姉妹で歩くカフェ探しの午後
六月の午後、街路樹の緑が濃さを増していく中、のぞみと夏美は並んで歩いていた。湿った風が頬をなでるたびに、夏美の髪がふわりと揺れ、その横顔には期待と好奇心があふれていた。
「まずはさ、『アラモード』に行こうよ!」
夏美が弾む声でそう言うと、のぞみは小さくため息をついて妹を横目で見やった。
「もう……あんた絶対、自分が楽しんでるでしょ。」
のぞみは苦笑しながらも歩みを止めず、妹の熱に押されるように目的地へと足を運ぶ。
「いいからいいから! 楽しいほうがいいんだよ!」
夏美は両手を振りながら前のめりに歩き、まるで遠足に向かう子どものようだった。
やがて、ガラス張りの外観が印象的な「アラモード」にたどり着く。外から見ても清潔感があり、ガラス越しに見える白木の家具や観葉植物が柔らかな雰囲気を作っていた。
「わぁ、思ったよりおしゃれじゃん。」
のぞみがぽつりと感想を漏らすと、夏美は「でしょ?」と誇らしげに胸を張った。
二人が店内に足を踏み入れると、ベルの音と共に心地よいコーヒーの香りがふわりと漂った。テーブル席の多くは若いカップルや学生たちでにぎわい、穏やかなざわめきが広がっていた。
のぞみはホットコーヒーを、夏美は子供のように「ミルクセーキ!」と迷わず注文した。ドリンクが届くと、夏美はストローをくわえて「おいし~!」と目を輝かせ、のぞみはそんな様子に思わず笑ってしまう。
「ここの制服さ、めっちゃ可愛いんだよ!」
夏美は通り過ぎた店員の姿を目で追いながら興奮気味に言った。白いシャツに淡い色のエプロン、落ち着いた雰囲気のスカート。派手ではないが、清楚で愛らしい印象だった。
「いい雰囲気だし、制服も可愛いし……ここにしなよ! もう決めちゃおうよ!」
夏美は両手を合わせて、お願いするように身を乗り出した。
のぞみは笑いながらも、ふと店内を見回す。椅子に腰かけて談笑している人々の中に、見覚えのある顔が混じっていた。高校の同級生、近所のおばさん……。胸の奥に、じわりと小さな不安が広がる。
(ここって、私の住んでる街だから……知ってる人が多い。もしここで働いたら、すぐに噂になっちゃうな……)
「ねぇ夏美。」
のぞみは小声で切り出した。
「私がここでバイトしたらさ、夏美の同級生とかもすぐ知っちゃうよね? 噂とか……大丈夫?」
夏美は一瞬考え込んだが、やがて苦笑しながら頷いた。
「それもそうだなぁ……。しかもさ、バイト先で知り合いに会うたびに『あれ? のぞみじゃん! バイトしてるの?』って絶対言われる!」
夏美は両手を広げて大げさにジェスチャーを加え、声まで真似して見せる。
のぞみは思わず吹き出してしまった。
「はは……ほんと、ありそうで困る!」
「でしょ! だから……どうする? やっぱ別のとこにする?」
夏美の顔は残念そうでもあり、ちょっとワクワクしているようでもあった。
「そうだね……せっかくだし、他のカフェも見に行ってみようか。」
のぞみは軽く笑って答えた。
「よしっ! 次はどこ? ミルフィーユ? それともマロニエ?」
夏美が目を輝かせると、のぞみは少しだけ考えて答える。
「うーん……大学の最寄駅の『ミルフィーユ』に行ってみようかな。」
「きたー! よっしゃー! 制服チェックも忘れずにしなきゃ!」
夏美は両手を小さく振り上げ、ノリノリで荷物をまとめ始める。その仕草はまるで探検にでも出発するかのように勢いがあった。
のぞみはそんな妹の姿を見つめながら、心の奥でひっそりと決めていた。
(……やっぱり、アラモードはやめておこう。)
そして二人は席を立ち、次なる候補「ミルフィーユ」へと向かうのだった。
ーーーー
電車に乗り、のぞみの大学の最寄り駅で降りるのぞみと夏美。
ミルフィーユはその駅のすぐそばだった。
ミルフィーユの店内は、落ち着いた雰囲気で、柔らかい照明が心地よい空間を作り出していた。木目調のインテリアに、大きな窓から差し込む自然光。のぞみは紅茶の香りを楽しみながらカップを傾け、向かいの席でりんごジュースをストローで飲んでいる夏美を見た。
「ねえ、お姉ちゃん、毎日こんなに長く電車乗って大学行ってるんだね。改めて考えたら、大変じゃない?」
夏美はそう言いながら、なんとなく感心したような顔をしている。
「まぁね。でも、大学ってそんなものだから、もう慣れちゃったよ。」
のぞみは微笑みながら答えた。
