揺れる視線、かかる黒い霧
西元山駅 1/17 7:10 ――
冷えた朝の空気に白い息が流れていく。
駅の時計は、間もなく電車が来ることを告げるように7時10分を指していた。
ゆうはいつもの場所――前から2両目の2番目のドア前に立つ。
心のどこかで期待しながら、そして少し不安を抱えながら。
線路の奥から、急行のライトがこちらを照らしながら近づいてくる。
重たいブレーキの音、そして風。電車がホームに滑り込んできた。
ドアが開く。人々が吸い込まれるように次々と乗り込んでいく。
ゆう(心の声)
「今日も……来てくれるだろうか」
そして――。
のぞみが階段を駆け下りてくる。髪が跳ね、頬が赤い。息を切らしながらも、いつものタイミングでホームに飛び込んできた。
その姿に、ゆうの胸が熱を帯びる。
のぞみは慣れた様子で電車へ。定位置――ドア横の手すりに立ち、バッグを抱え直す。
しかし、ドアが閉まりかける、その刹那。
男子校の制服を着た一人の生徒が駆け込んできた。
彼は息を整える間もなく、のぞみの横に立つ。
ガタン、とドアが閉まる。電車が動き出す。
「おはよう」
男子生徒が、当然のようにのぞみに声をかけた。
ゆうの胸に、冷たいものが落ちる。
「……え? の、のぞみさん……誰、その人は? まさか……彼氏……?」
のぞみの表情はぎこちない。
困ったように、目を伏せ、唇を小さく動かす。
「……あ、えっと……」
はっきりと返事をしない。
だが男子生徒は気にする様子もなく、楽しげに言葉を重ねている。
ゆうは少し離れた位置に立っていて、声までは届かない。
ただ、口元の動きと空気の重たさだけが伝わってくる。
「どういう関係なんだ……? のぞみさんは嫌がっているように見える……でも、もしかして喧嘩中の……彼氏……?」
のぞみは眉を寄せ、困惑を隠せない。
視線は定まらず、落ち着かないように鞄の持ち手を握り直す。
ふと、その瞳が――ゆうの方を向いた。
一瞬。
けれど確かに、こちらを見た。
ゆう(心の声)
「……の、のぞみさん……今、僕の方を……? 目配せしてる……? なぜ……?」
男子生徒の声は止まらない。
距離は近く、空気は重い。のぞみの肩が小さく震える。
ゆうは手を伸ばしたい衝動に駆られる。
けれど――混雑した朝の車内。体を動かすこともできない。
長い。
たった15分の通学時間が、果てしなく長く感じられる。
のぞみは何度も、何度も、ゆうを見た。
そのたびに、困った表情の奥に「助けて」と言いたげな光が宿る。
ゆうの胸はざわつき、鼓動は早まる。
けれど足は動かず、ただ見つめるしかできない。
ようやく――難法駅に到着する。
プシューッと音を立ててドアが開いた瞬間、のぞみは飛び出すように走った。
迷うことなく右へ。
男子生徒は追いかけることはしなかった。
ただ肩をすくめ、苦笑を浮かべながら同じ方向へ歩いて行く。
遅れてホームに降り立つゆう。
視線を巡らせるが、のぞみの姿はもうない。
残ったのは、男子生徒の背中。
ゆうはただ、その遠ざかる後ろ姿を見つめるしかなかった。
ゆう(心の声)
「……今のは……なんだったんだ……?」
胸の奥に、黒い霧が広がっていく。
その霧は、のぞみを思う温かな気持ちさえ、包み込んでいった。
――朝の光が射すホームで、ゆうの心だけが曇っていた。
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ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんのトーク番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん:いやー、カナちゃん、今朝の電車見た?あののぞみちゃんの横に立っとった男子なにあれ!?
カナちゃん:ほんまやで、なっちゃん!あれ誰なん!?急に現れて、のぞみちゃんの横に立つなんて、めっちゃ怪しいやんか!
なっちゃん:せやろ?見た瞬間、ワシ思わず「え、なに!?」って声出しそうになったんよ。のぞみちゃん、めっちゃ困惑しとったしなぁ。
カナちゃん:うん、うん!あの困惑顔よな、ちょっと目配せしてゆう君の方見てたやん?あれ、どういう意味やろな~?
なっちゃん:いや、ワシ的には……うーん、まさかの彼氏?とか思うたんよ。いきなりあんなに近くにおるし、手も触れそうな距離やったし。
カナちゃん:せやな、でもなぁ、あの男子の方はすごい余裕やったやん?笑いながら話しかけとったし、のぞみちゃん困っとるのに全然気にしてへん感じやったで。
なっちゃん:そ、そうそう!そこがまた怪しいんよ。普通彼氏やったら、もっと気ぃ使うやろ?それにのぞみちゃんの表情、明らかに「うわ、ちょっと……」みたいな感じやったもん。
カナちゃん:ほんなら、ナンパ説もあるんちゃうか?あれ、単に声かけたかっただけとか。
なっちゃん:な、なるほど……確かに!あの男子、制服からして他校の生徒やったし、ゆう君と違って、毎日乗っとるわけでもない感じやったしなぁ。
カナちゃん:せやろ?なんか余裕ぶっこいとったし、絶対いつも目ぇつけとったんちゃうかなぁ。
なっちゃん:いやー、でものぞみちゃんが何度もゆう君の方見とったけん、ワシはちょっと安心したわ。やっぱりゆう君のこと意識しとるんやろうなぁ。
カナちゃん:うんうん、そうやな。でもあの男子……ほんま謎やで。次から毎日現れる系やったら、ちょっと波乱の予感やなぁ。
なっちゃん:ほんまじゃ、朝からハラハラしたわ。ゆう君も見とったやろうけど、心の中は黒い霧に包まれとったやろなぁ、絶対(笑)
カナちゃん:せやな、あれ見たら誰でもドキドキするわ。いやー、今日の電車、目ぇ離せん展開やったな!
なっちゃん:次は誰が横に立つか……ワシも楽しみになってきたわ(笑)
カナちゃん:ほんまやな、次回もリアタイで実況せなあかんわ。いやー、面白すぎやで!




