夏美の追及
ファンタジーランド帰りの玄関
のぞみが玄関の扉を開けた瞬間、明るい声が弾けた。
「お姉ちゃ〜ん!おかえり〜!」
夏美が玄関に仁王立ちし、両手を腰に当てて待ち構えている。玄関の空気は、一気ににぎやかさで満たされた。
のぞみは一瞬ぎくりとして、思わず背中を硬直させた。
「……た、ただいま?」
声が少し上ずる。靴を脱ぐ手がもたつく。夏美のこのテンション。——まさか気付かれてる?いや、そんなはず……でも。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん!」
夏美はスリッパをパタパタいわせながら近づいてきて、にやにや顔でのぞみに詰め寄る。
「今日はどこ行ってたの?」
のぞみは鞄の持ち手をぎゅっと握りしめ、視線を逸らした。
「えっ……べ、別に……普通に出かけてただけだけど?」
「ふぅ〜〜ん?」
夏美の目がじと〜っと細くなり、唇の端がにやりと持ち上がる。
「もしかしてぇ……ゆう君とデート?」
「っ!」
のぞみの心臓が跳ねた。耳まで真っ赤になる。
「な、なに言ってんの!?べ、別にそんなんじゃ——」
「じゃあ、どこ行ってたの?」
夏美は一歩も引かず、じりじりと追い詰めるように質問を重ねる。
「そ、それは……」
「言えないってことは、やっぱデートじゃん!」
「ち、ちが……!」
必死に否定しようとするが、顔は真っ赤、声は裏返り、態度は明らかに動揺している。
「ほら〜、お姉ちゃん、顔まっかっか!それにさ……なんかすっごく幸せそうなんだけど?」
「そ、そんなこと——!」
のぞみは必死に取り繕おうとするが、夏美の目はもうすべてを見透かしている。
「じゃあさ、今日は何してたの?」
長い沈黙。のぞみは口をパクパクさせて、やがて小さくため息をもらす。
「……ファンタジーランドに……行ってた」
「えっ、ほんと!?ゆう君と!?」
「……うん」
小さく頷いた瞬間、夏美の声が弾ける。
「きゃーーっ!!!」
その場で飛び跳ねる夏美。両手をパタパタ振って、まるでコンサート会場のファンのように興奮している。
「お姉ちゃん、ガチじゃん!それでそれで!?どんなデートだったの!?手つないだ!?キスは!?」
「ちょっ、ちょっと待って!?そ、そんなのまだ——」
のぞみの心の声。
(……手は繋いだけど……!)
「“まだ”ってことは、これからするってこと!?やだも〜〜お姉ちゃんたら〜!」
「ち、ちが……!」
顔を両手で覆って、ソファにバタンと倒れ込むのぞみ。肩まで真っ赤。
「……もう、夏美……からかわないでよ……」
「ごめんごめん!」
夏美は悪びれもせず、隣にちょこんと座り込む。
「でもなんかさ、めっちゃ嬉しそうだし!いいなぁ〜って思って!」
のぞみは指先で髪をくるくるといじりながら、恥ずかしそうにうつむく。
「だってね……お姉ちゃん、今まであんまり恋バナとかしなかったじゃん?こうやって楽しそうにしてるの見たら、私まで幸せになるよ」
のぞみは小さく笑った。照れくさそうに、それでいて心から温かさを覚える笑み。
「……ねえ、夏美」
「ん?」
「私ね……ほんとに、ゆう君のこと……好きなんだと思う」
その言葉がぽつりと落ちた瞬間、部屋の空気がふっと変わった。夏美の目が優しく細くなる。
「そっか……お姉ちゃんがそう思うなら、それでいいんじゃない?」
「……うん」
のぞみの声はかすかに震えている。でも、それは不安の震えじゃなくて、想いを確かに抱いているからこその震え。
「今日ね……改めて思ったの。ゆう君と一緒にいると、すっごく幸せなんだって」
夏美はニヤリと笑って、わざとおどける。
「ふふっ、やっぱデートだったんじゃん!」
「も、もうっ!」
のぞみは枕をつかんで夏美の肩をぽすっと叩いた。
「でもまあ……いいじゃん!ゆう君、すっごく真面目そうだし、お姉ちゃんも幸せそうだし!」
のぞみは静かにスマホを取り出す。画面には、今日のやりとりがそのまま残っている。メッセージの一つ一つが、まだ心臓を温めてくれる。
