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のぞみとゆうの物語 ~こんな恋をしている二人が羨ましい  作者: 播磨 颯太
第四部-1章 激動のゆうの高3生活
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失意のゆうと、夏美の決意

ゆうは、朝食の湯気がまだ立ちのぼる食卓で、無意識にスマホを指でスクロールしていた。

トーストの香ばしい匂いも、カップに注がれた牛乳の冷たさも、彼の意識を掴まない。画面に映るのは無数のニュースの見出し。


ふと、その中に見慣れた名前が踊っていた。


ゆう「……YUI、熱愛発覚?」


彼は気にも留めずにページを開く。悠依のことか、と軽い気持ちで覗き込んだ。

しかし、その次の瞬間、手からスマホが滑り落ちそうになる。


ゆう「なっ……嘘だろ……」


画面に映っていたのは、誰かと並んで歩くYUI――悠依。そしてその“誰か”は紛れもなく自分だった。

ゆうは目を凝らす。頬が熱くなる。あの放課後の帰り道、強引に並んで歩かされたときの瞬間が、切り取られ、まるで恋人同士のように記事に仕立てられている。


ゆう「どうして……よりによって僕なんだ……!」


心臓が激しく跳ねる。画面を見返すたびに冷や汗が背を伝った。

頭を抱えるゆうの脳裏に、ひとつの顔がよぎる。


ゆう「のぞみさん……まさか、もう見てるんじゃ……」


焦燥が喉を締め付ける。震える指でLINEを開き、通話ボタンを押す。


――呼び出し音が長く続く。

いつもなら一声で応えてくれる彼女が、出ない。


ゆう「お願いだ……出てよ……のぞみさん……!」


呼び出しが切れた。再びかける。何度も。けれど結果は同じ。

メッセージに既読もつかない。


胸の奥に冷たい刃が突き立つようだった。

怒っているのか、失望されたのか――答えの出ない想像が次々に彼を追い詰めていく。


ゆう「僕を……信じられなくなったの……?」


スマホを握る手が震え、視界が滲む。


――やがて時間は過ぎ、ゆうは足を西元山駅へと運んでいた。

木曜の朝。のぞみと肩を並べ、笑い合いながら通学するはずの日。


駅のホームには、通い慣れた風景。電車の風が吹き抜け、学生や会社員がそれぞれの時間を生きている。

だが、そこにのぞみの姿はなかった。


ゆう「……まだ来てないだけだ。きっとすぐ来る」


そう呟き、ベンチに座る。だが電車は来ては去り、何本も目の前を通り過ぎる。

待ち続ける彼の視線は改札に釘付けのまま。時刻は昼になり、夕方になり、ホームの人々が入れ替わっていく。


夕暮れの赤がホームを染める頃も、彼はそこにいた。

肩は落ち、目は乾き、足は鉛のように重くなっていた。


ゆう「……もう……来ないんだ」


電車のブレーキ音が耳に遠く響く。

最後の望みが霧散したように、彼は力なく立ち上がり、ふらつく足取りで帰路についた。


家路の途中、景色は何一つ目に入らない。

頭の中は真っ白で、心だけが荒れ狂う嵐に呑まれていた。


――翌日。


病院の白い天井の下で、のぞみの瞳がゆっくりと開いた。

呼吸器の機械音が静かに刻むリズム。枕元には夏美と両親が固く手を握り合い、涙を滲ませていた。


医師は淡々と説明する。

「一時的なショックによるものです。検査の結果、後遺症はありません。心配は要りません」


安堵の吐息が重なる。

両親と夏美は、ようやく安堵の表情を浮かべた。


「ただし、精神的な負担がかかると再発する可能性があります。無理はしないようにしてください」


「……ありがとうございます」


のぞみはぼんやりと天井を見つめた。のぞみは意識を取り戻したものの、その前後の記憶は霞がかったままだった。


「のぞみ、気分はどう?」


母の優しい声に、のぞみはゆっくりと頷く。


「……うん……。ここ……病院?」


「あんた、昨日の朝倒れたのよ。救急車で運ばれて……もう、大変だったんだから!」


「倒れた……?」


のぞみは、ぽつりと呟いた。


――何があったんだっけ?


……何か、すごく嫌なことがあった気がする。でも、それが何だったのかが思い出せない。


「……私、どうして……ここに?」


「お姉ちゃん、覚えてる? 倒れる前のこと」


夏美がそっと聞いた。


「……ううん。あまり思い出せない……」


その言葉を聞いた瞬間、夏美はハッとした。


(もしかして、お姉ちゃん、あの記事のことも覚えてない……?)