「ふーん。でも、やっぱり近い方が楽だよねぇ。お姉ちゃん、大学の近くに住むとか考えたりしないの?」
「うーん、考えないわけじゃないけど、今はまだ実家の方が落ち着くかな。」
「そっかぁ。でも、大学の近くでバイトしたら、行き帰りの負担は減りそうじゃない?」
夏美は、そんなことを言いながら、ミルフィーユの制服をじっくりと観察していた。そして、嬉しそうに顔を上げる。
「それにしても、ここの制服、めっちゃ可愛い! さっきのアラモードも良かったけど、こっちの方がちょっと大人っぽい感じがするね!」
「うん、確かに。清楚な感じだし、シンプルだけどおしゃれかも。」
のぞみも同意しながら、店内をぐるっと見渡した。客層は比較的落ち着いていて、アラモードよりも学生や社会人が多い印象だった。
「店の雰囲気も良いし、ここなら働きやすそうかも。」
「じゃあ、もうここにしちゃえば?」
夏美は軽いノリで言うが、のぞみは少し考え込む。
「うーん……でも、デメリットもあるよね。」
「例えば?」
「大学がある日はいいけど、バイトがある日も毎回この距離を電車で来るのは、ちょっと大変かもしれないなって。」
「そっかぁ……確かに、バイトだけのためにここまで来るのは面倒かも。」
夏美は、りんごジュースのストローをくわえたまま、少し考える素振りを見せる。
「でもさ、学校帰りにそのまま寄れるのは良いんじゃない?」
「それは確かにメリットだね。」
のぞみは頷く。大学の帰りに寄るにはちょうどいい場所だし、知り合いにもあまり会わなさそう。落ち着いた雰囲気の中で働けるのも魅力的だ。
「どうする? もうここに決めちゃう?」
「うーん……もう一つのマロニエも見てから決めようかな。」
のぞみがそう言うと、夏美は「えー!」とちょっと不満げに唇を尖らせた。
「もうここでいいじゃん! だって、制服可愛いし!」
「夏美の基準、そればっかりじゃん……。」
のぞみはクスクス笑いながら、紅茶を一口飲んだ。夏美が制服重視なのはわかるけど、バイトをするのはのぞみ自身だから、もう少し慎重に決めたい。
「でも、ここも候補の一つに入れておくよ。ありがとう、夏美。」
「ふふん♪ じゃあ、最後のマロニエもチェックしてみる?」
「うん。せっかくだし、行ってみようか。」
こうして、二人は次の目的地「マロニエ」へと向かうことになった。
ーーーー
マロニエは、いつものぞみとゆうが乗っている電車で、西元山駅から10分くらいの駅近くだ。
マロニエに入ると、木の温もりが感じられる落ち着いた雰囲気の店内が広がっていた。今まで訪れたカフェとはまた違った、大人っぽくて洗練された空間だった。
「お姉ちゃん、ここもいい感じじゃない?」
夏美は目を輝かせながら店内を見回している。のぞみは、カウンターの奥で働くスタッフの姿をちらりと見て、制服を確認した。
「うん、制服もシンプルだけど上品な感じだね。」
「めっちゃ良いよ! もうここにしなよ!」
夏美は興奮した様子で、のぞみの手を握りしめて騒いでいる。さっきまでミルフィーユを推していたのに、まるでなかったことのようなテンションの変わりように、のぞみは苦笑いした。
「ちょっと、夏美……声大きいよ。」
そう言いながら、二人は席に着き、メニューを開く。
「もうお腹いっぱいなんだけど……。」
「でも、何か頼まないとね。私はモンブランにする!」
「じゃあ、私はいちごショートケーキかな。」
二人ともケーキセットを注文し、しばらくして運ばれてきたケーキを見て、思わず笑顔になった。
「おいしそう……!」
「うん、ここのケーキ、見た目も綺麗だね。」
のぞみはフォークで一口分すくい、いちごショートケーキを口に運ぶ。ふわふわのスポンジに、甘すぎない生クリームが絶妙に合わさっていて、思わず「ん〜!」と小さく声を漏らしてしまう。
「美味しい!」
「お姉ちゃん、こっちのモンブランもめっちゃ美味しいよ! 交換する?」
「いいよ。」
二人はケーキを一口ずつ交換し、味を確かめながら、マロニエの良いところと気になる点を話し合い始めた。
「良いところは、まず店内の雰囲気が落ち着いてることかな?」
「うん、あと制服がめっちゃ可愛い!」
「夏美の基準、そればっかりじゃん……。」
「だって大事じゃん! お姉ちゃんが可愛い制服着て働いてたら、絶対モチベーション上がるよ!」
「まあ……そういうのもあるかもしれないけど。」
