなかったら、ゆう君が誤解したままになっちゃうでしょ?」
のぞみは一瞬迷ったが、すぐにその提案に賛成した。
「……そうだね。私たちが行けば、ちゃんと話せる。」
しかし、のぞみはふと気づく。
「でも……私、いきなり行って、ゆう君にちゃんと説明できるかな……。」
夏美は、少し考えた後、小さく頷いた。
「だったら、まずは私が話すよ。」
「え?」
「私、一応ゆう君と中学の同級生だったから、彼も私のことを知ってるはず。ほとんど話したことはないけど……。」
「……確かに。」
「お姉ちゃんがいきなり話すより、まず私が説明した方が、ゆう君も少しは冷静になれると思う。」
のぞみは、妹の成長した姿に少し驚きながらも、その提案を受け入れることにした。
「……分かった。じゃあ、夏美、お願い。」
こうして、のぞみと夏美は、父に頼んで車を借り、ゆうの家へ向かった。
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夜の住宅街を走る車の中で、のぞみと夏美はずっと黙っていた。
二人とも、緊張で胸がドキドキしていた。
「……ねえ、夏美。」
「なに?」
「私、ちゃんとゆう君に伝えられるかな……。」
「大丈夫。まずは私が話すし、お姉ちゃんはその後でしっかり伝えればいいよ。」
「……うん。」
やがて、車はゆうの家の前に停まった。
二人は、お互いに顔を見合わせる。
「……行こう。」
のぞみは深く息を吸い込み、夏美と一緒に車を降りた。
そして、ついにゆうの家のインターホンを押すのだった――。
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ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん「夏美ちゃん、ほんまに凄いわぁ!うちら視聴者の度肝抜かれたけんね!まさかここまで動くとは思わんかったわ!」
カナちゃん「ほんまやで!病院でお姉ちゃん守るだけやのうて、ゆかちゃんに電話して、真相聞き出すとか……いや、これは影の探偵役や!夏美ちゃんおらんかったら、このドラマごっつい暗いまま進んでたで!」
なっちゃん「ほんまよ!さすが影の重要人物やね!視聴者の代弁者みたいに“ほんまはどうなんよ?”って聞き出してくれたんやけん!もうスカッとしたわ!」
カナちゃん「で、これで分かったんやな。ゆう君、ほんまにのぞみちゃんを裏切ってなかったんや。逆に巻き込まれただけ。いやぁ、でも……」
なっちゃん「でも、ゆう君のメンタルがヤバいわ……。あの子、のぞみちゃんに信じてもらえんと思い込んで、一日中駅で待ってたんやろ?もう心が紙風船みたいにペシャンコよ!」
カナちゃん「ほんまや!やばい!ゆう君、のぞみちゃん怒っとるって思い込んでるで!しかも、のぞみちゃんは病院やから電話出れんかっただけやのに!それ知らんまま一人で地獄巡りしてもうてるんや!」
なっちゃん「ほんまに誰か早よ教えたってや!って画面に向かって叫んだわ!あの子、のぞみちゃんのことになったらホンマもろいんよ!豆腐の角より脆いけん!」
カナちゃん「せやけど!夏美ちゃんが全部説明したやん?“ゆう君はお姉ちゃんだけを好きやで”って、泣きながら言うたシーン……あれ視聴者も涙腺崩壊やったで!のぞみちゃんが“ありがとう”って返すんも反則や!」
なっちゃん「お姉ちゃんと妹が抱き合うシーン、わたし鼻水出るほど泣いたけん!でも泣きながら思ったんよ……“ちょ、ゆう君!まだ一人で絶望しとるんやないん!?大丈夫なんか!?”って!」
カナちゃん「ほんまそこ!次の展開どうなるんやろ!インターホン押したけど……出てくるんか?ゆう君、心バッキバキに折れてへんか?」
なっちゃん「これ以上放っといたら、ゆう君心のガラス割れっぱなしになるけんね!もう誰も掃除できんぐらいに粉々よ!」
カナちゃん「ほんまそれ!はよ誤解解いて、二人が再会してほしいわ!」
――ここで視聴者からのお便り紹介!
なっちゃん「ラジオネーム“枕元ティッシュ派”さんから!」
『夏美ちゃんの行動に拍手喝采でした!ゆう君は心がグラス細工みたいに繊細だから、妹の勇気が救いの光に見えました。』
カナちゃん「いやぁ分かる!まさに“救急箱に入っとる包帯”や!夏美ちゃんが巻いてくれたんや、ゆう君の心に!」
なっちゃん「次はXのポストから、“@yuki\_drop”さん!」
『のぞみちゃんが“ありがとう”って言った瞬間、私の心も解けました。姉妹愛がまぶしすぎて、ゆう君にも早く届いてほしい。』
カナちゃん「せやなぁ。姉妹が電灯なら、今のゆう君は真っ暗な洞窟やで。その光、早よ照らしたってーな!」
なっちゃん「ほうほう!ラジオネーム“駄菓子屋のうめぼし”さん!」
『ゆう君が駅で待ち続ける姿、切なすぎて胸がキュン死しました。あんな健気さ、今どきおらん!』
カナちゃん「ほんまそれ!あんなん漫画超えて文学や!もはや“待つことが恋”やで!」
なっちゃん「最後に“@nozomilove”さん!」
『インターホン押すシーンで鳥肌!扉の向こうで世界が変わる瞬間、これは伝説になる予感!』
カナちゃん「せやなぁ!あのドア開いたら、もう流星群降るで!花火も打ち上がるで!……ってぐらい運命の扉や!」
なっちゃん「ほんま次回が待ち遠しいね!夏美ちゃんに拍手!そして、ゆう君、もうちょっとだけ耐えて!」
カナちゃん「のぞみちゃん!勇気出して!あんたの言葉が世界救うんやでー!」
――番組は二人の叫びと視聴者の共感で幕を閉じた。