ならば、これはチャンスかもしれない。


あんなにお姉ちゃんに一途なゆう君が、裏切るはずがない。もしお姉ちゃんが記憶を取り戻す前に真相を突き止めることができれば――


夏美は姉の手を強く握り返し、笑みを作る。けれどその瞳の奥には揺るぎない決意が宿っていた。


夏美心の声「お姉ちゃん……ゆう君は絶対に裏切ったりしない。私が必ず真実を突き止める」


彼女の目に、姉を守るための静かな炎が灯る。

のぞみが記憶を取り戻すその前に、全ての誤解を晴らしてみせる――そう誓いながら。


場面は、白い病室の静寂に閉じ込められた。

なっちゃん「……ちょ、ちょっと待ってよカナちゃん!ゆう君、今ほんまにヤバいことなっとるやんか!」


カナちゃん「ほんまやで!!ニュースで自分がYUIと熱愛とか書かれてもうて、それ見て“のぞみちゃん怒ってもうたんちゃうか”って震えてるんやろ!?あかんあかん!あの子ただでさえ、のぞみちゃんのことになったら心もろいんやから!」


なっちゃん「やばいがな……電話も出てくれん、既読もつかん、そらゆう君の胸ズタズタやわ。しかも“僕を信じられなくなったの?”とか言いよったやん……あれ聞いただけで胸ぎゅううって締めつけられるんよ……」


カナちゃん「せやけど!ここ大事なポイントや!のぞみちゃん、電話に出られんのは怒っとるからちゃう!病院におるんや!救急搬送や!しゃーないやん!誰か、はよゆう君にそれ教えたって〜!!」


なっちゃん「ほんまそれよ!今のゆう君、まるで真冬の海にぽつんと小舟で漂っとるみたいなもんや……視界は真っ白、波に揺られて、どっちが岸かわからんのよ……」


カナちゃん「しかも夕方まで西元山のホームで待ち続けるとか……切なすぎて涙出るわ!電車は来る、去る、人は入れ替わる、それでも改札だけ見つめ続ける……なんやろな、恋を信じる執念いうか、魂やわ」


なっちゃん「うち想像したら泣きそうなる……あのベンチにちょこんと座って、必死に笑おうとしとるけど笑えんゆう君の顔……夕暮れの赤い光で影が長う伸びとるんよ……」


カナちゃん「視聴者のみんなも同じ気持ちやろ?ほら、はがき届いとるわ」


――はがき読み上げ


「西条市 ラジオネーム・雲の切れ間から」

“ゆう君の気持ち、痛いほどわかります。信じたいのに、届かない。あの姿はまるで雨に濡れた子犬です。どうか彼に傘を差してあげてください”


なっちゃん「うわぁ……子犬に傘かけたるイメージ、胸にズキューンて来た……」


カナちゃん「次はXのコメントな!」


@love\_train

“ゆう君、駅で待ち続ける姿、もう詩やん。『来ない君を待ち続けた木曜日』って短歌にしたいくらいや”


なっちゃん「ほほぉ!短歌にまでしたなるって!それくらいみんなの心掴んどるんよ」


カナちゃん「はい、次!これグッと来るで」


@nozoyuu\_forever

“のぞみちゃんは今、病室で眠ってるんや。知らんだけでゆう君を想ってる。二人は赤い糸で結ばれてるから絶対切れへん。時間がかかっても必ず再会できる”


なっちゃん「赤い糸……!そうよなぁ……今は絡まっとるみたいやけど、きっと解ける日が来るんよ……」


カナちゃん「ほんでな、これ読んだら笑うかもしれんけど、逆に救われるかも」


@train\_lover

“ゆう君、西元山駅で待っとる間、もしホームに鳩来たら、のぞみちゃんの化身や思て元気出して”


なっちゃん「ははは!けどわかる!なんでもええけん希望に変えたいんよ!鳩でも空でも、風でも!」


カナちゃん「ほんまそれ!今ゆう君は、ちょっとした光で救われるんや。みんなの声援が、彼を支える波止場になったらええなぁ」


なっちゃん「うちらの番組からも叫ばんといけんよ!ゆう君!のぞみちゃん怒っとらん!あの子は病院におるだけなんよ!だから絶対、自分責めんとって!」


カナちゃん「そうそう!この物語はまだ途中や!嵐の海でも、必ず港は見つかる!二人の愛はそんな簡単に沈まへん!」


なっちゃん「ほんまよ、みんなで応援しよるけん!のぞみちゃんとゆう君がまた並んで笑える日、うちらは信じとるんよ!」


カナちゃん「ゆう君!折れたらあかんで!愛の力は、駅の時計よりも正確に二人を結ぶからな!!」


――スタジオには熱い声援が響き、二人のトークはまだまだ止まらない。

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