のぞみは苦笑しながら、次に気になる点を考えた。
「気になるところは、ここが途中駅ってことかな。」
「それって、デメリット?」
「大学帰りに寄るには少し遠回りになっちゃうし、家から行くのも電車で来る必要があるから、通勤がちょっと面倒かも。」
「うーん、確かにね。でも、その分知り合いには会いにくいんじゃない?」
「それはあるね。地元のアラモードは知り合いが多すぎるし……。」
「あと、ここのケーキ美味しいから、まかないとかあるなら嬉しくない?」
「それは確かに!」
のぞみは思わず笑ってしまった。
「でも、やっぱりどこも一長一短あるね。アラモードは家から近いけど知り合いが多いし、ミルフィーユは大学帰りには便利だけど、バイトの日だけ行くのはちょっと大変。マロニエは雰囲気も制服も良いけど、通うのが少し面倒……。」
「決めきれない?」
「うん……もう少し考えてみようかな。」
のぞみは悩みながらも、ケーキの最後の一口をゆっくりと味わった。夏美はまだモンブランを頬張りながら、「私はもう決まったんだけどなぁ」と言いたげな顔をしていた。
夏美は、モンブランを食べ終わると、まるで自分がバイトをするかのように真剣な顔でのぞみを見つめた。
「お姉ちゃん、もうマロニエにしなよ!」
「え? そんなに?」
「うん! だってね——」
夏美は指を折りながら、マロニエの良い点を理路整然と挙げていった。
「まず、ここは制服がめっちゃ可愛い! これはもう譲れないでしょ?」
「うん、まあ……確かにデザインは上品で可愛いよね。」
「でしょ? それに、アラモードみたいに地元の知り合いに見つかる心配もないよ! 知り合いに見られたくないって言ってたじゃん?」
「うん、それは確かに……。」
「それに、ミルフィーユは大学帰りには便利だけど、バイトの日以外に行くのはちょっと面倒なんでしょ? だったらマロニエの方が、家からも大学からもそこそこアクセスしやすいじゃん!」
「言われてみれば、そうだね。」
「あと、ここ、ケーキがめっちゃ美味しいじゃん! ってことは、もしバイトのまかないとかがあったら、すっごくお得だよ?」
「夏美……それは完全に食いしん坊の発想じゃん。」
のぞみは苦笑しながらも、確かに夏美の言うことは一理あると思った。
「でもね、お姉ちゃん。最後にもう一つ、これが一番大事!」
夏美は身を乗り出し、のぞみの目を真剣に見つめた。
「お姉ちゃんが一番楽しく働ける場所じゃないとダメ!」
「え?」
「バイトするなら、ただお金を稼ぐだけじゃなくて、お姉ちゃんが気持ちよく働けることが一番大事でしょ? その点で言うと、アラモードは知り合いが多すぎるし、ミルフィーユは行くのが大変そう。でもマロニエは、雰囲気も落ち着いてるし、制服も可愛いし、何よりケーキが美味しい! それって、お姉ちゃんが働く環境としてはすごくいいと思うんだ!」
のぞみは、夏美の言葉にじっと耳を傾けながら、改めて店内を見渡した。木の温もりがある落ち着いた雰囲気、ほどよい賑わいの客層、スタッフの丁寧な接客。そして、自分の手元にある美味しいいちごショートケーキ。
「……夏美、すごいね。」
「え?」
「こんなに的確にまとめられるなんて……。ちゃんと私のこと考えてくれてるんだなって思った。」
「えへへ、でしょ?」
夏美は得意げに笑った。
「うん……決めた! マロニエにする!」
「やったー!!」
夏美は思わず手を叩いて喜んだ。
「これで、お姉ちゃんが可愛い制服で働く姿が見られるー!」
「そこが一番の理由じゃないよね?」
「うん! ……って言いたいけど、半分はそれもある!」
「もう、夏美ったら……。」
のぞみは笑いながら、マロニエで働く自分の姿を想像した。きっと楽しく働ける気がする——そんな前向きな気持ちが、自然と湧き上がってきていた。
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ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん「いやぁ〜今回のん、ほんまええ回やったなぁ!おぅ!ちゃんとわしらの出番もあるな!安心したわ!」
カナちゃん「ほんまやで!わたしも読みながら思ったもん。“お、ここでなっちゃんカナちゃん触れられる流れや!”って。嬉しいわ〜。しかもな、今回5,000文字超えてるやん!作者、詰め込み過ぎやって!」