親指でゆっくりスクロールしながら、小さく唇が動いた。
「……ゆう君」
その呟きは、夏美にもしっかり届いていた。
夏美は微笑み、黙ってその姿を見守った。
お姉ちゃんが恋をしている。——それだけで、世界が少し眩しく見えた。
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ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん「ちょっと待ってや!今のシーン、出たよ出たよ!夏美ちゃんの追及!!これがこのドラマの醍醐味やん!!」
カナちゃん「ほんまやなっちゃん!追及の鬼やで!まるで国会答弁みたいに、のぞみちゃんをギリギリまで追い詰めていくんやもん!」
なっちゃん「わかるわかる!あの“ふぅ〜ん?”の間!あれで視聴者全員『あ、逃げられんやつや』って確信したけん!」
カナちゃん「もう、のぞみちゃんの顔まっかっかやったやん。あれ、ポットにお湯わかしたときに赤くなるスイッチぐらい、わかりやすいサインやったな」
なっちゃん「それな!で、“ファンタジーランド行った”って言った瞬間!夏美ちゃんの『きゃーーっ!』。あれ、オーディエンスの代弁者やけん!」
カナちゃん「完全に妹やのにファン代表。まるで家に一人公式実況者がおるみたいやな」
なっちゃん「ほんまそれよ。てか、“まだ”って言葉!あれ爆笑やろ!『まだ』ってなんなん!?って全国民が総ツッコミしたけん!」
カナちゃん「そうそう!“まだ”って言うのは、未来に“ある”こと前提やからな!そこ突っ込んだ夏美ちゃん、名探偵の再来やわ」
なっちゃん「出た!夏美ちゃんの名探偵モード!!」
カナちゃん「ほなここで、視聴者からのはがき紹介いこか!」
なっちゃん「きましたきました!まずは神奈川県のラジオネーム“観覧車の影から”さん!」
カナちゃん「名前からしてファンタジーランド常連やん」
なっちゃん「『夏美ちゃんの詰問シーン、わたしも昔妹にやられました。ちょっとした沈黙のあと“ふぅ〜ん”って言われると、もう逃げ場ないんですよね』やって」
カナちゃん「わかるーー!!“ふぅ〜ん”は地獄の入口やからな!返事を詰まらせた瞬間、追撃がくる。まるでモグラ叩きで一匹出たら百叩きされるみたいなもんや」
なっちゃん「まさに妹特有のセンサーやね。相手の心臓の動きを感じ取っとる」
カナちゃん「次いこか!東京都の“ポケットに手繋ぎチケット”さん」
なっちゃん「『“まだ”って言葉、私も言っちゃったことあります!結果、妹に大爆笑されました。のぞみちゃん、同志です!』やって」
カナちゃん「おぉ、仲間おった!全国の“まだ”族に勇気を与える発言やな!」
なっちゃん「“まだ”って言葉は恋する人間の口から自然と出る魔法の単語なんよ。未来の幸福を予告する、いわば“幸せ確定演出”やけん!」
カナちゃん「パチンコか!確変突入やな!」
なっちゃん「確変突入したのぞみちゃんとゆう君。もうここからは連チャンモード突入やけん!」
カナちゃん「はい次〜!大阪府の“ほっぺ真っ赤団”さん」
なっちゃん「『のぞみちゃんが両手で顔を覆ってソファに倒れ込むシーン、私も悶絶しました!あれは恋に落ちた人間にしかできない挙動です!』」
カナちゃん「ほんまそれ!あれ、心臓がドラムロール叩いとる状態やな。恋のBPM200超えてるで」
なっちゃん「そして倒れ込む姿がまた尊い。まるで“幸せに撃たれた天使”やけん!」
カナちゃん「ほら、コメント読むだけで悶絶してもうてるやん、うちら!」
なっちゃん「視聴者のみんなとシンクロしとるけん!この番組は、夏美ちゃんの追及と、のぞみちゃんの赤面と、ゆう君の純情が織りなす三重奏やけん!」
カナちゃん「ほんまやな!もう視聴者全員で膝から崩れ落ちてるで!」
なっちゃん「次の回も、追及劇に期待せんといかんね!」
カナちゃん「楽しみすぎるわ!」
——番組は笑いと共感と悶絶でいっぱいのまま、まだまだ続いていった。




