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のぞみとゆうの物語 ~こんな恋をしている二人が羨ましい  作者: 播磨 颯太
第三部-3章 のぞみ、大学生になる
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夏美とドライブ

翌日の午後、春の陽射しが柔らかく差し込む玄関先で、のぞみは父から借りた車のスマートキーを手のひらで軽く回した。金属が陽の光を反射し、小さな光の粒を弾き返す。胸の奥が少し高鳴っている。初めて妹を助手席に乗せて運転する――それだけで心がわくわくと弾んでいた。


夏美は、待ちきれない様子で玄関から飛び出してきた。

「ほんとに運転してくれるの? うわぁ、お姉ちゃんがハンドル握るなんて不思議すぎ!」


夏美の瞳は子どものように輝いていた。のぞみは少し照れくさく笑いながら、車のドアを開けた。

「そうだよ。今日は私がドライバーだからね。ちゃんとシートベルト締めてね」


夏美は助手席に飛び乗り、シートに深く腰を下ろすと、大げさなくらい嬉しそうに肩を弾ませた。

「任せて! なんか特別感あるなぁ。お姉ちゃんと二人だけでドライブなんて初めてだもん」


のぞみはスタートボタンを押し、エンジンの低い音が響いた瞬間、胸の奥に小さな達成感が広がった。ペダルをゆっくり踏み込み、車はスムーズに走り出す。


窓を少し下げると、春の風が車内に流れ込み、髪をやわらかく揺らした。潮の匂いがまだ遠くからでも感じられる。


「どこ行くの?」と夏美が期待に満ちた声で尋ねた。

「うーん……せっかくだから、海まで行ってみよっか」


「ほんとに!? いいじゃん! お姉ちゃんの運転で海なんて、最高じゃん!」


夏美は両手を胸の前で組み、まるで遊園地にでも行くかのように浮き立っていた。その様子に、のぞみは思わず頬を緩める。


「運転、楽しい?」

「うん、楽しいよ。……でもね、それよりも夏美と一緒にこうして出かけられるのが嬉しい」


少し真面目な口調で言うと、夏美は照れ笑いを浮かべて、視線を前に向けた。

「ふふっ、やっぱりお姉ちゃん優しいなぁ。なんかこういうの、特別な時間だね」


道中、二人はたわいもない話題で盛り上がった。最近流行っている音楽をスマホに繋いで流したり、友達の面白いエピソードを語ったり。窓から見える景色が少しずつ変わっていくたびに、夏美が「あ、ここ知ってる!」「うわぁ、きれい!」と小さな発見を繰り返す。その声に反応しながらハンドルを握るのぞみの横顔は、とても幸せそうだった。


——姉妹で過ごす時間が、こんなにも温かいものだったなんて。

のぞみの心は、春の空のように晴れやかだった。


やがて海が視界に広がると、夏美が声を上げた。

「見て! 海、もう見えてきた!」


のぞみは駐車場に車を停め、二人は砂浜へと降りていった。足元に広がる砂がまだ少し冷たく、波の音が静かに心に染み渡る。


「うわぁ……すっごく綺麗!」

夏美はスニーカーを脱ぎ捨てて裸足で波打ち際へ駆けていく。


「でしょ? 今日は天気もいいし、ほんとドライブ日和だったね」

のぞみは妹のはしゃぐ後ろ姿を眺めながら、胸の奥にふと別の想いが芽生えた。


——今度は、ゆう君をここに連れてきたいな。


助手席に座るゆうの姿を想像する。

「わぁ、のぞみさん運転できるの!?」と驚く顔。

海を見て「来て良かったよ、のぞみさん!」って感動する声。

そんな未来の光景を頭に描くだけで、のぞみの胸は小さく跳ねた。


「お姉ちゃん、どうしたの?」

夏美が不思議そうに首をかしげる。


「え? ううん、なんでもないよ」

のぞみは慌てて笑みを浮かべ、海風で揺れる髪を耳にかけた。


けれど心の中では、決意が固まっていた。

——次は、ゆう君を迎えに行く。彼は私が免許を取ったことをまだ知らない。サプライズで助手席に座らせて、その驚く顔を見たい。


その日が来るのを思うと、胸の奥から湧き上がる期待で、体中がそわそわしてしまう。

のぞみは打ち寄せる波を見つめながら、待ちきれない未来に思いを馳せていた。

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