なっちゃん「ほやほや、うちもびっくりしたわ。お腹いっぱいなるくらい濃い内容で、しかも姉妹で歩きながらバイト先探すとか…これ、ドラマにしても映えるけんね。夏美ちゃんのはしゃぎっぷりと、のぞみちゃんの現実感、コントラスト最高やった」
カナちゃん「いやもう、姉妹愛全開やん。“もうここにしなよ!”って手握るとことか、悶絶やで?ええ姉妹やなぁって思わされたわ。わたしなんか鼻の奥ツーンってしてもうた」
なっちゃん「夏美ちゃんの制服基準には大爆笑したけどな。アラモード、ミルフィーユ、マロニエって順番に行って、全部“制服かわいい!”で評価しとる。小学生の遠足かと思たわ」
カナちゃん「せやせや!でも、それを笑いながら受け止めるのぞみちゃんの優しさよな。そんで最後、“お姉ちゃんが一番楽しく働ける場所じゃないとダメ!”って、夏美ちゃん真顔で言うやん?あれズルい。読者の心、がっつり持ってかれるで」
なっちゃん「ほやけん、二人がバイト先探しながら人生の選択についても自然に語っとる感じがしたわ。“楽しく働けるかどうか”って結局そこよなぁ。ほんま、ええ姉妹やった」
カナちゃん「さてさて、今日は視聴者さんからのコメントも山ほど届いとるらしいで?X(旧Twitter)の反応もえぐいらしい!」
なっちゃん「ほな、さっそく読んでいこか!」
カナちゃん「まずはラジオネーム“プリンは飲み物”さんからのおはがき。『夏美ちゃんが“制服かわいい!”って言うたびに、自分も昔バイト選びの基準それやったの思い出して爆笑しました。姉に本気で怒られたのも懐かしいです』やって!」
なっちゃん「おぉ〜!お便りも姉妹感。制服基準って全国共通やったんやなぁ。うちも高校んときは、制服がええパン屋に応募しようかと思たことあったけん、めっちゃ共感したわ」
カナちゃん「続いてはXから。“#なつかナレビュー”で検索したらトレンド入りしとるで!『夏美ちゃんの食いしん坊理論=ケーキが美味しい店=最高の職場』って、わたしの人生観そのもの!ってコメント、多数!」
なっちゃん「わはは!ケーキが人生のコンパスかいな!でも正直、甘いもんに救われる時あるけんね、言いたいこと分かるわ〜」
カナちゃん「それな。次いくで。“カフェ探しの三部作、ロードムービー感がすごい。制服チェックが伏線になってて爆笑”って声も。確かに、ただのバイト探しやのに、姉妹で旅してるように描かれとるんよなぁ」
なっちゃん「そうそう!行く先々でドラマがある。アラモードは“知り合い多すぎ問題”、ミルフィーユは“通うの大変問題”、マロニエは“遠回りやけど落ち着く空間”。それぞれ人生の岐路みたいな比喩やったな」
カナちゃん「せやねん!『人生って制服のデザインみたいやな。可愛いけど動きにくいか、地味やけど着心地ええか。どっち選ぶかで毎日変わる』ってXで呟いてる人おったで。もう詩人やん!」
なっちゃん「おぉ〜ええこと言うわ!制服が人生のメタファー!それ思たら、のぞみちゃんが“楽しく働ける場所”を選んだんは、結局“自分が似合う制服を見つけた”ってことやろな」
カナちゃん「はぁ〜悶絶やわ……。制服論から人生論に飛んでいくこの広がり、たまらん!」
なっちゃん「ほんでな、作者さんの筆も冴えとるけん、文章が生き生きしとるやろ?ケーキの描写なんか読んどったら腹減ってきたもん。視聴者のコメントも“読んでたらモンブラン買いに走った”とか“ショートケーキ完売してた”ってリアルな悲鳴やったな」
カナちゃん「わたしもケーキ欲しい!この回はカロリー高いでほんま!文章読むだけで太るんちゃうか?」
なっちゃん「わはは!文字の糖分やな!」
カナちゃん「最後にもうひとつ。『姉妹で悩んで決める姿が、まるで視聴者と一緒に相談してるみたいで胸が熱くなった。自分の人生も、誰かと一緒に考えてみたいと思いました』ってお便りきとったわ」
なっちゃん「それや、それ!この回の本質やと思う。人は一人で悩むんやなく、隣で笑って泣いてくれる誰かがおるだけで、答えが見えてくるんやなぁ」
カナちゃん「ほんまや。制服の色ちゃうても、姉妹の絆って無地で丈夫な布みたいやな。ほつれても、なんぼでも繕える。そんなん思わせる回やった」
なっちゃん「ええこと言うやん、カナちゃん。今日は視聴者さんのお便りとXのコメントで、わしらまで幸せ分けてもろた気分やわ」
カナちゃん「せやな!ほな、次回もたっぷり語り尽くそうな!」




